名港議会 山口清明議員の一般質問①水族館の入場料(2019年3月26日)

消費税増税での水族館入館料の値上げをやめよ/障害者の介護者入館料免除の拡充を

消費税増税に伴う入館料の改定は見送るべき

【山口議員】名古屋港水族館は、入館者数が二年連続で年間200万人を超えたとお聞きしました。多くの市民県民に親しまれており、2017年の名古屋市内観光施設入場者数ランキングでは、熱田神宮、ナゴヤドーム、東山動植物園につぐ第4位となっています。
 この水族館の入館料ですが、5年前に消費税が5%から8%に引き上げられた際には、百円単位で端数処理をしたので大人個人の入館料は2千円のまま据え置かれました。大人の年間パスポートが5000円から5100円に100円値上げされました。
 さて今回はどうか。名古屋港水族館条例の一部改正では、大人個人の入館料は2000円から2030円に、小中学生個人の入館料は1000円から1010円に、大人の年間パスポートは5100円から5190円にそれぞれ引き上げられます。

 また愛知県在住の65歳以上の方は、1000円から1010円に10円値上げ。団体料金では20人以上100人未満の大人で1800円から1830円に30円の値上げ。4館共通券(水族館、南極観測船ふじ、名古屋港ポートビル展望室、海洋博物館)の大人料金は2400円から2440円に40円の値上げなどが予定されています。市民県民から見ると、5%から8%へ3%上がった時には入館料は変わらなかったのに、なぜ今回は税率の改定幅が2%と前回より小さいのに値上げするのか、理解に苦しみます。
 なぜ今回は値上げするのか。増税分を料金に転嫁する考えには前回も今回も変わりはないが、端数処理を百円単位から十円単位に変えたので、今回は増税分を転嫁する対象が多くなった、と説明を受けました。逆に言えば、値上げするために端数処理の単位を改めた、ということであり、一貫性があるとは言えません。
 地方公共団体が管理運営する市内の主な集客施設では、東山動植物園も名古屋城も名古屋市科学館も愛知県美術館も入場料は消費税が5%から8%になった時も、今回10%にするという時点でも値上げされていません。
 消費税の増税が水族館の経営を苦しめることは確かですが、ここが踏ん張りどころです。この入館料の改定によって見込まれる増収は約3500万円です。
名古屋港水族館は名古屋港振興財団が指定管理者として運営しています。利用料金制度のもとで、水族館の運営は基本的に入館料収入で経費をまかなわれており収支差は管理組合が受け取り振興基金に積み立てます。指定管理の8年間では4億2千万円を納付する収支計画となっており、新年度では今年度の収支差に当たる6200万円が納付される予算となっています。つまり単純化すれば、3500万円の増収がなくても、財団から管理組合に納付されるお金が減るだけであり、すぐに財政的に行き詰まるわけではありません。
 金額的にはわずかな値上げによる増収よりも、消費税の税率が変わっても値上げせずにがんばっている、とアピールする方がよほど入館者の増加につながり、経営的にもプラスになるのではありませんか。
 そこで河村管理者にうかがいます。消費税の増税に伴う料金改定は様々ありますが、少なくとも水族館の入館料の値上げは見送るべきではありませんか。答弁を求めます。

政府がとろくさいことをやるからこうなる。としか言いようがないが、しょうがないでちょっと負担させて(管理者)

【管理者(市長)】わしがやったんでない。政府がとろくさいことやるもんでこうなった。国際的に景気の後退が言われる状況の中で、消費税を上げるなんてとんでもない。なんで名古屋が被らないかんのか、頑張るのも一つだけど、どうも不条理です。
 しょうがないでちょっと負担さしてちょう、国がやったんでいかんのだぞ、というよりしょうがない。そんな気持ちです。申し訳ないけど、お願いします。

10月まではまだ日がある。考えなおしなさい(意見)

【山口議員】管理者の胸の内は聞かせていただいた。確かに景気の動向は大変です。名古屋港の貨物の動向からも世界経済の不透明感が見えてきます。中国向けの貨物、とりわけ自動車部品の輸出がガクンと落ち込む状況は深刻です。景気動向からも消費税の10%への増税は行うべきではありません。
 値上げ条例の施行日は今年10月1日ですが、あくまでも利用料金の上限を改定する条例です。まだ考え直す時間はあります。値上げにより入館者数への影響もよく考えていただきたい。
 いまのままでは水族館だけ値上げする、と言われますよ。値上げをしないことで、県民・市民から、さすが名古屋の水族館、と言われるように、よく考えていただき、思いきった決断を強く求めます。

障害者に付き添う介護者の入館料免除の拡充を

【山口議員】名古屋港水族館には、多くの障害を持った方々が来られます。ペンギンやイルカは特に人気です。雨の日でも予定を変えずに楽しめる場所としても、ありがたい、と多くの方から聞いています。
 名古屋港水族館では、いま障害者手帳などを持つ本人には入館料を全額免除するとともに、多くの障害者については本人だけでなく介護者一名の入館料が全額免除となっています。
 民間の水族館の多くが障害者やその介護者については入館料の割引にとどまっているなかで、公的な団体が運営する水族館の多くは名古屋港水族館と同様に、障害者本人に加え介護者一名の入館料免除としています。
 介護者の入館料免除は多くの障害者や介護に従事する方々にとって大切な制度となっています。
 しかしながら障害者の社会参加が進んでくる中で、重度の身体障害をお持ちの方や行動障害を伴う自閉症や知的障害の方の外出には介護者が一人では間に合わないケースも増えてきています。
 多動で走りまわる、予測がつかない突発的な行動がある、同性介護が基本なのでトイレ介助には一人で対応できない、などなどです。
水族館に行くのを楽しみにしているが、介護者の負担がきつくてなかなか行事が組めない、という声もうかがいました。
 そこで調べてみると、「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」いわゆる、「障害者総合支援法」にもとづく行動援護などの障害福祉サービスでは、障害のある方の状況により、二人介護が認められています。行動援護など国のサービスであれば余暇活動においても二人介護が可能であり、障害者の社会参加を促進する役割を果たしています。
 名古屋市内の主な集客施設では、東山動植物園、名古屋城、名古屋市科学館などでは介護者二人まで入館料が免除されています。市営交通機関では介護者三名まで無料となるケースも認められています。
「愛知県障害者差別解消推進条例」に続き、名古屋市でも、「名古屋市障害のある人もない人も共に生きるための障害者差別解消推進条例」が制定されました。障害を持つ方への合理的配慮がこれまで以上に求められます。
 施設のハード面だけでなく、ソフト面でもバリアフリーの促進が求められる時代です。他の水族館が入館料免除は一人だけだから、という横並び意識を変えましょう。
 そこでうかがいます。愛知県名古屋市にある公的な水族館として、必要な障害者には複数の介護者の入館料を免除すべきではありませんか。

他の水族館の動向も見て考える(部長)

【関連事業担当部長】身体障害者手帳等を持つ本人とその介護者1名を全額免除しており、国内の公共の水族館において、概ね同様と聞く。
国内の公共の水族館等の動向を見据えつつ、対応したい。

他の水族館との横並びでなく、名古屋市の他の施設並みの配慮を(再質問)

【山口議員】担当部長答弁は、典型的な横並びの発想です。バリアフリー先進都市、名古屋の水族館として、市内の公共施設並みの合理的配慮をすべきではないでしょうか。必要な方には複数の介護者の無料付き添いを認める。全国の水族館の中でぜひ先陣を切って名古屋港水族館でこそ実現していただきたい。
 障害者に付き添う介護者の入館料減免の拡充について管理者答弁を求めます。

障害があってもきた人みんなで楽しんでもらうことが大事(管理者)

【管理者】不自由な人にも来てもらって、楽しんでもらう、水族館を。そちらの気持ちのほうがはるかに重要であって、当然のように、無料だったら無料にするように、そういう風にやりなさいと昨日言ったところです。

介護者みんなを無料にするということなので一刻も早い実施を(意見)

【山口議員】無料にしていただけると理解していいですね。やり取りの中では、収支への影響も研究するということも聞いた、ところが、水族館は障害者が何人入館しているか、介護者が何人入場してるのかも把握していない。それで収支への影響と言われても納得できない、ときつく言おうと思っていたが、今管理者からは非常に前向きな答弁をいただいた。愛知県も名古屋市も障害者の差別を解消するための条例をもった。その町にある水族館にふさわしい合理的な配慮を充実してもらうよう、直ちに実施するよう要望しておきます。

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