藤井ひろき議員の個人質問①商業地域にある教育施設等の日影問題(2019年3月5日)

幼稚園の周りは高層ビルに囲まれていく

市長自ら訪問した幼稚園の日影紛争。市長はどんな指示をしたのか

【藤井議員】この議場のすぐ近くにある、名古屋教会幼稚園から「園児たちが健康に育つ、環境を守ってほしい」と、相談の声がありました。
 この幼稚園西側のコインパーキングがあった場所に昨年度、3階建ての会館が建築され、南側には今年度、15階建てのマンションが建築されました。こちらは園舎隣地で建設中の写真です(パネル)。幼稚園は商業地域にあたるため、建築基準法の日影規制はありません。
 結果として、幼稚園は西側と南側、両方から日差しが遮られました。先生の話によると、「この冬は、午前11時以降、園児たちが活動する時間帯は日影です」とのことでした。さらに南東にあたる位置には今後、高さ90mの建築物の計画があります。

 先日、幼稚園に参りました。三輪車で元気よく遊ぶ園児に「楽しく遊んでいるね」と声をかけたら「うん、でもお庭、寒くなった」の言葉が返ってきました。マンションを指さし、「あの大きいお家がね」と話す園児もいました。先生や保護者からも「冷たい園庭で子どもたちを遊ばせるのか」との声が寄せられました。
 子どもの心身の発達のために日光は非常に重要であることを改めて先生の皆さんから伺いました。
 日光を浴びることで体内時計の動きを正常にし、日中にしっかりと活動し身体を動かすことで健康な体づくりに役立つこと。日光を浴びることで、心が穏やかになり精神的にも良い影響を与えること。また子どもが季節によって変化する日差しの強弱を身体で感じ、さまざまなことを学ぶ大切さがあります。
 幼い子どもたちにとって、見上げると目の当たりにする中高層建築物のもたらす圧迫感は、正にそそり立った絶壁としか言いようがないでしょう。
 本市には「名古屋市中高層建築物の建築に係る紛争の予防及び調整等に関する条例」(以下、「条例」)があります。条例では、中高層建築物を建築しようとする建築主に対し、保育所、幼稚園など教育施設等が日影になる場合には、建築主は「日影の影響について特に配慮し」「当該施設の設置者と協議」しなければならずとあり、また、この配慮や協議の結果は市長に報告しなければなりません。
 先の幼稚園のケースでは、この条例に基づいて、建築主は園庭の南側をあける配慮をしたとし、協議がなされました。しかし、幼稚園や保護者の皆さんは、十分に日照を確保されたとは言えないと納得されていません。
 園長先生は話します。「都会の真ん中にある、私たちの小さな幼稚園の園庭では、これまで子どもたちが、土や水に触れ、花や虫たちと戯れ、陽の光や、そよ吹く風に季節の移り変わりを感じながら遊び、育ってきました。一部の大人たちの都合で、その環境が奪われるのは許されません」。
 また園長先生からは、「マンション建設工事前の2017年2月、市長さんが幼稚園に訪問されました。その時、先生たちの話をお聞きになり、『なんとかせな、あかんな』と、話されていました」と聞きました。
 そこで河村市長にお聞きします。幼稚園の先生や保護者の皆さんの訴えをどのように受け止められましたか。
 また、「なんとかせな、あかんな」と話されたとのことですが、その後、2017年夏にマンション工事が着工し、幼稚園の隣にマンションが建築されました。この間、どのような指示を出されたのか。お答えください。

幼稚園の日照が奪われることはええことではない。力不足だった(市長)

【市長】二年前の二月ですか、行きまして、残念なことでして、でっかいビルが二つ建っちゃって。行ってすぐ、住都の誰かに「何とかしてちょー」と。南と西と二つありますでね、「何とかならんか」と。これ法律上のことがありますんで、「あと交渉して」と言っとったんだけど、若干セットバックはしてくれたようですけど。そういう結果になりまして。幼稚園なんかの日照がバサッと奪われることは本当にええことではないですよ。残念だったけど、力不足だったということです。

教育施設の側に立って、周辺建築物の高さを規制できないか

【藤井議員】さて本市では昨年度、条例の対象となった建築計画が494件あり、そのうち教育施設等と協議をしたのが61件でした。教育施設等の周辺だけで、教育施設に影を落とす建物がこれだけあります。
 都心に住んで子育てしようとしたら、教育施設等が日影になってしまう。たとえ、都心の幼稚園や保育園であっても、これらの教育施設等が必要とされている以上、子どもの健全な発達に必要な環境は、私たち大人がしっかりと守らなければなりません。
 そこで住宅都市局長にお聞きします。条例はありますが、教育施設等の周辺で建物が、続々と建築されています。特に商業地域では、建替え等の際にも、高さ制限や容積率限界までの高いビルが建てられる場合が多く、現在、建物の間からわずかに得られている貴重な日照ですら失われる恐れがあります。
 日照を受ける教育施設等の側に立ち、子どもたちが一定の日照時間を確保することができるように、周辺の建物などの高さを規制することはできませんか。お答えください。

法的には規制できない(局長)

【局長】過度な規制は財産権を侵害する恐れがあり、特定の建物に日照を確保できるように、周辺の建物に高さを規制することはできない。
 商業地域には、建築基準法では日影規制を定めることはできない。
 しかし、本市では「中高層建築物の紛争の予防及び調整に関する条例」を定め、用途地域によらず、教育施設に影響を生じさせるような中高層建築物を建築する場合は、日影の影響について配慮や協議を求めている。この件も、条例にもとづき建築主に対し丁寧な協議を求め、調整をしてきたが、和解に至ることができず残念に思っている。

商業地域は次々に建物が建ち、より一層の配慮が必要ではないか(再質問)

【藤井議員】都心部において、にぎやかな街づくりと子育てしやすい街づくり。この2つのバランスが取れたまちづくりが、重要だと考えます。
 条例についての答弁もございましたが、条例が制定された18年前と比べると、この間、個別に容積率が緩和され、大きな建物が増えています。一方、商業地域内での日影規制はなかなか難しい状況です。
 その結果、建物単独の日影だけでなく、周辺の建物からも日影が生じます。
 ある建物が日影に配慮して建築しても、次の建物からまた別の建物の日影を受けるようでは、教育施設での日影が増えるばかりです。
 これでは都心部の教育施設等にとって周辺環境が悪くなるだけではないでしょうか。
 そこで住宅都市局長に再質問します。条例にある配慮と協議の義務付けは、紛争予防には一定の効果はあると答弁ありましたが、先に紹介した幼稚園のように、商業地域で日影規制がなく、周辺の建物から次々と日影が生じてしまう事例があります。このような事例については、より一層の配慮が必要と考えます。住宅都市局長は、どのようにお考えかについて、お聞きします。

指摘を踏まえ、周囲の建物による影響にも配慮するよう指導する

【局長】建築する自らの建物だけでなく、周囲の建物による影響も可能な限り考慮して、教育施設に生じさせる日影に配慮するよう指導するとともに、紛争が生じた場合には適切な調整に努めたい。

条例をより実効性あるものに強化するよう求める(要望)

【藤井議員】指導や調整に努めるとのことですが、都心部にある教育施設等の、今あるわずかな日照を今後も確保できるかどうか。日影の問題を解決できるかどうか。これは、都心部での子育てにとっても大きく直結します。
 中高層建築物により、都心の幼稚園や保育園の園庭の日照をはじめとする豊かな環境が奪われてしまう。この事態が進むことを防止することは厳しいものもあり、この条例だけで、全てを防ぎきれないケースがあると考えます。それが今回の幼稚園ではないでしょうか。
 この条例をより実効性あるものに強化するよう市長に求めておきます。

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