西山あさみ議員の個人質問②中部国際空港二本目滑走路について(2019年3月5日)
まだまだ余裕がある中部空港に2本目滑走路はまだ必要ない
開港時の輸送需要計画に満たない
【西山議員】2018年9月定例会で二本目滑走路の必要性を問われた廣澤副市長は、「二本目滑走路は必要と考えております。・・・二本目滑走路をはじめとした機能強化の早期実現に向けて関係者とともに事業化に向けた検討について具体的に推進してまいりたい」と答弁されました。果たして現段階で二本目滑走路が必要だと言えるでしょうか。
中部国際空港のHPを見ると、2017年度の旅客数は1153万人。2018年度は1月までの速報値で1018万人です。過去最高の旅客数は、開港した2005年度の1235万人なので、そこに届くかどうかという状況で、仮に届いたとしても、開港時の旅客数に戻ったということにすぎません。
発着回数については、2017年度は10万1千回。今年度は1月までの速報値で8万6千回です。
さて、一本の滑走路の発着回数の限度はどれくらいなのでしょうか。
パネルをご覧ください。他の空港を見てみますと、那覇空港では16万6千回、福岡空港では17万8千回の年間発着回数であっても1本の滑走路で対応できていました。
ちなみに、福岡空港は24時間空港ではありますが航空機騒音の影響に配慮し、午前7時から午後10時までの15時間で17万8千回。中部国際空港は24時間で10万1千回ですのでまだまだ余裕があるのはあきらかです。
では、中部国際空港では、発着回数が何回に到達すれば二本目滑走路が必要になるのでしょうか。
1998年3月に出された「中部国際空港の計画案」(最終まとめ)では、中部国際空港の整備計画の前提となった航空輸送需要は、滑走路を1本とした第1期計画で、旅客数は国際線800万人と国内線1200万人の合計2000万人。発着回数は約13万回とされています。現状はこの需要にも及んでいません。
「将来構想」では、「将来的には航空輸送需要が滑走路の処理能力を上回る」とされている旅客数は2500万人、発着回数は約16万回を見込んでいますが、もちろんこれにもはるかに及んでいないのが現状です。
航空法では、航空機の運航の安全を確保するため、発着回数を制限する必要がある空港を「混雑空港」と位置づけていますが、現在「混雑空港」に指定されているのは、成田・羽田・関西・伊丹・福岡空港で(空港法施規則)、中部国際空港は指定されていません。
ちなみに、現在2本目滑走路を建設中の福岡空港では、円滑に運用できる発着回数は14万5千回程度とされてきましたが、2013年、2014年の発着回数は年間約17万回となったことにより2016年に「混雑空港」に指定されました。
総務局の来年度予算の中には、中部空港の今後の施設整備における本市への影響調査費として500万円が計上されています。
この予算の趣旨には、「2019年度上期の供用開始を目指すLCC向け新ターミナル等、今後進捗する中部国際空港における空港施設整備に伴い、 高まる航空需要を中部国際空港が取り込むことで、本市にもたらす消費動向や人の流れ等について調査検討するもの。」とあります。
そこで総務局長に2点伺います。2019年度上期の供用開始を目指すLCC向け新ターミナルの整備ができた際には、混雑空港並みになると言えますか。
LCCの航空需要を取り込むことで、発着回数は増加すると思う(総務局長)
【局長】混雑空港は、航空法第107条の3で、「当該空港の使用状況に照らして、航空機の運航の安全を確保するため、当該空港における一日又は一定時間当たりの離陸又は着陸の回数を制限する必要があるものとして国土交通省令で指定する空港」と定義されている。
総発着回数に占めるLCCの割合は全国的に増加傾向にあり、たとえば、成田空港は30%以上、関西国際空港は40%以上をLCCが占めていますが、中部国際空港は16%ほどにとどまっている。中部国際空港に2019年度上期にLCCターミナルが完成することで、航空需要の取り込みが期待されている。
政府は日本全体への訪日外国人旅行者数の目標値を、2020年までに4,000万人、2030年までに6,000万人とし、今後の航空需要が高まっていくと考えられ、2027年のリニア中央新幹線の開業で、名古屋からの2時間圏域人口が大幅に増加するなど、中部国際空港は、航空需要の増加について非常に高い優位性を有している。
LCCの受け入れ態勢の拡充を進め、LCCの航空需要を効果的に取り込むことで、国際拠点空港である中部国際空港の発着回数はいっそう増加していく。
急いでつくる必要性は感じられない
【西山議員】LCC向けターミナルが整備されたとしても、旅客数と発着回数の現状からは、2本目滑走路を急いでつくる必要性は感じられませんがいかがですか。
二本目滑走路は重要な施策(総務局長)
【総務局長】機能強化は、本市の国際的・広域的機能を強化し、国の中枢機能の分担に適切に対応するために 重要な施策である。
二本目滑走路は、近年増加する国内外のヒト・モノ・カネ・情報の流動の活性化、現在ある滑走路の適切な維持管理、さらに、国士強靭化の観点から代替機能を併せ持つ当地域の重要な社会インフラとして必要です。
二本目滑走路整備など機能強化の早期実現に向けて、愛知県、岐阜県、三重県、地域経済団体、中部国際空港などとともに事業化に向けた検討について、推進する必要があると考える。
新たな滑走路の必要性をしめせない(意見)
【西山議員】二本目の必要性を裏付けるような明確な答弁はありませんでした。
さらに、過去の経済水道委員会では“滑走路の能力の限界”を理由の一つとしてきましたが今の答弁にはありません。もう滑走路の能力の限界は理由にならなくなっています。
過去の委員会ではメンテナンス時間の確保も必要理由にあげていました。
成田国際空港振興協会の発行する「エアポートニュース」には、開港当時の中部国際空港株式会社 取締役副社長 山下邦勝氏が講演会の中でこう述べたと書かれています。
「24時間化ということでクローズ時間がなく希望の時間に離着陸が可能で、空いた時間にメンテナンスを行うという発想で一切の制約はつきません。もちろん、夜間の発着枠が一杯であるというような状況になったら滑走路を増設しますが、それまでは現在のシステムを維持します。メンテナンスの方法も改良し、航空灯火を磨く時間を他空港では平均15分かかるところを1分でできるシステムを作り出し、航空灯火のメンテナンス時間を大幅に短縮するといった工夫を積み重ね、本格的な24時間化をはかります。」
つまり、初めから滑走路1本でもメンテナンス時間を確保できるよう努力を積み重ねてきたわけです。先に紹介したように、当初の計画では発着回数16万回を見込んでいたわけですから、当初の会社の考え方からしても現状で二本目滑走路の必要性は全く感じられません。
県営名古屋空港にも余裕はある(意見)
愛知にはもう一つ県営名古屋空港があります。
2017年の県営名古屋空港の発着回数は4万3千回。中部国際空港ができる前の2004年の発着回数は12万4千回。県営名古屋空港にもまだまだ利用できる余裕があります。
答弁にあった国土強靭化、リスクマネジメントの観点からしても、一本目と二本目の滑走路が同じ場所に平行してあるよりも別の場所にあるほうが、どちらかの空港が機能しなくなった時にもリスクを最小限にできるのではないでしょうか。
これらの点から見ても、急いで二本目滑走路をつくる必要はない、と申し上げ質問を終わります。
キーワード:大型開発・ムダ遣い見直し、西山あさみ