田口一登議員の代表質問⑧名古屋城天守閣の解体中止を(2019年3月1日)
名古屋城天守閣の解体・木造化について
現天守閣の解体工事を石垣部会の了承も得ないで、解体の許可を申請していいのか
【田口議員】来年度予算には、天守閣解体のための仮設構台等の設置工事費が計上されています。市長は2月1日、文化庁を訪れ、復元の許可に先立って現天守閣の解体を許可するよう打診したとの報道がありました。その後、私たち市議団も文化庁に出向いて、天守閣の解体についてレクチャーを受けてきました。
文化庁の担当者は次のように語っていました。「現天守を壊すのであれば、壊すことについて石垣に影響を与えないということは、はっきり示される必要がある。はっきり示されるということはどういうことかというと、しっかりと専門的な議論を経た上で、問題がないということを具体的に示していただく。その専門的なところというのは、名古屋市の中には石垣部会がありますよね、という話をした」。
先日、本市は文化庁から、天守閣解体の許可申請の提出にあたっての留意事項を確認しました。この中では、「現天守の解体・除去工事が文化財である石垣等に影響を与えない工法であり、その保存が確実に図られること」が求められており、この点について「石垣部会の意見を付すこと」とされています。現天守閣の解体工事に伴う石垣への影響については、2月14日に開かれた天守閣部会に当局が資料を提出しましたが、ここでは、「石垣への影響は比較的小さいと考えられる」とされていて、「影響を与えない」とは断言されていません。これで文化庁から解体許可がおりるとは到底思えません。
文化庁から示された留意事項では、「石垣等保全の具体的方針」も提出が求められています。この点についても「石垣部会の意見を付すこと」とされていますが、石垣保存の方針については、本市と石垣部会との間で意見の一致をみていません。
そこで、観光文化交流局長にお尋ねします。現天守閣の解体許可申請にあたって、現状では、石垣部会と意見が一致しない石垣保存方針を文化庁に提出せざるを得ませんが、それでも解体の許可がおりるとお考えですか。
天守閣部会及び石垣部会の意見を付して、現状変更許可申請を行いたい(局長)
【局長】文化庁から示された解体の現状変更許可申請に関しての留意事項によると、石垣等の保全の具体的方針を、石垣部会の意見を付して提出することとされている。
天守台石垣保存の方針については、昨年秋に一度取りまとめており、その後も有識者やコンサルタントの指導を得ながら、調査を行い、結果の分析を進めてきた。
現時点での天守台石垣保存方針を取りまとめ石垣部会のご意見を付した上、文化庁に丁寧に説明してまいりたい。
内容を精査していただき、ご許可いただけるものと考えている。
天守閣木造復元の見通しも立っていないのに、先に天守閣を壊していいのか。急ぎ過ぎだ
【田口議員】市長にもお尋ねします。市長は、解体のみの許可申請を今年5月の文化審議会に間に合わせるといいます。しかし、天守閣の解体は復元と一体のものではないでしょうか。木造復元は、天守台の石垣の保全方針について石垣部会の了承が得られず、文化庁に申請できない事態に陥っています。
市長、復元の見通しも立っていないのに、先に天守閣を壊していいのですか。
市長は「耐震性が低い天守閣は震度6強で倒壊する可能性がある」といいます。だったら耐震改修すればいい。天守閣の耐震性が低いことは20年以上も前からわかっていたことです。ですから、以前の名古屋城跡全体整備計画では耐震改修という方針が示されていました。この方針を覆し、耐震性の低い状態を放置しておきながら、それを「解体」の理由にあげるのは、天に唾するものです。
現在の天守閣は、簡単に壊していいものではありません。名古屋市も、文化庁の復元検討委員会に提出するために検討している「復元基本構想」の中で、「外観は焼失前の天守閣と寸分も違わぬ姿に復元されるなど、当時の建築技術の水準を表すものとしても現天守は評価できる。内部についても、……近代建築技術の粋を集めた造作が施され、『モダニズム建築』としても文化財としての評価を今日有するもの」と明記し、現天守閣の価値を高く評価しています。さらに、「名古屋城天守は名古屋の街の象徴として、戦後復興の象徴として、市民の機運の高まりによって再建された」と記されています。市長は、市民の機運の高まりによって再建された「象徴」を、機運が高まらない木造復元のために壊そうとしているのです。
市長、2022年末の復元完成に間に合わせたいがために、文化財的な価値が高い現天守閣を先行解体するのは、誰がみても急ぎ過ぎはありませんか。
答弁を求めて、第1回目の質問を終わります。
危険な状況を放置することは出来ない。丁寧にやってきたので変わることはない(市長)
【市長】文化庁に行っていつも言っておりますが、変なこというと、文化庁も名古屋の市役所も一番古いのは私ですわ、名古屋城やってるの。文化庁は文化庁で2~3年でみんな変わっちゃいますし。名古屋市役所でも一番古い。
4~5年前を振り返ると、とにかく技術提案交渉方式でいきますよと、いろいろあってね。それで、文化庁がそれについてどういうかというと、とにかく丁寧に、ことあるごとに丁寧に報告して下さいねと、そういうことだったんです。ちょっと前の課長さんなんかは「竹中さんの案て、素晴らしいですね」といっていたんですよ。それに従ってその後丁寧にやってきたのでね、ちゃんとそれは頭に置いておいてもらわなければいけないと、いうふうには言ってあります。
本当に地震で危ないので、Is値0.14というのは。この間Is値0.13の中公設は壊しましたんで、大須の中門通りにある。だからもう無いですわこんな危ない建物。これをほっといていいという論理はありません。だから早く取り壊して。
この間わかったんですけど、趣旨説明でも言いましたけど、昭和23年の地元紙の市民のアンケートでなんと木造復元を望む声の方が多かったんですよ。44.7%でしたよ、確か。コンクリートでやれ言うのは37%、あの当時で2割も低かった。S28年の市内の市役所内での会議録というか文書もでてきました。何をいっているかというと、本丸御殿はコンクリートでどうだと、天守はやっぱり本物を作りたいと、そんなことを言っているんですよ。当時、名古屋市でも。そんなこと言っているんですよ。だから、木造復元を願う市民の皆さんの声というのは、あの戦後の焼けた塗炭のときでも、名古屋市民は本物を作りたかったんですよ。333年もあった建物を。国宝一号だったわけです、これ。そういう気持ちですので、今まで丁寧にやってきましたのでそれが変わることはございません。
市の計画と石垣部会の立場に根本的な相違がある、石垣の保存方針について石垣部会の了承を得られる見通しはあるのか(再質問)
【田口議員】市長が、解体を先行させようとしているのは、木造復元については申請の見通しすら立っていないからです。文化庁からは、復元申請にあたって、天守台の石垣の保存方針について、石垣部会と認識を一致するよう求められていますが、石垣部会の了承が得られていません。市の復元計画は、木造復元した後に石垣の本格的な修復をするというものですが、石垣部会は石垣の保存について必要な措置をとることが最優先との立場です。上物の建て替えが先か、土台の石垣保存が先か――ここに認識が一致しない根源があります。
市長、市の計画と石垣部会の立場に根本的な相違があるもとで、石垣の保全方針について、石垣部会の了承を得られる見通しはあるのですか。お答えください。
石垣にこれだというのはない、竹中の案はトップだ。必ず喜んでもらえる(市長)
【市長】4~5年前くらいから、石垣をどうするかという話はありまして、これだというのは実はないんですよ。石垣というのは。例えば石一個とってもですね、そこに圧力をどれだけかければ崩れるかとか、ある基礎ブロックのところはそのままがいいのか、外した方がいいのかということは、これといった物理学のようなものはありません。
そういうことで一定の提案の中でやってきて、この間も、あるプロに聞きましたけど、「名古屋城の石垣ほど、これほど丁寧にやってるところはありませんよ」と、こういう風に言われましたので、必ずご理解が得られるものと思っています。
文化庁は遅らせるつもりはありませんとはっきり言っている。それと、言っているのは、丁寧にだけやってちょうだいと。なんでかというと、戦後の広島・岡山・和歌山城だとか、沢山コンクリートで作ったものをどうするかと言う話しが出るわけです。そのなかの第一号が国宝一号であった一番でっかい名古屋城なったの。次のリーディングケースみたいになるので、丁寧にやってくださいよということでやっておりますが、これをやりながら、石垣に最も影響が少ない、ええやり方だなーと、竹中の今の案を聞きましたら、世界でトップで言っていいかといったら、まあそこまでいっていいか分からないけどええやり方ですよと言っていました。下に影響を与えない。必ず喜んでもらえる、そういう方式を世界中というか日本中に示せると思っています。そうなるでしょう。
リニア関連開発や天守閣木造化などの大型事業よりも、福祉・暮らし優先へと、市政の転換を(意見)
【田口議員】市長は、願望はよくわかりました。ただ、根拠ですね。石垣は大事だ、石垣そのものが史跡ですからね、貴重な。どう保存していくのかという方針について、石垣部会と名古屋市との間で一致しないわけです。一致できる見通しがあれば、先に壊してしまうということではなく、木造復元の申請そのものを、5月の文化審議会に間に合うように出すはずだったんでしょ。それが出せない。それぐらい石垣の問題をめぐって認識が一致しないわけです。
そういう中で先に壊してしまう。こういうやり方は、市民の皆さんから理解されるのか。木造復元を望んでいる市民からも、復元の見通しもないままに先に壊してしまうということはとても理解が得られないと思います。今盛んに耐震性の問題を言われますが、天守閣の耐震性を云々されるのなら、耐震改修すべきです。
天守閣の解体は中止し、木造復元は市民の意見を聞いて再検討することを求めます。
リニア関連開発や天守閣木造化などの大型事業よりも、福祉・暮らし優先へと、市政の転換を求めて、質問を終わります。
キーワード:大型開発・ムダ遣い見直し、田口かずと