山口清明議員の議案外質問③(2018年9月20日)
地震・豪雨・台風など、この夏の災害を踏まえ、防災において強化すべき課題を提案
③一部損壊世帯への生活再建支援について
山口清明議員
「一部損壊」被害住宅に対する再建支援策は
【山口議員】第三に、「一部損壊」世帯への支援についてです。防災施策には、災害を防ぐ、災害から逃げる、情報を伝える、の3分野がありますが、加えて、被災者を支える、ことが大切です。
想定する災害や被害の規模は大きくなりがちですが、実際に起きた災害で、被災者支援に不足していたのは何か、その一つが比較的軽度とみられていた被害にこそ支援が必要という現実でした。
倉敷市真備では浸水エリアの約2100軒が一括して全壊と判定されました。被害認定の「効率化・迅速化」が初めて適用されました。この方法はゼロメートル地帯での浸水被害でもおおいに参考になります。でもこれは例外に近い。多くの災害では、住宅の被害は、全壊や半壊ではなく一部損壊が多数を占めています。(写真右上)
大阪北部地震では約4万2千の住宅被害の99%が一部損壊。熊本地震でも約20万の住宅被害の79%が一部損壊でした。台風21号でも9月11日の大阪府の発表では全壊1件、半壊7件、一部損壊5761件、99%です。一部損壊は軽微な被害なのか。特に問題となるのは屋根が壊れたケースです。ブルーシートに覆われた家並みが被災地の象徴としてよく報道されますが、いまの災害救助法、被災者生活再建支援法では、こうした一部損壊世帯に対する公的支援はほぼ皆無です。(写真右下)
名古屋市では一部損壊世帯には罹災証明を発行するだけ。ブルーシート1枚すら支給しません。経済的にも精神的にも負担が重いのに医療費の減免も対象外です。 列島各地で、それぞれの災害を踏まえて自治体の独自支援を始めています。
鳥取県、兵庫県、京都府が一部損壊についての独自支援制度を常設しました。熊本県内6市町が補助金を新設し、この夏には大阪の高槻市や枚方市などが住宅改修への補助制度を設けました。高槻市では、一部損壊でも国保料や介護保険料の半額減免も設けました。一部損壊世帯に住む多くが高齢者です。いまさら住宅を建て替えるわけにもいかず、かといって公営住宅にも移れない。被害を受けた自宅でがんばる方々への支援策こそ必要とされたのです。
大阪北部地震を踏まえた指定都市市長会はこの夏の提言で、被災者の生活再建支援制度の見直しをかがげており、「一部損壊世帯のうち、障害者世帯、ひとり親世帯、非課税世帯といった特に配慮を要する世帯、被害の程度が大きい世帯及び宅地被害についても支援金の支給対象とすること」を国に求めています。国に制度拡充を求めつつ、名古屋市としても独自に備えるべきです。
圧倒的多数の被災者に支援の手を差し伸べてこそ、復旧・復興に向けた住民の意欲と一体感を地域全体で育むことができるのではないでしょうか。
そこで、被災者への支援業務を所管する健康福祉局長にうかがいます。実際の災害で、被災者の多数を占める「一部損壊」被害に対しどう認識していますか。
支援対象外だが、生活に支障を生じる場合はあると認識(局長)
【健康福祉局長】住家の被害は「全壊」「半壊」「一部損壊」に区分され、災害救助法の支援対象は「全壊」と「半壊」、被災者生活再建支援法の支援対象は「全壊」と「大規模な半壊」となっており、「一部損壊」はいずれの支援対象でもありません。
しかし、「一部損壊」とはいえ、屋根の破損等、生活の維持に支障を生じる場合はあると認識しております。
「一部損壊」も支援対象にすべきでは
【山口議員】「一部損壊」に対しても、被災者生活再建支援法にもとづく支援の対象にすべきとは考ませんか。
支援制度の拡充は国に要望する(局長)
【健康福祉局長】本年6月の大阪北部地震以降、被災した一部の自治体において、国の支援制度の対象外になる損害についても独自で支援を開始しており、現在詳細な情報収集に努めている。これまでも国に対し、あらゆる機会をとらえ、被災者の方々の生活再建のための支援制度の拡充を要望してきましたが、このたび発生した災害による被害状況や被災した自治体の取り組みを踏まえ、引き続き必要な支援策が行なわれるよう、要望していく。
市独自に医療費負担や保険料減免などを講ずるべきでは
【山口議員】支援金の支給をはじめ医療費負担や保険料の減免等、市独自の支援策を講ずる考えはないか、答弁を求めます。
「床上浸水」には「半壊」相当の国保料減免を適用(局長)
【健康福祉局長】国民健康保険料等の減免には、2000年の東海豪雨はじめ浸水災害が発生した際の「床上浸水」にも「半壊」相当の減免を適用しています。
「一部損壊」世帯への市独自の支援制度を
【山口議員】「一部損壊」世帯への支援という点で河村市長に質問します。
健康福祉局長からは、「一部損壊」でも生活の維持に支障を生じる場合はある、被災自治体の取り組みも情報収集している、そして名古屋市でも東海豪雨などで支援対象を独自に拡大してきた、こういう実績がある、と言われた。これは大事な答弁だと思いますが、それでも結論は、引き続き国に制度拡充を要望する、ということでした。ぜひもう一歩、踏み込んでいただきたい。
河村市長は先日の提案理由説明で、こう述べられました。「市民の皆様の生命・財産を守ることは、行政に携わる者の最大の使命の一つであり、大規模災害への万全の備えが急務である」と。
「市民の生命・財産を守る」と言うんだったら、災害にあって財産を失った、住まいを壊された、こういう市民の生活再建にも力を注いでいただきたい。
被災の程度に関わらず、失われた財産の回復を支援するのは行政として当然の使命だと私は考えますが、市長のお考えはいかがでしょうか。
とくに現行法では支援の対象とならない一部損壊世帯に対する支援制度を名古屋市としても整備し、災害に備える必要はありませんか。答弁を求めます。
「一部損壊」被災者を応援することは必要。勉強してすすめたい(市長)
【河村市長】小学校5年生のときにちょうど伊勢湾台風がきて、木造二階建てだったもんで、壁がみんな抜けてまってえりゃーことになりました。半壊って言ってましたけど、定義に当てはまらなんだか、どういうふうにされたかわかりませんけど、当時は大変だったもんで。だから全壊、半壊ということだけでわけてしまうというのは、適当でにゃーと思います。壁が抜けた場合はどうなるんだ、適用がにゃーんでにゃーかという話だそうですわ。「一部損壊」っていろんな対応があると思いますけど、応援することは必要であって、名古屋市独自のやり方も、他の自治体がだいぶやりかけたようですので、ちゃんと勉強させていただいてすすめていきたいと、こういうふうに思っとります。
支援から漏れる被災者がないよう、市長のイニシアティブを(意見)
【山口議員】市長からは前向きの姿勢が示されたと思います。被災者の生活を再建する。今市長も壁が抜けたとおっしゃられましたが、屋根が抜けたらほんの一部であっても大変なんです。とりわけ住まいの補修と再建が重要です。そのためには健康福祉局だけじゃなく、住宅都市局の力も借りなければならない。この二局が連携し、支援から漏れる被災者がないように。そのためには二局にがんばっていただくのと同時に、市長と防災危機管理局のイニシアティブが本当に必要になります。市民の生命と財産、守り切るための力強い防災行政をすすめていただくよう要望して質問を終わります。
キーワード:環境と防災、まちづくり、山口清明