青木ともこ議員の議案外質問①(2018年9月21日)

公立保育所における保育士の労働実態把握について
                 青木ともこ議員

臨時保育士59名・嘱託保育士127名が不足 定員超過受け入れの体制が取れない
【青木議員】全国的な保育士不足が深刻となるなか、本市の現場でも、保育士確保が大きな課題となっています。現在、公立保育所では、フルタイムの臨時保育士が、9月1日で59人、パートの嘱託職員は127人が不足しています。このため、待機児童対策の定員超過受け入れの体制が取れず、保育士が足りている他の園から職員を借りてくるというケースや、本来フリーとして欠員補助にあたるはずの予備保育士ひとりで超過受け入れをこなすというケース、また、園全体で欠員をカバーするために、園長が給食を作るという事態も起こっています。

保護者からも手不足を心配する声
【青木議員】そんななか、慢性的な人手不足を心配する声が保護者たちからあがり始めています。親同士のラインで「産休代替の先生がいつまで経っても発表されない」と話題になったり、また、ある保護者からは「こんなギリギリの状態で、事故ひとつ起こさず、子どもたちをしっかり見てくれているのには本当に驚き感謝します。だけど、そこに頼るだけで私たちは安心出来ません。名古屋市にはなんとかしてもらいたい」そんな声が聞かれます。

過重労働や家庭との両立の困難さなどで保育士のなり手が不足
【青木議員】保育士不足が生じる背景に、子どもたちの命と安全をあずかるという職責に、賃金が見合っていないということ、過重な労働による家庭との両立の困難さなどが、保育士のなり手不足を招いていると指摘されますが、この事を裏づける実態調査があります。
 研究者が中心となった「あいち保育労働実態調査プロジェクト」が、今年3月初め、市内の公・民認可保育所の正規職員を対象にした調査結果を発表しました。全職員の約4割に当たる2660人が回答したもので、公立園では76.5%が回答し、これだけ大規模な調査は全国初となり、メディアも大きく取りあげ注目されています。
 調査結果は、保育士の時間外労働は月平均16.6時間。うち13時間がいわゆる「サービス残業」で、残業40時間以上は1割近く、過労死ラインをはるかに超える135時間という回答もあります。「持ち帰り仕事をしている」は約8割にものぼり、賃金への不満は62.4%で若い層に目立ち、理由は「仕事に見合わない」「他の産業に比べ低い」「残業代が支払われない」。その一方、「仕事へのやりがい」は95.7%という高さにも関わらず、「仕事を継続したい」は50%、「迷っている」24.2%と、やりがいが継続意欲に必ずしも結びつかないという結果となりました。
 そこで、子ども青少年局長にうかがいます。この調査結果をどのように受けとめておられますか。また、本市も独自にこのような保育士の労働実態調査を行い、課題解決に向けた取り組みに活かすことが必要と考えます。まずは、公立保育所を対象に実施すべきではありませんか。

公立保育所での業務実態は延長など職員から聞いて把握している(局長)
【子ども青少年局長】公立保育所での業務実態は、園長はじめ職員からの意見や要望を聞くなかで把握しており、今後とも労働実態の把握に努めたい。

サービス残業をなくすために、「カードリーダー」による出退勤管理の検討を
【青木議員】「子どもたちがいる時間はすべて子どもたちに向き合う」のが、保育士のみなさんの1日です。しかし、クラス便りや週案と月案の作成、保育準備に行事準備と、保育指針に定められた業務を、子どもたちと向き合いながら時間内にやり切るのはとても困難で、多くの保育士が休憩や休暇制度を返上し、時間外にも業務をこなし、それでも終わらなければ「持ち帰り仕事」をせざるをえないのが現状です。業務量に見合った人員配置へ、抜本的な改善が必要です。本市は、この事態を受けて、公立保育所に対し超過勤務の申請をうながすなど、「サービス残業」や「持ち帰り仕事」をなくしていくよう、働きかけていますが、状況の改善をめざすなら、まずは保育士の勤務実態を把握することが必要です。本市の公立保育所では、本庁や区役所に見られるような「カードリーダー」による出退勤管理が行われていません。「いつ出勤して、いつ帰ったのか」、客観的に勤務実態を把握したうえで、業務量に見合った人員配置の見直しなど、改善策を検討して頂きたい。そこで子ども青少年局長に提案いたします。
 本市の公立保育所において「カードリーダー」による出退勤管理を早期に検討するお考えはありませんか。お答えください。

園長が帳簿で把握、管理している(局長)
【子ども青少年局長】園長が管理者として帳簿等を利用して勤務時間の把握、管理を行っている。労務管理を適正に行うことは重要で、園長が職員に声かけするなど職場全体での意識付けに注意を払っている。今後とも適正な労務管理に努めたい。

保育職場の疲弊は保育の質の低下につながる。実態調査せよ(再質問)
【青木議員】「あいち労働実態調査」は、保育職場の疲弊をありありと示す結果が出たわけです。民間の調査だと看過できる状況ではないという問題意識はおありでしょうか。
 教育委員会は、2011年より、小中学校などの教員を対象に勤務実態に関するアンケートを2回実施し、調査結果を活かした多忙化対策などに取り組み、今後も調査を継続していくとのことです。教員も保育士も等しく、子どもたちと向き合う仕事をしています。保育士が調査の対象にならない理由はないはずです。
 保育職場の疲弊は保育の質の低下につながりかねません。「本市の責任で、保育士の労働実態をつかむ」、その本気を示すべきではありませんか。調査の実施を再度求めます。

参考点があるか研究したい(局長)
【子ども青少年局長】教育委員会の「教員の勤務実態に関するアンケート」は、教員の勤務状況及び多忙感についての実態把握等を目的として実施されたと聞いている。調査内容を確認し、公立保育所における保育士の労働実態の把握に参考とすべき点があるか研究したい。

保育士の実情にどうか向き合ってください(意見)
【青木議員】「教員のアンケート」は、教員の多忙化を解消し、子どもたちにより良い教育をと願って、役立てるための労働実態調査だと理解しています。より良い保育をめざすなら、保育士に対しても、同様の調査が必要です。カードリーダーによる勤務実態把握の導入と合わせて、引き続き要望してまいります。
 名古屋市は、国の保育士配置基準を上回り、民間保育士に対しても、公私間格差是正の民調費という市独自の制度があり、他都市に比べて条件が良いと言われますが、先のプロジェクトの実態調査の結果は、その見通しに反するものでした。この実情にどうか向き合ってください。そして、国の低すぎる保育士配置基準、抜本的な拡充が必要ですが、自治体として出来ることに力を尽くしてくださいますことをお願いします。

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