後期高齢者医療広域連合議会 8月定例会 一般質問(伊藤建治春日井市議・2019年8月16日)
保険料改定の見通しと健診受診率の引き上げ
愛知県後期高齢者医療広域連合議会 伊藤建治議員(春日井市)
保険料改定の見通しは
医療費や剰余金の見通しはどうか
【伊藤議員】来年度は保険料率改定が行われます。被保険者の負担は急速に、かつ大幅に増加しており、保険料はそれらに配慮した内容であるべきです。
保険料率改定に関わる項目のうち、影響の大きい、①1人当たり医療費の動向②診療報酬③後期高齢者負担率④剰余金、についての見通しを伺います。一人当たり医療費は変わらず、高齢者負担率は上昇、剰余
金があれば活用する(課長)
【総務課長】1人当たり医療費の動向は、医療の高度化や高額薬剤の増加等で上昇する傾向にあるが、診療報酬のマイナス改定や高額療養費の制度改正等の押し下げ要因もあり、2016年度以降は2018年度まで94万円台で推移している。
診療報酬は、2016年度以降、薬価の引き下げに伴うマイナス改定が継続。来年度の改定率は年末に示される見込みで、医療費見込みに反映させる予定。
後期高齢者負担率は、医療給付費に対する後期高齢者の保険料による負担割合を定めるもので、少子高齢化の進行に伴い、2008・2009年度の10%を起点に徐々に上昇、2018年度・2019年度は11.18%となり、今後も上昇が見込まれる。
剰余金は、2018年度決算で、特別会計の歳入歳出差引額272億円余のうち、市町村・国等の負担金等の精算に伴う返還金や2019年度保険料の抑制に充てた分を除き、約78億円。2019年度も剰余金が生じる見込みなら、その額も加えて、2020年・2021年度の保険料率改定で保険料の抑制に活用する予定。引き下げができる条件が整っている(再)
【伊藤議員】1人当たり医療費の額は、医療費の総額であり、高額療養費の自己負担限度額の大幅な引き上げで保険者側の給付費は減っている。1人当たり医療費は同じでも、給付費は減っている。
診療報酬も今後も大きくプラス改定になるとは考えにくい。
後期高齢者負担率は上昇していくと思いますが、本来は国が責任を持つべきもの。
剰余金は、2018年度決算でも272億円もの歳入歳出の差し引き差額があります。補正予算で処理した市町村・国等の負担金等の精算が約120億円ですから、純粋な黒字は約152億円、2019年度の保険料の抑制に充てた分を除いても、約78億円の未処分の剰余金がある。
2018年度特別会計の歳出では、県財政安定化基金に765万円を拠出しています。県財政安定化基金は、予期せぬ保険給付増や保険料未納により財源不足となった時のために、保険料収入の約3%を積み立てるというもので、愛知県では久しく取り崩していませんが、保険料増加抑制のためにも使えるという枠組みになっています。
これらの状況から、今度の保険料率改定においては、引き下げができる条件が整っているのではないか。県財政安定化基金を使って、まずは上昇を抑制し、さらに剰余金を使って引き下げをする。二段構えの取り組みで、保険料率の引き下げができるのではないか。
財政安定化基金は使えない(事務局長)
【事務局長】剰余金は、保険料率の軽減に充てるべきものと考え、過去にも活用してきている。
財政安定化基金は、剰余金を活用してもなお保険料率が増加する場合に活用が認められるものであり、そのような形で保険料率の引き下げを行うことは認められていない。保険料の独自軽減に工夫を(再々)
【伊藤議員】この間、たて続けに行われてきた軽減特例の廃止や高額療養費の自己負担限度額引き上げは、後期高齢者医療制度発足以来、最大の負担増だ。 保険料率改定は、広域連合に裁量があり、保険料率改定くらいは、大幅な引き下げができるように知恵を絞るべきだ。東京がやっているような独自の軽減もやってもいい。連合長の所見を聞く。
役人の言う通りにはしないので勉強させてほしい(連合長・河村市長)
【連合長(河村市長)】原稿には、「大幅な引き下げを行うことは困難である」と書いてあります。
そもそも何でこういう制度をつくったかというのは、競争しようじゃないかというところがあるんです。だから東京がもし下げているんだったら、一遍ちゃんと調べてみて。
議員さんが言われるように、確かに貧富の差が激しいですね、今は。御苦労されておる方が多いんです。財政危機というのはうそなんです。財政危機が本当だったら公務員の給料は下がるはずですよ。根本的にうそですから。
名古屋市は、国保の均等割を3%ぐらい10年前に下げさせていただきましたけれども、そういうことはできないのかと。
役人の書いた説明を見ますと、その分、一般会計から繰り入れなければいけないので若者の負担になると言いますけど、たまっている金があるんじゃないか。
そのほか、行政改革とかをやって欲しいというのがこういう制度をつくった趣旨でしょう、本来。東京がやっておっても、うちはできないと。「そんな水臭い話をしておってどうするんだ」と言っておったのですけど。
私もちょっと忙しいので、よく勉強させていただきまして、名古屋の精神ですね、減税もしておりますし、やっぱり1円でも税金、保険料もそうですけど、安くして、1円でも福祉の方を充実させるというのに挑戦していきたいと思っておりますので、まあちょっと時間をください。勉強させていただきます。役人の書いたとおりにはしませんので。
健診率向上について
健診率の高い自治体の取り組みを生かしたか。全体ではなぜ下がったのか
【伊藤議員】2018年度の後期高齢者医療の健康診査事業の受診率は35.89%と、前年度を下回りました。国民健康保険の特定健診受診率に対しても5ポイント近く下回っている。着目すべきが、市町村によって受診率の偏差が激しいという点です。
事業概況によると、2018年度の受診率の高い自治体、1位は武豊町62.50%、60%超の自治体は、東浦町、半田市。50%超は岡崎市、一宮市、東海市、高浜市、扶桑町。以上8つの自治体は、前回と変わらず高い受診率です。
一方、低いのは西尾市、南知多町が25%未満、名古屋市、豊橋市、豊川市、蒲郡市、小牧市、北名古屋市が30%未満となっています。こちらも同じ顔ぶれです。ただし、名古屋市、豊橋市、豊川市は、25%未満から25%超となりました。
人口規模にかかわらず受診率の偏差があるので、各市町村の健診に対する取り組みの違いによるものと推察され、受診率の高い自治体の取り組みを、全県で展開できれば、受診率は大幅に引き上げられる。
前回の答弁では、健康診査の実施期間、実施方法、また受診勧奨の方法は自治体によって異なる。受診率の高い市町村では、受診券の送付時期及び受診期間の配慮、地域の医師会やかかりつけ医による周知啓発の協力を得ていることなどが、共通の取り組みとして把握できたとのことでした。受診率の高い市町村の取り組みの展開を図るとの答弁もあったが、その後の取り組み状況はいかがか。
また、ごくわずかだが、前年度比で受診率は低下しているが、この要因についての見解を伺います。新たな取り組みをしたのが14自治体(課長)
【給付課長】健康診査受診率の高い市町村の取り組みは、市町村担当課長会議、市町村訪問の機会を使って周知を図り、その結果、未受診者への個別勧奨や広報掲載、健診の期間延長や集団健診の回数の追加、
健康イベント等での受診の啓発など、取り組みを開始した市町村が14あった。
2018年度の広域連合全体の健康診査では、受診者数は1万1,825人増加したものの、受診率は0.02ポイントの減少となった。近年、伸びがやや停滞しているが、一方で受診者数は毎年増加している。
受診率停滞の要因は被保険者の健診受診に対する関心や地域ごとの健診の受診環境などが考えられる。引き続き、被保険者への啓発方法など、受診率の高い市町村での好事例等を紹介しながら受診率の向上に努めていく。
受診率を伸ばした自治体もある(再質問)
【伊藤議員】市町村ごとの受診率の推移に着目をしました。事業概況には2014年度からの受診率の推移が記載され、5年間で、受診率を大幅に伸ばしている自治体が幾つかあり、最も顕著なのが阿久比町で、2014年度に26.73%だったのが、2018年度では42.6%、16ポイント近くも伸びています。常滑市、大府市、知多市は、いずれも5ポイント以上伸ばして、40%台に到達をしています。これら、伸び率が高い市町村では、何がしかの施策展開がなされたものと推察しますが、把握していることがあるか。
健診か所の拡大や医師からの勧奨(課長)
【給付課長】市町村が健診の受診会場を準備する集団健診に加え、地域内の医療機関でも健診が受診できるようにする個別健診を開始したところがある。
個別健診を行っている医療機関において、健診受診の啓発ポスターを掲示したり、医師から後期高齢の被保険者の方に対して健診を受診するよう声かけをしたりといった受診勧奨の取り組みがあり、高齢者の方が集まるサロン等に出向いて、健診受診の御案内をする受診啓発の取り組みもあった。
広域連合といたしましても、これらの事例を参考に、今後も、受診率向上の取り組みを市町村に紹介しながら、広域連合全体の受診率向上に努めたい。
後期高齢者医療制度の開始で、国保の葬祭費が大きく減ったので市町村に負担を求めるべき(意見)
【伊藤議員】愛知県後期高齢者医療広域連合、第2期健康保健事業実施計画、データヘルス計画の中で示されていた、疾病最小分類別の医療費割合という資料において、1位が慢性腎不全の透析ありでした。しかも、この慢性腎不全の透析ありの医療費は、愛知県は、全国平均と比較をしても、2.5ポイントも高い水準です。
慢性腎不全の大きな要因の1つが、糖尿病です。糖尿病の治療を早期にスタートできれば、透析が必要な腎不全にまで至らずにすむ方が増えるのではないか。そのためには、やはり健康診査の受診率を上げていくことが必要ではないかと考えています。歯科健診についても、同じ視点で有用性があります。
健診受診率の高い自治体と同じ取り組みを全県で展開できれば、受診率60%台にまで引き上げられることができるはず。引き続き、その向上に努められるようにお願いをいたします。
歯科健診実施自治体の拡大を
【伊藤議員】歯科健診の実施自治体は毎年増え、30自治体が実施していますが、全ての自治体での実施が望ましい。実施自治体を増やすための取り組みについてお伺いします。
2018年度は30自治体で7468人が険診(課長)
【給付課長】2018年度の後期高齢者医療の歯科健康診査は、愛知県内の30の市町村で実施しており、受診者数は7,468人でした。2017年度は実施市町村数は24、受診者数3,924人であり、2018年度は前年度に比べ、実施が拡大しています。
歯科健康診査は、口腔機能低下の予防を図り、肺炎等の疾病予防につなげることを目的として実施しており、当広域連合としましても、重要な保健事業の1つと考えております。
今後も引き続き市町村へ歯科健康診査の実施を依頼するとともに、歯科健康診査実施費用の市町村補助などを行いながら、実施市町村数の拡充に努める。
さらなる拡大を(意見)
【伊藤議員】日本人の死因の4位の肺炎は、嚥下性肺炎が多いとされています。また、歯周病を治療して口腔内の健康を保つと血糖値がコントロールしやすくなり、糖尿病の改善に関係することも近年わかってきました。
歯科健診については重要な保健事業の1つであり、実施市町村数の拡充に努めるとのことでしたので、今後の推移を見守りたい。
キーワード:福祉・介護・医療