2019年9月議会
さはしあこ議員の個人質問①避難所でも快適な生活を(2019年9月17日)
避難所におけるよりよい生活環境の確保について
さはしあこ 議員
災害関連死を防ぐためも、避難所での『TKB(清潔で誰もが使える水洗トイレ・温かい食事が提供できるキッチン・段ボールベッドなどによる簡易ベッド)』のしくみづくりを
【さはし議員】台風15号によって、甚大な被害に遭われ、今なお、避難生活を余儀なくされている多くの方々にお見舞いを申し上げますとともに、一刻も早く日常生活が戻ってきますことを祈念いたしまして、あらためて今回のことも含め、教訓にさせていただきたく、質問させていただきます。
避難所におけるよりよい生活環境の確保について、防災危機管理局長に質問します。
本市は、南海トラフ巨大地震などあらゆる自然災害に備え、様々な減災・防災対策をすすめています。区・学区・町内会単位で取り組んでいる避難訓練もその中のひとつです。
例えば、緑区では、避難所開設訓練に加え、2011年度より、毎年、28学区が順番に宿泊型避難訓練を行っており、今年で9学区目となります。
毎回、多くの住民、行政、関係団体が参加し、実際に体育館で宿泊しながら、様々な訓練を通して、命を守る取り組みが行われています。訓練の参加者から「災害が起きた時、避難所で自分たちがどのような状況に置かれるか実体験することができた」「訓練に参加しなければ、わからなかった」という声が寄せられた一方で「体育館は、寝る場所がなくて、プールサイドで寝た」「体育館の中は、暑くてたまらない」「床で寝るために段ボールが配布されたが、身体中が痛くて何日も持たない」というリアルな声も聞き、想像していた避難所生活よりも過酷であることが訓練によって明らかになっています。
災害後、せっかく守った命にも関わらず、その後、避難所での生活などがきっかけで、命を失った方々、いわゆる災害関連死によって亡くなった方も少なくありません。
消防庁の発表によると、2019年3月時点、東日本大震災で命を失った方は、19,689人。いわゆる災害関連死は、3,723人と約2割が関連死です。熊本地震については、本年4月の時点では、直接死50人に対し、関連死は215人と約4倍が関連死によるものです。報道機関によると、阪神淡路大震災以降、実に約5,000人の方が、関連死によって亡くなられているといわれています。その要因の一つが「避難所等における生活の肉体及び精神的疲労」です。
助かった命を失わないためにも、災害後、避難所のストレスをできるかぎり減らすための生活環境づくりが、関連死を減らすことにつながると考えられます。
本市では、南海トラフ巨大地震においては、避難所への避難者数は最大で約18万人と想定しています。ところが、実際、災害が起きた自治体では、想定した避難者数よりも、実際の避難者数が多かったと報告されています。
熊本地震では、熊本市の想定避難者数約58,000人に対し、最大避難者数110,750人でした。想定以上の方々が殺到し、避難所不足やせまいスペースで過ごし、また揺れるのではないかとの不安やプライバシーの確保などから車中泊も多く、さらには、避難所生活が長期に渡ったとも報告されています。災害関連死を減らすためには、一時的な居場所の避難所であっても、できるかぎり安心して快適に過ごすための生活環境の確保が必要だと考えます。
緑区では、地域の方々が健康危機管理サポーターとしてエコノミークラス症候群や感染症予防など避難所生活を支援する訓練もメニューに取り入れています。避難生活での身体的・精神的ストレスを減らすことによって、関連死を防ぐことにもつながると思います。
今年6月には、災害関連死を出さないために新潟大学の榛沢(はんざわ)特任教授を会長とする「避難所・避難生活学会」から、避難所のあり方を根底から変えていくべきとの緊急提言が出されました。清潔で誰もが使える水洗トイレ、温かい食事が提供できるキッチン、段ボールベッドなどによる簡易ベッド、略して『TKB』の導入です。
日本と同じく地震国であるイタリアでは『TKB』のしくみが整えられています。
パスタやワインの暖かい食事の提供、家族ごとのエアコン付きテントにベッド、広くて清潔なトイレとシャワーが一体となったコンテナなど、イタリアを目指して避難所の水準を引き上げるべきだと考えます。奇しくも今年は伊勢湾台風から60年目にあたります。伊勢湾台風を体験された方のお話しでは、避難所は、その当時からほとんど変わっていないとのことでした。今の避難所のあり方を抜本的に見直す必要があるのではないでしょうか。
そこで、おたずねします。避難所生活が要因のひとつとなっている関連死を防ぐためにも、人間らしい生活環境を避難所でも実現していくことが必要だと思います。私も、『TKB』は、とても大切だと思います。『TKB』の認識は、お持ちですか。
『TKB』も参考にすべき大切な視点(局長)
【防災危機管理局長】東日本大震災や熊本地震などの教訓を踏まえ、食糧及び生活必需品の備蓄や災害用トイレの充実など、災害関連死を防ぐ取り組みを進めてきた。今年3月に策定した「名古屋市災害対策実施計画」でも、めざす姿の一つとして、「助かった命が守られること」を新たに掲げ、被災者の健康保持のための啓発など、取り組みの充実を図っている。
避難所の生活環境の確保は、内閣府が2016年に改定した指針を踏まえ、取り組みを進めている。『TKB』についても、避難所において、避難者一人ひとりの健康を守り、安心・安全を確保することは重要であり、参考にすべき大切な視点であると考えている。
『TKB』の考え方を取り入れた協定の締結を
【さはし議員】本市は、すでに避難所において、環境整備の取り組みに努力をされているのは承知しています。しかし、避難所に想定以上の方々が避難してくる可能性もありますし、生活が長期に渡ることも考えられます。備蓄物資を増やせば、保管スペースの問題もあります。熊本地震を経験された方から「トイレの衛生状態は非常に悪かった」とお聞きしました。トイレは我慢することができません。多くの避難者が利用され、数も必要です。汚れたトイレに行きたくなくて、水や食事を控えることになれば健康上のリスクもでてきます。
お隣のあま市や津島市などでも、災害時にトラックの荷台が個室の簡易水洗トイレになっている「移動トイレカー」を派遣する協定を企業と結びました。本市もすでに結んでいますが、拡充していくことも必要です。
また、避難した方々にとって、炊き立てのごはんなど温かい食事が栄養面でも気持ちのうえでも大切です。各務原市は、移動販売業者のキッチンカーによる炊き出しや物資の提供の災害時応援協定を締結しました。炊き出し訓練による自助努力に加え、キッチンカーで暖かい食事の提供ができるようにすることで、避難所での生活環境の水準を一歩進めることにつながります。
このように、『TKB』の考え方を取り入れた協定の締結など、避難所の改善を一層進めていくお考えはありませんか。
避難者の多様なニーズに対応できるよう、物資供給事業者とのさらなる協定締結などに取り組む(局長)
【局長】発災後の時系列に応じて、避難者の多様なニーズに適切に対応できるよう、物資供給事業者とのさらなる協定締結など、関係局と連携を図りながら、避難所の良好な生活環境の確保に向けて、引き続き、取り組んでいく。
キッチンカーなど新たな業種との協定をすすめよ(要望・意見)
【さはし議員】防災危機管理局長からは、「『TKB』は、参考にすべき大切な視点。物資供給事業者とのさらなる締結など、関連局と連携を図りながら、避難所の良好な生活環境の確保に向けて取り組んでいきたい」との答弁をいただきました。導入を提案するのは、避難所だから我慢しなければならないのではなく、避難所だからこそストレスの少ない生活ができる工夫がいっそう大切だからです。
今回、私は企業・事業者とのさらなる協定の推進を提案しました。今この時も、台風15号で被害に遭われた方々のために、キッチンカーが活躍しています。キッチンカーなど新たな業種との協定を拡大することを含め、避難所はこうあるべきとの前例にとらわれず、名古屋市民の尊い命を守るために、避難者に寄り添った生活環境向上のため、よりいっそう取り組んでいただくことを要望します。
キーワード:環境と防災、まちづくり、さはしあこ