名港議会 山口清明議員の一般質問①台風と高潮(2018年11月5日)
台風による高潮等の被害
山口清明 議員
9月の台風21号、24号による被害が特に大きかった
【山口議員】今年の夏は数々の災害が日本列島を襲いました。港湾に関しては9月の台風21号、24号による被害が特に大きいものとなりました。名古屋港でも、台風による高潮浸水等の被害からしっかりと教訓を学ぶ必要があります。
まず9月4日の台風21号による大阪湾、阪神港の被害状況についてです。この台風により大阪港及び神戸港では1961年の第二室戸台風を超える最高潮位、大阪港では329㎝、神戸港では233㎝を観測しました。
この高潮による浸水等により、コンテナの漂流やクレーン等電気設備の損傷が発生し、コンテナターミナルの利用が困難になるなどの被害が発生し、港湾物流が大きく停滞しました。コンテナの火災が一カ月経っても鎮火せず、多くの輸出用自動車が火災と浸水により被害を受けました。
神戸港での台風21号の被害 神戸市災害警戒本部(2018年9月6日現在) |
【臨海部の被害状況】 ・六甲アイランドの岸壁からコンテナ約 40 本流出。 ・六甲アイランドで冠水した車両 10 数台が燃える火災発生。 ・六甲アイランドで冠水したコンテナ火災発生 ・東灘消防署六甲アイランド出張所の冠水。 ・神戸空港島で駐車場、物揚場など一部浸水。 ・臨海部の工場からガスボンベ等流出。 ・港島トンネルで浸水、通行止め。その他でも浸水発生など。 ※詳細等は継続調査中 |
こうした被害の全体像や詳細の把握、原因究明、今後の対策等については、国が設置した「大阪湾港湾等における高潮対策検討委員会」で現在も検討が続けられています。いくつもの課題がありますが、名古屋港でもすぐに対策が必要な問題について、今回は神戸港の被災状況に限定して紹介しつつ、数点質問します。
コンテナの倒壊、流出、漂流に対する現状と対策は
【山口議員】第一に、コンテナの倒壊、流出、漂流の対策です。
神戸港では 多くのコンテナが倒壊し、43本が流出・漂流しました。9月14日までには調査及び回収作業が終了したようですが回収までには10日を要しました。コンテナ流出については神戸市の地域防災計画に具体的な対策がなく、神戸港港湾BCP(事業継続計画)でも今後の中期的な計画目標の一つに掲げられていただけで、具体的な対策の検討は手付かずのままでした。
愛知県では9年前2009年に台風18号により三河港のコンテナが136個も流される被害が発生しています。
名古屋港の災害対策アクションプランには木材流出対策はありますが、コンテナ流出を想定した対策がありません。コンテナの倒壊、流出、漂流に対する現状と対策はどうなっているのか、神戸港の被災状況を踏まえた答弁を求めます。
ヤードに勾配があり、伊勢湾台風並の高潮でもコンテナ流出の可能性は極めて低い。さらに「段落とし」や「固縛措置」も実施(部長)
【港営部長】名古屋港の各コンテナターミナルにおいては、ヤード部分が背後に向かって勾配をつけ地盤が高くなっており、伊勢湾台風襲来時の既往最高潮位である名古屋港基準面(N.P.)プラス5.31メートルの高潮が発生した場合でも、ヤード内に蔵置してあるコンテナが流出する可能性は極めて低い。
各事業者は、台風襲来時に3段以上に積み上げられ蔵置されているコンテナを2段程度にまで高さを抑えて蔵置する「段落とし」やベルト等で固定する「固縛措置」を実施するなどの対策を行っている。
発火の危険があるコンテナの対策は
【山口議員】六甲アイランドで9月5日未明に発生し
たコンテナ火災は一カ月以上たっても鎮火しませんでした。火元はマグネシウム計66トンを積んだコンテナが三つあり、台風による高波で海水に浸かった後に火が出て、他のコンテナ10個にも火災が広がりました。マグネシウムは水に触れると化学反応で発熱・発火する性質があります。つまり放水では消火できません。砂をかけたり、マグネシウムを重機で取り除いたりと懸命の作業が続けられています。
名古屋港でも5年前2013年に作物用肥料の原材料となる化学薬品シアナミドを積んだタンクコンテナが爆発する事故が起きました。
名古屋港ではマグネシウムを積載したコンテナを取り扱っていますか。発火する危険性がある物質を積んだコンテナの管理、消防との連携はどうなっているのか、うかがいます。
消防法上の危険物の取り扱いは確認されていないが、あれば法に基づいて適切に行う(部長)
【港営部長】名古屋港は、現時点ではインゴット形状でのマグネシウムの取扱いがあることは確認しているが、消防法上の危険物の扱いとなる2mm未満の粒形状等でのマグネシウムの取扱いは確認されていない。消防法の対象となる、危険物を取り扱う場合には、同法に基づき適切に管理することとなっている。
輸出用自動車の高潮に対する現状と対策は
【山口議員】神戸港の岸壁近くの集積所(ヤード)にあった輸出用
中古自動車が数千台規模で被害を受けました。冠水した自動車が火災を起こし炎と黒煙があがる映像が流されましたが、被害は火災を免れた自動車にも広がりました。
新聞記事によると「六甲アイランドの岸壁近くのヤード、浸水被害にあって輸出できなくなった約2500台の中古車がずらっと並ぶ。外見上は無事のようだが、ある高級車のドアを開けると、座席の下のフロアマットは濡れたまま異臭を放ち、本革シートは一面カビだらけだ・・・海水に浸かった車は発火の恐れがある。さらに被害から一カ月以上で車輪周りが錆び、押して動かすこともできない・・・」数千台が廃車にせざるを得ない、岸壁から移動もできない、まさに塩漬け、と報じられています。
日本最大の自動車輸出港である名古屋港のモータープールは大丈夫でしょうか。岸壁近くにもずらっと並んでいる輸出用自動車について高潮に対する現状と対策をうかがいます。
地盤も高く、港外退避の際には完成自動車がモータープールから荷さばき地へ搬出されることはない(部長)
【港営部長】台風の襲来は事前に把握可能であり、台風接近時には船舶に対する暫戒体制が発令され、港外退避が行われた場合、名古屋港では、完成自動車がモータープールから荷さばき地へ搬出されることはない。荷さばき地に蔵置されている場合は、メーカーや港運事業者の判断によりモータープールへ引き上げを行っている。
モータープール周辺の地盤は比較的高いため、伊勢湾台風襲来時の既往最高潮位である名古屋港基準面(N.P.)プラス5.31メートルの高潮が発生した場合でも、自動車が流出する可能性は極めて低い。
風について名古屋港の災啓対策ではどのように想定しているのか
【山口議員】さて台風による高潮被害があったのは阪神港だけではありません。名古屋港ではどうだったのでしょうか。
9月30日の台風24号について、名古屋地方気象台は伊勢
湾や三河湾を中心に1959年の伊勢湾台風に匹敵する記録的な高潮になる恐れがあると発表しました。
伊勢湾台風では名古屋港の最高潮位はN.P5.31mでした。幸い24号接近時の最高潮位はN.P3.63m、台風21号はN.P3.43mでした。
現在、愛知県が4年前(2014年)に作成した高潮浸水想定では、室戸台風(1934年、911.6hPa、最大風速は60mを超え測定不能)が最も高潮の影響を受ける最悪のコースを通過したと仮定し、名古屋港には30㎝~5mの浸水が想定されています。この場合の想定潮位はN.P7.91mです。つまり今回の高潮は、想定範囲内ではありました。
あわせて高潮被害が大きくなる要因の一つに「風による吹き寄せ効果」があります。強い風が沖から海岸に向かって吹くと、海水は海岸に吹き寄せられ、海岸付近の海面が上昇します。
この効果による潮位の上昇は風速の2乗に比例し、風速が2倍になれば海面上昇は4倍になります。観測場所などが異なるため数値では比較できないとのことですが、台風21号では名古屋港での最大瞬間風速は秒速46.3m、伊勢湾台風時の秒速45.7mに匹敵する暴風が吹き荒れました。この風に注意を向ける必要があります。
伊勢湾台風に匹敵する強風、暴風が吹き荒れたわけですが、風について名古屋港の災害対策ではどのように想定しているのですか。お答えください。
名古屋港の災害対策では風について想定していない(危機管理監)
【危機管理監】建築物や工作物の設置にあたっては、おのおのの設計基準に応じた風荷重等を考慮していますが、名古屋港の災害対策では風について想定していません。
台風接近時には、気象庁が発表する台風情報、気象警報・注意報や名古屋港長が発令する警戒体制などの情報収集に努め、名古屋市、知多市、東海市、弥富市または飛島村のいずれかに暴風に関する警報が発表された際は、ただちに名古屋港管理組合災害対策本部を設置するとともに、非常配備体制を敷き、気象情報等の授受・伝達、関係機関との連絡調整、所管する施設等の現況把握などを行い、災啓の発生に備えている。
名古屋港におけるコンテナの倒壊とその原因は
【山口議員】先の議員総会では、台風による影響について、「港湾施設などへの大きな被害はなかった」と報告されましたが、ほんとうに大きな被害はなかったのでしょうか。まず事実を確認したいと思います。
港湾の被災状況については国土交通省が随時発表しています。それによるとこの地域では台風21号による被害として、四日市港では空コンテナ約30個が転倒。三河港でもコンテナ1個が転倒。福井県敦賀港でもコンテナが転倒し、2個が漂流と報告されています。三河港では24号でもコンテナが複数個散乱したと報告されています。名古屋港のコンテナだけが無事だったのでしょうか。
調べてみると、「日刊CARGO」2018年9月15日
に、見出しは「名古屋港 荷役に支障なし」とありますが、「台風21号によって鍋田ふ頭のバンプールに蔵置されたコンテナの一部が崩れるなどの被害があった」という記事がありました。またSNS上にも、「鍋田ふ頭コンテナターミナル 台風対策したのにこの状況」として4段や5段積みのコンテナが倒壊している写真が複数投稿されていました。
名古屋港のコンテナターミナルは二つの台風ではどこも浸水していません。ところが台風21号により、名古屋港でもコンテナの倒壊が起きていたのではありませんか。どこで、何本崩れたのか、その原因は何か、まず事実を正確かつ端的にお答えください。
空コンテナが強風で40本程度崩れたと聞く、早期に復旧した(部長)
【港営部長】名古屋港における被害状況を最終的に確認したところ、鍋田ふ頭コンテナターミナル背後のバンプールにおいて空コンテナが強風により40本程度崩れたと聞いているが、復旧措置は早期に終結し、物流に大きな影響はありませんでした。
空コンテナが40個も崩れた原因は(再質問)
【山口議員】台風21号による神戸港、とくに六甲アイランドコンテナターミナルなどで大きな被害が発生したことを受け、国も高潮対策の強化に乗り出しています。今年3月に策定したばかりの、高潮リスク低減方策ガイドラインについても今回の災害を踏まえた見直しを行うことになりました。
名古屋港でも、「港湾施設などには大きな被害はなかった」で済ますのでなく被害が小さな段階だからこそ、徹底的に教訓を学び次の災害に備える姿勢が必要です。
風とコンテナについて、もう少しうかがいます。
高潮については、「伊勢湾台風級」と報道され警戒が呼びかけられましたが、実際に伊勢湾台風級だったのは風でした。
その強風で、鍋田ふ頭でも空コンテナが崩れた。「40本程度崩れた」かなりの数ですよ。名古屋港でも空コンテナが崩れたことを認めましたね。なぜ国土交通省にも、私たち議会にもそのことを報告しなかったのか。隠したのですか。
四日市港では約30本が転倒と報告されている。報告する際の基準が違うのか。きちんと被害を把握し、その原因を検証してこそ、次の災害への備えができるのに、こんな状態ではとても心もとない。
しかも「名古屋港ではヤード内からコンテナが流出する可能性は極めて低い、台風が来た時、各事業者は、3段以上のコンテナを2段程度まで高さを落とす「段落とし」やベルトなどで固定する「固縛措置」を実施する対策がとられている」と答弁しましたね。
ところがヤード内ではありませんがすぐ隣のバンプールで空コンテナが40個も、波もかぶらず、風だけで崩れ落ちたのです。
そこでもう一度うかがいます。鍋田ふ頭で空コンテナが40本も崩れた原因は、段落としや固縛措置など 会社が十分な対策をとっていなかったためですか、それとも対策は十分にとっていたが想定以上の強風のために崩れたのですか、そうだとしたら「名古屋港の災害対策では風について想定しておりません」、と答弁されたが、名古屋港の災害対策、被害想定が不十分だったことになりますね。どちらですか。それとも他に何か原因があるのか、はっきり答えてください。
蔵置スペースの都合で「段落し」ができず、「固縛措置」となった5段積みの空コンテナが崩れた(部長)
【港営部長】各コンテナターミナルでは台風襲来時、民間事業者が物流への影響を最小限に抑えるため「段落し」及び「固縛措置」等の対応を行っています。
鍋田ふ頭のコンテナターミナル背後のバンプールについても同様の措置がされていますが、蔵置スペースの都合により「段落し」ができず、やむを得ず「固縛措置」のみの対応とならざるを得なかった5段積みの空コンテナが、強風により崩れた。
なぜ被害報告をしなかった(再質問)
【山口議員】近隣の港ではコンテナが一個動いても国土交通省に被害報告を出しています。この事態をなぜ報告しなかったのですか。専任副管理者は報告を受けていたのか、いなかったのか。受けていて報告する必要がないと判断したのならその理由は何か、明確に答弁してください。
物流に大きな影響がなかった(部長)
【港営部長】本組合では、台風通過後速やかに被害状況の収集に努めており、各コンテナターミナルでも、民間事業者の協力で被害状況の情報提供を受けている。この際、事業者からはバンプールで空コンテナが「ずれた」との報告を受けていたため、その旨を専任副管理者に報告した。その後、SNSなどでバンプールの空コンテナが崩れている状況を把握したので、改めて事業者に確認したところ、空コンテナが強風により崩れたとの報告を受けた。
復旧措置は早期に終結し、物流に大きな影響はなかったため被害報告はしなかった。今後も的確に情報を把握できるよう、港湾関係者との連携を十分に図っていく。
管理者は報皆をうけたのか。事実経過を明らかにし、教訓を引き出すべきだ(再々質問)
【山口議員】風によりコンテナが崩れた。再答弁では、最初、事業者からは、「コンテナがずれた」との報告があった。あらためて問い合わせたら「強風により崩れた」と。
質問してようやく40本という数と、やっていると答弁した「段落とし」もやっていなかったことが明らかにありました。事実をありのまま報告するのを意図的に怠っていたとしか思えません。
名古屋港の災害対策は、これまでは南海トラフを震源とする巨大地震と津波への備えを中心に進められてきました。しかし、いわゆるスーパー台風への備えがあらためて問われます。港湾BCPでも台風への備え、高潮だけでなく暴風対策をしっかりしてください。
台風への備えとして有効だと言われるタイムラインも事業者といっしょに作ってください。これは強く要望しておきます。
コンテナが崩れた今回の災害からしっかり学びましょう。隠してはいけない。
管理者にうかがいます。あなたにはコンテナ被害の報告があがっていたのか否か、この台風被害、大きな被害がなかった、で済ましていいのか、再度、事実経過を明らかにし、しっかりと教訓を引き出す必要があると私は考えます。
いまからでもおそくありません。事業者からきちんと経過を聞き取ったうえで、国土交通省や議会に対して報告してください。
全然知らなんだ。真相解明をきちっとすし、報告する(管理者)
【管理者(名古屋市長)】コンテナの話は、全然知らなんだけど、いかんわね。報告はないですわ。なんでかと聞いたが、段落としとをやるために動かさなあかんもんで、そのスペースがなかったいうけど、本当か、やらなんだんじゃないのかと。そういう話はようありますから。
でかいところはこうやってよく過失を隠すんですわ。わしも民主におったときに国会Gメンの座長をやっとりましたんで、こういう追及が本業でございました。早速、この業者にちょっと来るように言って、ちゃんと聞いて、まあそこでも隠されるかわからんで、そのとき仕事をやっとった人間に聞かなあかん。本当にスペースがなかったで段を下げれなんだのかと。まあええわ、と思っとったんじゃないのかということを、再発防止のためにまず真相解明をきちっとせなあかんでね。きちっと報告しますので、お約束しておきます。