さいとう愛子議員の議案外質問①(2018年9月20日)

市民が願う図書館機能の充実を
                   さいとう愛子

「なごやアクティブ・ライブラリー構想」は知られていない
【さいとう議員】昨年末に策定された「なごやアクティブ・ライブラリー構想」は、鶴舞中央図書館を除く市内20図書館を5つのブロックに分け、図書館に蔵書数などで格差をつける構想ですが、名東区も千種区も、まず始めに実行される第1ブロックにあります。第1ブロックでは、アクティブライブラリーと名づけられた蔵書数15万冊の直営館は、「千種区内に置き」と明記されているので、名東・千種両図書館ともに大きく変わることになります。運営は「民間活力の活用」となり、司書は、市内5ブロックに1か所のアクティブライブラリーに集約され、蔵書数は、それぞれ約10万冊近い現状から、5~7万冊のコミュニティライブラリーか、1~4万冊のスマートライブラリーとなってしまい、大幅に減らされる「構想」です。
 教育長は昨年11月定例会での私の質問に対して、アクティブ・ライブラリー構想にもとづく「第1ブロック内全体の図書館機能の再配置を検討する際には、市民アンケートやワークショップを実施するなど、市民意見の把握に努める」と答弁されました。
 私たちは、独自に、名東区と千種区を中心にして、図書館のアンケートを地域へ配布し、671通の返信と貴重なご意見をいただきました。アンケートは、図書館利用の回数、「なごやアクティブ・ライブラリー構想」を知っているかどうか、図書館に期待する役割などを聞き、市の図書館への要望も記述していただきました。
 この「構想」について、名前も知らなかった方が、名東区では64%と千種区では65%、ほぼ3分の2で、認知度は非常に低いという結果です。2つの区とも、名前も内容も知っていた方は約11%にすぎません。月に1回以上の利用者でも、約14%しか、内容を知らなかったと答えており、毎月図書館を利用する人でも85%は内容を知らないのです。しかも、内容も含めて知っていた人ほど「反対」が多く、回答者の中でも利用回数が多いほど、反対の割合が高くなっています。

なごやアクティブ・ライブラリー構想
区分 運営形態 蔵書数
中央館(鶴舞図書館) 直営 130万冊
ブロックごとの地域サービス館 アクティブライブラリー 直営 15万冊
コミュニティライブラリー 民間活力の活用 5~7万冊
スマートライブラリー 1~4万冊



名東図書館の蔵書数を維持することが、図書館機能充実に絶対必要な条件ではないか
【さいとう議員】名東区のみなさんには、「『構想』によると、本の冊数が現行約9万冊から1~7万冊になるなど、縮小の方向ですが、どう思いますか?」と聞きました。回答者の56%が「反対」。「やや反対」を合わせると、7割を超えています。
 「反対」の人からは、「現在の冊数でも充分(充実している)とは感じていないのに、さらに減ってしまうとしたら図書館の魅力がなくなり、利用しなくなると思う」「もともと名東図書館には読みたい本の在庫数が少なかったり、そもそも蔵書していないことが多いのに、さらに減るなどもってのほか」など強く反対する声がだされました。中央図書館など、他の図書館から借りる方法は利用しにくい、という意見もありました。たとえば、子どもが利用しようとするとき、「子どもはその場にある本の中から選ぶ事がほとんどのため、図書館に本がある事が大事」「蔵書の数が多いほど、自分や家族が読みたいと思う本に出会える機会は増えると思う。蔵書の数が少ない図書館はあまり行きたいとは思いません」などです。
 このように、名東図書館の蔵書数が減ることについては、強い反対の声、サービス低下につながり、行きたくないとの声がたくさん寄せられています。この声を受け止めるべきです。
 そこで、教育長にお尋ねします。名東図書館の蔵書数については、少なくとも現状の冊数を維持することが、図書館機能を充実させる絶対必要な条件になると考えますが、いかがお考えですか。

「なごやアクテティブ・ライブラリー構想」にもとづいて再編(教育長)
【教育長】2017年12月に策定した「なごやアクテティブ・ライブラリー構想」では、蔵書数を含め、これまでの一律的な図書館運営を見直すこととしており、「アクティブライブラリー」など、利用目的に合わせた3タイプとし、いずれの図書館も、新しいサービスと組み合わせ、居心地のよい、魅力のある施設にしていきたい。
 名東図書館も、利用状況や市民ニーズなどを踏まえた蔵書と居心地のよい施設とし、ブロック全体として、今まで以上に機能の向上を図り、より充実したサービスを提供できるようにしたい。

ブロックの範囲は広大、各区ごとの図書館機能の充実やサービス向上が必要(意見)
【さいとう議員】名東図書館の蔵書数を維持することを求めましたが、「ブロック内をひとつのネットワーク網としてサービスを向上させる」といわれました。
 第1ブロックは千種区・名東区・守山区・東区とたいへん広大な地域です。利用目的に合わせて3つのタイプ違いの図書館があるといわれても、利用者は広域に図書館を利用しているわけではありません。
 「構想」策定のおりに、教育委員会自身が調査した、地域別実貸出率でも、図書館所在学区と隣接学区は貸出者の割合が、明らかに高くなっています。また、私たちが実施したアンケートでも、名東区では名東図書館の利用が70%、千種区では千種図書館の利用が64%と地元図書館の利用が圧倒的に多いのです。まさに、地元図書館の大幅な蔵書の縮小は、図書館の魅力を半減させ、新たな利用者をふやすどころか、現在利用している人の期待にも応えられないのではないですか。
 新しいサービスと組み合わせ、居心地の良い施設をつくると言われてましたが、地元の図書館の利用が圧倒的であることをふまえ、蔵書数の縮小ではなく、身近な図書館として機能の充実、サービスの向上こそ必要であると考えます。

市職員の司書を集約して市民の要望に応えられるか
【さいとう議員】図書館に期待する役割として、6割を超えたのは、「誰もが資料や情報を無償で自由に利用できる」「読書などを楽しむことができる」「子どもたちが読書の楽しみを育むことができる」の項目を選んでいます。
 図書館にどんな本を置くのか、選書という作業は、日ごろ市民が求める本を、レファレンスや貸し借りの中で司書が決めていく重要な仕事です。司書は、毎日、市民と接し、ていねいに要望を聞き、いっしょに本を探したり、疑問に答えたり、と図書館を訪れる市民の気持ちに寄り添って仕事をしています。日ごろから利用者のそばにいて、どんな本をさがしているのか、読まれているのか、一番知っているのは、それぞれの図書館にいる司書であり、将来的な展望を見据えての図書館方針や計画を立てるのが司書の役割です。
 司書がアクティブライブラリーに集約されたら、この選書機能はどのようになるのでしょうか。
 現在、志段味図書館の選書は、鶴舞中央図書館が行い、中村と富田の図書館の選書は、中川図書館、緑・徳重図書館の選書は、瑞穂図書館が行っています。通常、利用者と接していない隣の直営館の司書が、歴史や風土、地域の状況もそれぞれ特色のある各図書館利用者の要望に応えて、選書を行うことは、むつかしいのではないでしょうか。地域の特性をふまえ、身近に市民と接する司書が、各図書館で選書を行っていくことが市民にとって最も望ましく、現在進められている指定管理化の重大な問題点であると考えます。
 アンケートでは、「司書が少なく、カウンター業務の担当者の知識不足を感じることも伴って、正直なところ利用しづらいことがある」「地域の特色を生かすべきで、司書は充実する方向であるべきで、集中化すべきでない」「司書を引き上げ集約統合した大図書館づくりは市民を図書館から遠ざけることになる」との意見をいただいています。
 そこで、教育長にお尋ねします。鶴舞中央図書館と各ブロックのアクティブライブラリー以外で進められようとしている「民間活力の活用」という名の指定管理化では、地域にあった、市民の要望に沿った選書ができなくなるのではないですか。市全体のバランスを考慮して選書する(教育長)
【教育長】構想では、鶴舞中央図書館のほか5つの図書館は直営とし、市職員である司書を配置することにしている。このことで、直営館ではブロック内の選書の他、専門的サービスや各地域の状況を踏まえた企画立案等に特化した業務を行うことができるようになる。
 民間活力を導入する図書館での選書は、スタッフに一定割合の司書を配置し、市職員の司書と協力しながら、ブロック内の地域や学校など関係機関と連携を深め、地域の特性や市民の要望をきめ細かく把握する。
 市職員の司書が各館の収集方針、本市図書館の蔵書全体のバランスを考慮しながら、責任を持って選書を行っていきたい。

アンケートでも要望が大きい、千種図書館の建て替えはいつなのか
【さいとう議員】千種区のみなさんには、現在の千種図書館について、自由に記述していただきました。「ベビーカーで行けないので、そういったことを考慮した作りにして欲しい」「駅から近い所で」など、立地条件が悪いことに対する意見が多数ありました。
 部屋の配置についても「勉強をするスペースが少なく不便。学習室があればもっとひんぱんに利用したい。階段が多くしんどい。もっと充実させてほしいと前々から思っていました」「とにかく問題は現代にはそぐわない施設」など、図書館機能にふさわしい改築をおこなってほしいと切望する声が多く届いています。
 千種図書館は、今年で築50年となり、耐震性が低く、2015年には土砂災害特別警戒区域にも指定され、今年の豪雨災害・地震災害を考えると、一刻も猶予のない状況です。
 千種図書館について、教育長は、昨年11月定例会での私の質問に対して、「『なごやアクティブ・ライブラリー構想』の策定後、早急に施設整備の方向性の検討を進めたい」と答弁されています。「構想」は昨年末に策定されました。
 そこで、教育長にお尋ねします。「施設整備の方向性の検討」は始まっていますか。千種区民の多くは、地下鉄駅に近い場所への移転・改築を求めていますが、具体的に進展がない理由はなんですか。移転・改築時期を明らかにしてください。

建て替えが必要なことは認識。第1ブロックの整備方針を決めながら検討する(教育長)
【教育長】現在の千種図書館は建て替えが必要であると認識している。「なごやアクティブ・ライブラリー構想」では、建築年次の古い施設が多い千種図書館を含む第1ブロックの施設を優先して整備することにしている。構想策定後、第1ブロックの施設整備方針策定に向けた調査の進め方の内部検討を進めており、今年度は、第1ブロックの施設整備方針の策定に向けて、市民ニーズ調査や有識者からの意見聴取などを行っていく。
 千種図書館の移転・改築時期は、第1ブロックの施設整備方針を策定する中で、検討したい。

ニーズ調査をもうやっている。駅付近に移転改築を(再質問)
【さいとう議員】築50年目の耐震性の低い千種図書館の早急な建て替えについては、認識が一致するところですが、スピード感が全くありません。今年度、ニーズ調査を行いながらとのことですが、私たちはすでにアンケートをおこないました。その中では、駅に近いところに図書館を移転改築してほしいという声が多く寄せられていると先ほども申し上げましたが、この要望に応えていただきたいと思います。再度、教育長にお聞きします。

第1ブロックの施設整備方針を策定する中で検討(教育長)
【教育長】千種図書館の建て替えは、交通の便がよい図書館での入館者数が多い図書館の利用状況も踏まえながら、第1ブロックの施設整備方針を策定する中で検討していきたい。

一刻も早く、駅近で、千種図書館の建て替えを(意見)
【さいとう議員】千種図書館については、改築時期も移転先も、これから検討するということです。かつて、東山動植物園再生プランの中で東山公園駅前での建て替えが構想されたこともありましたが、この構想が白紙になり、建て替え計画の具体化は進んでいません。「なごやアクティブ・ライブラリー構想」という図書館の再編・集約化を理由に、建て替えが大幅に遅れていることは問題だと思います。
 「一刻も早く」「駅に近い場所で」という市民の要望に応えて、建て替え計画の具体化を急いでいただくよう要望します。

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