さはしあこ議員の議案外質問①(2018年11月29日)
災害時に妊婦や乳幼児が安心して過ごせる福祉避難所の確保を
さはしあこ 議員
指定避難所の福祉避難スペースは、要配慮者が安心して避難生活ができるように充足しているか
【さはし議員】本市は、「南海トラフ巨大地震の被害想定」を公表しており、発災1日後の避難者は約31万9千人と想定しています。現在、指定避難所の小学校では、地域の方とともに福祉避難スペースとして活用する部屋を決めています。
私が見てきた学校では、福祉避難スペースを予定している会議室に応接セットが置いてあったり、また別の学校では、特別活動室を使うことにしていますが、来年、児童が150人ほど増えるため、その特別活動室を教室に転用することになり、新たに福祉避難スペースの部屋を確保することは難しくなるとのことです。
このように、指定避難所における福祉避難スペースの設置は、そう簡単ではありません。しかしながら、災害時、特に配慮が必要な方が不安なく過ごせる場所の確保は絶対に必要です。必要とする方々に十分足りるのでしょうか。
そこで、防災危機管理局長にお伺いします。指定避難所に設置される福祉避難スペースの現場の状況を踏まえ、支援が必要な要配慮者が利用する福祉避難スペース設置に対する認識と現状の取り組み及び受け入れ体制についてお答えください。
(福祉避難所に関する実態調査・内閣府2015年3月)
9割弱の指定避難所がスペースを確保できたが、課題が残っているところもある(防災危機管理局長)
【防災危機管理局長】福祉避難スペースを設置することは大変重要と認識し、発災直後の混乱期にも迅速に開設できるよう、日頃から地域の皆様や施設管理者が話し合い、あらかじめ設置場所を決めており、2017年度末には9割弱の指定避難所でスペースを確保できた。
昨年度には主要な指定避難所である市立小中学校において、要配慮者を受け入れる環境整備として施設入り口から福祉避難スペースまで段差を解消するための簡易式スロープの配備を行った。
しかし、指定避難所の福祉避難スペースは平常時における各施設本来の活用目的もあり、福祉避難スペースの設置場所が課題となっている施設もある。防災危機管理局として要配慮者が安心して避難生活を送ることができるよう引き続き関係局や区役所と連携して福祉避難スペースの確保に向けて鋭意取り組む。
高齢者、障害者、乳幼児、妊産婦など要配慮者の福祉避難所の受入体制は
【さはし議員】先日、「障がいのある人もない人もともにつくる緑区民のつどい」で、熊本地震で被災された障がいのある男性の話をお聞きしました。その方は、日常、車イスで生活されており、地震の発災時、自宅から助け出されるのに数時間かかり、ようやく助け出され、小学校へ避難したものの、福祉避難スペースは、車イスが通るスペースがなく、多目的トイレもなかったそうです。そのため、他の避難所へ行かざるをえなく、転々と病院や障がい者施設を回ったそうです。受け入れ先でも、生活する場の確保が大変だったと語られました。
本市も福祉避難所については、指定を受けてくれる先方の理解や受け入れ体制の課題を丁寧に取り組んでこられているとは思います。しかし、指定がなかなか進まないのが現状で、そのほとんどが高齢者施設と障がい者施設です。
国は、さらに、「その他特に配慮を要する者」として、妊産婦、傷病者、内部障害者、難病患者等の人数も把握し、福祉避難所の指定をすすめるように求めています。
そこで、健康福祉局長におたずねします。災害時、福祉避難所を利用する要配慮者等を何人と想定しており、現在、指定されている福祉避難所での受け入れ体制についての現在の状況、また、福祉避難所の指定がすすまない要因をお答えください。
対象者数の把握は困難だが、一つでも多い方が避難者の方々にはメリット(健康福祉局長)
【健康福祉局長】「避難行動要支援者名簿」を作成しているが、一般の指定避難所での生活の可否は、その方の個別的具体的な状況で判断することになり、福祉避難所の対象者数をあらかじめ把握することは難しい。2016年の熊本地震では、熊本市で福祉避難所へ避難された方は585人で、この人数をもとに算定すると約1,900人となり、福祉避難所の必要数を考える上で、大まかな目安になる。 (右図:避難マップの例)
現在、福祉避難所は121カ所、受け入れ可能人数は4,876人です。福祉避難所の指定は、高齢者・障害者を対象とした社会福祉施設が適当と考えるが、社会福祉施設は平時から稼働しており、災害時は施設を利用されている方々の安全確保が第一であるため、福祉避難所を開設し、避難者を受け入れる余裕がないとの判断で、指定数が大きく伸びないのではないか、と考えている。
福祉避難所は一つでも多い方が避難者の方々にはメリットがあると考えるので、今後もより多くの福祉避難所の指定に向けて努力したい。
妊産婦・乳幼児専用の福祉避難所は国が「自治体の判断にまかせる」と言っているが、市はどう考えるか
【さはし議員】私は、2016年11月定例会の質問で、災害時リスクが高くなる妊産婦・乳幼児専用の福祉避難所の指定を求めました。健康福祉局長は、「妊産婦や乳幼児の方は、通常の避難所の中に設置される福祉避難スペースで、巡回による保健所保健師のケアを受けながら避難生活を送っていただくことを想定、国のガイドラインに沿った対応を取ることとしている。」と答弁されました。国のガイドラインに基づき、すすめているということですが、本市が判断基準にしている国のガイドラインのスクリーニング例では、妊婦の区分は「自立」、避難・誘導先は「大部屋」となっています。
そこで、私が、内閣府に確認したところ、本市が搬送の判断基準にしているスクリーニングの例は、あくまでも例であって、妊婦・乳幼児を指定した福祉避難所に搬送することは、自治体の判断にまかせるとの回答を得ました。地域防災計画では、福祉避難所は、福祉スペースと拠点的福祉避難所いわゆる福祉避難所に区分されています。そこで、健康福祉局長におたずねします。前回は、妊産婦・乳幼児は、福祉避難スペースの対象になるとしか答えませんでしたが、拠点的福祉避難所の対象と考えていいですか。国の見解を踏まえて、あらためて認識をうかがいます。併せて、今後の指定の方向性についてうかがいます。
福祉避難スペースや福祉避難所を利用いただく(健康福祉局長)
【健康福祉局長】地域防災計画に妊産婦・乳幼児を福祉避難所の対象者として明記しており、災害発生時には、他の被災者と同様、まず、一般の指定避難所に避難した上で、必要に応じて、指定避難所の福祉避難スペースや福祉避難所を利用するよう考えている。
今後も、配慮の必要な方が福祉避難スペースや福祉避難所で安心・安全に過ごせるよう、関係局とともに進めていく。
子ども青少年局は妊産婦・乳幼児専用の福祉避難所の必要性をどう考えるか
【さはし議員】(2016年11月の質問に対して)健康福祉局長は「妊産婦・乳幼児専用の福祉避難所の設置の必要性も含めて、今後どういったことができるかについて、関係局とともに検討してまいります。」と答弁されています。そこで、関係局である子ども青少年局長におたずねします。妊産婦・乳幼児のための専用の福祉避難所の必要性について、どのようにお考えですか。お答えください。
専用の福祉避難所は、必要性も含め、慎重に検討(子ども青少年局長)
【子ども青少年局長】妊産婦・乳幼児は、必要に応じて一般の指定避難所における福祉避難スペースでの生活を、また、身体等の状況から一般の指定避難所の福祉避難スペースでも避難生活が困難な方は、福祉避難所で受け入れることとされている。
妊産婦・乳幼児への避難時の対応は、安心・安全の観点から今後どういったことができるか、関係局とともに専用の福祉避難所の必要性も含め、慎重に検討したい。
災害時に地域子育て支援拠点の活用を検討してはどうか
【さはし議員】私は、小さなお子さんのいる家族が、避難所へ行くことさえためらい、避難所生活で、他の避難されている方々への気遣いなどから居づらくなることがあってはならないと思います。
「熊本県男女共同参画センターはあもにい」が実施した、育児中の女性へのアンケート調査によると、避難所生活の不安は、「こどもが夜泣きする等で迷惑をかけること」「申し訳ないと避難所に行くのをためらうお母さんたちも少なくなかった」とあります。乳幼児のいる家族が一緒に過ごしやすい避難所を求める声が多かったこともわかりました。
災害時、乳幼児や小さな子どもを持つお母さんたちの不安を少しでも解消し、負担を軽くするために、支援のひとつとして、例えば、子育て支援拠点も、活用すべきだと考えます。母子がよく過ごす慣れ親しんだ場所である地域の子育て支援拠点を避難所として活用することをはたらきかけてはいかがですか。子ども青少年局長に見解を求めます。災害後、すみやかに拠点機能を回復し、身近な地域の子育て親子の交流拠点として早期の開設に努めたい(子ども青少年局長)
【子ども青少年局長】地域子育て支援拠点は2019年度までに中学校に1カ所以上を目標として設置を進めている。この拠点は、民間の団体がマンションの一室や民家、空き店舗などを賃貸した物件等を拠点として指定し、1日5時間、週5日の開設を行っている。そのため、スペースや設備、開設時間等に制限があり、地域子育て支援拠点を避難所として活用するにあたっては多くの課題がある。
災害復旧時にはすみやかに拠点機能を回復し、身近な地域の子育て親子の交流拠点として早期の開設に努めることが、被災した子育て親子の不安の軽減につながると考える。
妊産婦・乳幼児の専用避難所の設置の決断を(意見)
【さはし議員】福祉避難所について、前回の答弁では、妊産婦・乳幼児は、福祉避難所の対象としていませんでしたが、今回の質問で、対象者であるとしっかりと確認させてもらいました。
健康福祉局長は、「妊産婦・乳幼児も必要に応じて、福祉避難所も利用いただく」と答弁されました。一方で、福祉避難所の指定が伸びない理由として、「高齢者や障がい者の施設は、避難者を受け入れる余裕がない」と答弁されています。
つまり、既存の高齢者・障がい者の施設では、妊産婦・乳幼児の利用は難しいと思います。私が前回紹介した、例えば京都市。全区で大学と妊産婦・乳幼児専用福祉避難所の設置の協定を締結しました。また、江南市も愛知江南短期大学と協定を締結し、乳児とその保護者の受け入れに特化した避難所の選定をすすめています。他の自治体でも設置が広がっています。本市も踏み出すべきです。
緑区は市内で一番子どもが多い区です。だから、切実です。次回、また、お聞きします。その時までに、健康福祉局と子ども青少年局で協力して、妊産婦・乳幼児の専用避難所の設置を決断し、すすめていただくことを要望します。
キーワード:環境と防災、まちづくり、さはしあこ