2019年11月議会

岡田ゆき子議員の議案外質問②セーフティーネットとしての保育所の役割(2019年11月26日)

セーフティーネットとしての保育所の役割について
岡田ゆき子議員

セーフティーネットとしての公立保育所の役割は変わっていないか
【岡田議員】名古屋市は、2007年の「保育施策のあり方指針」において、公立保育所の見直しの基本的な考え方の中で、公立保育所の役割を明らかにしています。一つはスタンダードな保育の提供、2つ目に障害児や特別な配慮を必要とする児童を受け入れるセーフティーネットとしての対応、3つ目に多様な保育サービスの提供と地域の子育て支援の拠点、4つ目に区役所や保健センター、主任児童委員などの関係機関との連携ということです。この公立保育所の役割は、現在も変わっていないという認識でよろしいでしょうか。

障害児の入所数は、民間保育所にくらべ公立保育所で急激に伸びている
 公立保育所の役割である「セーフティーネット」の一つとして、障害児保育があります。名古屋市では、心身の発達に遅れのあるおおむね3歳以上のお子さんについては、就労などの要件がなくても「発達援助」を入所事由として保育所等の申し込みができます。障害児認定がされると、公立保育所では職員の配置を、民間保育所では障害児保育のための補助を行います。入所児童数が近年増加していることもあり、障害認定される児童数も増えています。
 公立保育所と民間保育所の1か園当たりの障害児受入児童数は、2013年度では公立は4.8人、民間は3.5人と大きな差はありません。しかし2018年度になり公立7.4人と大幅に増え、民間は3.6人とほとんど変わりありません。なぜ公立保育所の受け入れが急激に伸びているのか、受け入れに差があるのはなぜですか。お答えください。

虐待を受けた児童など特別の配慮を要する児童の受け入れの実態はどうか
 セーフティーネットとして、特別の配慮を必要とする児童の支援も役割として挙げられます。今年5月に名古屋市が発表した児童相談所相談実績では、児童虐待に関する相談対応件数は3394件で、年々増えてきています。児童虐待防止法の改正で通告義務が拡大された2004年度と比べると、約6倍です。また、被虐待児童の4割が就学前児童となっています。児童虐待防止法は、「児童虐待の予防及び早期発見、迅速かつ適切な児童虐待を受けた児童の保護」を国と地方自治体の責務と位置づけています。入所児童の虐待の早期発見や、未然に防止をするために、保護者の抱える課題を把握すること、必要に応じで関係行政機関と連携を行うなど、保育所が果たす役割は大きなものがあります。また、公立保育所は、民間保育所等からの相談を受け、豊かな経験をいかして適切な対応をアドバイスすること等、福祉行政機関として児童の育ちを守る責務があります。
 特別の配慮を要する児童が増加している中、公立保育所でも民間保育所等でも児童の受け入れが増えていると思われますが、実態はどうなっていますか。

 

セーフティーネットとしての公立保育所の役割をどう担保するか
 行政機関の一つとして公立保育所はセーフティーネットの役割が求められている中、名古屋市は10年前の2009年度に「名古屋市公立保育所整備計画」を策定し、当時の123ヶ所あった公立保育所を78ヶ所に削減するとしました。今年度までに22ヶ所減らし、101ヶ所となりました。公表されている2025年度までには、さらに2割削減し83カ所にしていく予定です。
 では、この10年間で子どもを取り巻く状況はどうなっているでしょうか。地域を巻き込み子育て支援する主体的な住民の取り組みが進んでいます。障害の早期発見・早期療育がすすみ、切れ目のない支援につながるようになってきています。また、障害がその子の特性として保障され、あらゆる場面でインクルーシブな社会が必要だと認識も広がってきています。一方で子どもの貧困率、特にひとり親家庭の貧困率が先進国の中でも高いままであることや悲惨な子どもの虐待事件は後を絶ちません。誰一人取り残さないために、就学前の子どもたちの実態を把握し、セーフティーネットとしての役割を発揮しているか阻害しているものがあるのならそれは何か、子どもの視点に立った行政のあり方が問われています。
 セーフティーネットとしての公立保育所の役割をどう考え、今後その役割と受け皿の確保をどう担保していくのか答弁を求めて、第1回の質問を終わります。

公立・民間保育所ともに、子どもや子育て家庭への支援の役割を果たすよう努めたい(子ども青少年局長)
【子ども青少年局長】「名古屋市保育施策のあり方指針」に掲げている障害児や特別の配慮を必要とする児童の受け入れ等、セーフティーネットとしての役割は、公立保育所、民間保育所ともに果たしていると考える。
 市では、障害のある子とない子が生活や遊びを通してともに育ちあうという統合保育の考え方に基づき、保育所において障害児保育を行っており、個々の保育所の状況によって障害のある児童を積極的に受け入れ、対象児童数は公立保育所、民間保育所ともに増加している。
 公立保育所、民間保育所に関わらず、保育所は、日々の児童の様子を継続的に確認し、送迎の際に保護者から子育ての悩みを聞くことができるなど、養育に不安のある家庭の見守りや支援も行うことができる場所と考えている。
 今後とも、公立保育所、民間保育所ともに、子どもや子育て家庭への支援を担う施設としての役割を果たしたい。

公立保育所での障害児受け売れはどこまで増やせるのか(再質問)
【岡田議員】京都市も、公立保育所の削減が進められています。もともと公立保育所が少ない京都市で、削減を進めたので、少なくなった公立保育所に障害認定の児童が定員の3割にも達するところが出て、日々の保育も大変になっているとも聞いています。
 答弁では繰り返し、公立、民間ともにセーフティーネットの役割を果たしていくと答えられていました。そうしか答えようがないというのが実際なのではないかと考えてしまいます。障害のある子もない子も一緒に過ごす統合保育を進めるのは当然です。しかし、セーフティーネットというのは、支援が必要な子どもを、財源あるなしにかかわらず、まず受け入れて、子どもや保護者の対応が図られるとうことではないのですか。公立保育所は行政機関の一つですから、そうしたセーフティーネットの機能なければならないし、民間保育所にその機能を同等に求めるということではないと思います。
 名古屋市も同様に障害児の受け入れが急激に増えている、その理由は今の答弁では明らかになりませんでした。なぜなのか、わからないというのが答えだと思います。ただ、実態として、公立保育所は減らしていますし、この急激な増え方でいけば、1園あたりの受け入れ児童数は現状の平均7.4人からさらに増えるのではないですか。問題は、障害児や特別な配慮が必要な子どもたち一人一人に必要なケアができない事態になってしまうのではないかということです。
 市として公立保育所の障害児受け入れは、どこまで増やせると考えているのでしょうか

これまでどおり受け入れたい(子ども青少年局長)
【子ども青少年局長】これまでも公立保育所、民間保育所に関わらず、障害のある児童を受け入れてきた。
 今後も、これまでと同様、個々の保育所の状況を踏まえながら、保育所において、障害のある児童の受け入れを進めたい。

 

民間園では受け入れ体制が不十分なので転園を勧められる。民間移管の実態を把握していない(再々質問)
【岡田議員】質問の答えになっていません。「名古屋市保育所あり方指針」では、「すべての保育所で障害児保育が実施できるように進めていきます」と言い切っています。しかし、思うように進んでいない。なぜかわからないということではないですか。
 民間保育所から公立保育所に転園された保護者からお話を聞きました。在園していた民間保育所で「お宅のお子さんはうちでは対応ができないので公立保育所に行かれた方がいいと思う」と勧められたというお話しでした。また、ある民間保育所の園長先生は、保育所見学にみえた保護者から「もし入園したら、手がかかるようになったら転園しないといけないですか」と聞かれたそうです。辛い思いをして保育所探しをしていることはよくわかったけれど園長先生は「今の職員体制では受けることができないので、区役所で相談をして下さいね」と答えざるをえなかったと言われました。こういう実態をつぶさに名古屋市が把握していないのではないか、とわたしは思います。統合保育がなぜ進まないのか、何が課題なのか、実態把握と分析が必要ではありませんか。答弁を求めます。

障害児の受け入れ数は公民保育所ともに増えている(子ども青少年局長)
【子ども青少年局長】障害児保育の対象児童数は、2013年度は公立保育所で561人、民間保育所で568人でしたが、2018年度は公立保育所で763人、民間保育所で960人と、公民ともに増加をしており、公立、民間に関わらず、障害児保育を推進している。
 今後も、必要な体制を確保しながら、障害児保育の推進に努めたい。

公立園を減らし民間園を増やした結果だ。公立保育所の削減計画は見直し、公立保育所の拡充を(意見)
【岡田議員】今の答弁では、受け入れ人数が増えているという数字を言われただけです。公立保育所は施設数を減らしていて、対象児童は3割増えているのです。詰め込みがおきているんです。このまま保育所を減らせば、今の障害対象児が増えなくても、公立に1か所10人程度になっていくことが考えられます。これでも全ての子どもに行き届いた保育が保障できると考えているのですか。
 具体的に問題が出てきていることを指摘したが、経験やスキルのある公立保育所を減らすのは、行政の責任を投げだすものです。民間移管はこの数年、様々問題が起き、予定どおり進まない事態も起きています。性急で慎重さに欠ける公立保育所の削減計画は見直すべきです。支援が必要な子どもはもちろん、保育の必要なすべてのこどもが安全に健やかに生活できるよう、公立保育所の拡充こそ求められていることを指摘し質問を終わります。

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