2019年11月議会
江上博之議員の議案外質問③芸術・文化に口を出さず、金を出せ(2019年11月26日)
あいちトリエンナーレ2019に対する負担金支出について
江上博之議員
表現の自由を守る立場から、市は負担金を全額支出すべきではないか
【江上議員】河村市長が、「日本国民の心を踏みにじる行為」と述べ、あいちトリエンナーレ実行委員会会長である大村秀章知事に即時中止を求め、今年度負担金171,024千円の支出の一部を支出しないと言い出していることに対し、全額負担金を支出することを求めます。
「表現の不自由展・その後」は再開され、あいちトリエンナーレは無事閉幕しました。表現の自由を守ろうという国内外の声、市民、そして関係者のみなさんの大きな努力に敬意を表します。それだけに、河村市長が、再開に抗議する行動は表現の自由を踏みにじる行為です。
「表現の不自由展・その後」は、美術館などで展示を拒否されたり、一度展示されたものを撤去されたりした作品をその経緯とともに展示し、企画展実行委員会の「ごあいさつ」にあるように「自由をめぐる議論の契機を作りたい」という企画です。したがって、実行委員会も愛知県も名古屋市も、個別の作品への賛意を示したものではありません。表現の自由に対して、国の文化芸術基本法では、地方公共団体に対して、基本理念にのっとることを求めています。基本理念には、「文化芸術活動を行うものの自主性が十分に尊重されなければならない」とあり、これを守るのが名古屋市として求められています。
ヘイトスピーチも表現の自由だから、ヘイトスピーチについて規制することは問題だ、という声があります。しかし、この点については、名古屋市議会が国に提出した意見書でも明らかにしましたが、「人種差別に該当する」発言であり、人権を侵害する発言だから規制すべきです。「表現の不自由展・その後」で、人種差別や、人権侵害は行われていません。ですから、名古屋市が行うべきことは、いったん決まった作品の表現の自由をどう守るかを考えるべきで、「金は出しても口は出さない」に徹することが憲法第21条の求めていることです。
そこで、河村市長に質問します。市の姿勢として表現の自由を守る立場から負担金を全額支出すべきです。いかがですか。
手続き上、市長としては一定の審査をする義務がある(河村市長)
【河村市長】形式的な条文上の根拠を言いますと、あいちトリエンナーレ実行委員会負担金交付決定通知書があり、平成31年4月16日、河村さんから大村さんに出されております。その3条の4項に市長は負担金の交付決定後、事情の変更により特別の必要が生じたときは、負担金の交付の全部もしくは一部を取り消し、またはその決定の内容もしくはこれに付した条件を変更する場合がありますと。8号に、市長は負担金の対象となる事業に関し報告させ、または市職員にその事務所等に立ち入らせ、帳簿書類その他の物件を検査もしくは関係者に質問させることができますと。私も芸術家の皆さんを尊敬させていただくということにしまして、必要最小限でいいんですけど。これは公金が支出されますんで。
公金で芸術を応援する場合もあるんです。例えばやっとかめ文化祭とか、名古屋まつりとか。それには議会で議論して、そんなとこにウソがあったらいかんでしょ。騙されとったら。議論して、なおかつマスコミもチェックして、そういう民主主義的な住民自治のプロセスを経て、税金で一種の芸術を応援する。今回の場合、市長としては一定の審査をする義務がある。
問題は陛下の。江上さんに聞きたいけど、陛下の肖像画をバーナーで燃やして足で踏んづける、それに税金を使ってええと思っとるのかね。もう一つの大問題はそれを隠して出した。そういうとこに税金を出してええというの。ちょっと答えてちょ。
市長は質問者に質問できません。質問に答えなさい(議長)
【議長】反問権はございません。
【河村市長】反問権、陸前高田はある、言っとったぞ。
【議長】質問にお答えください。
【河村市長】マスコミにも答えてほしいんですわ。俺のことボロカスに言うのはいいけど。本当にそう思っとんのかって。質問しとって何か言ったらどうだ。何なんです。
会長代行の市長は運営会議に出席もしていない。表現内容で支援の是非を決めるべきでない
【江上議員】手続きのことを言ってみえたようですが、あなたは、運営会議、過去2年間に4回ありましたが、この運営会議に一度も出席してみえない。そういう手続きについて重視するご意見をお持ちなら、なぜ出なかったのか。こんなことでは会長代行の責任が問われると思います。
河村市長は、11月20日の「提案理由説明」で、10月11日、名古屋市として「『表現の不自由展・その後』の展示再開に反対し、この展示を支援しないことを市民の皆様へ表明した」と述べられました。この見解をみてみました。そうしたら、名古屋市長・あいちトリエンナーレ実行委員会会長代行河村たかしの署名入りの見解でした。そして、「本件展示には、高度な外交問題となりうる強い政治的主張と捉えられうる作品や、多くの人々がこころよく思わない可能性のある作品が含まれていること」という表現内容を理由に、「本件展示を支援しない」としています。
そこで、市長に質問します。二つの例を挙げて作品の内容に踏み込んで判断しています。「金を出しても口を出さない」という表現の自由に対する行政の姿勢に反している。この判断のもとに施策を行うべきではないと考えます。市長はどうお考えなのでしょうか。
過去10年間では出席した。わしが(展示を)止めたわけではない(市長)
【河村市長】いままで実行委員会には何回か出ております。10年間の間に。発言したことも確かあったかと思います。
普通は表現の自由ですから、芸術家が自分の意思でいろんなおもしれえものをやってくれりゃあええと思っとったんです。前日のレセプションでは燃えよドラゴンズを歌って、燃えよトリエンナーレ言って盛り上げようと思っとったわけです。まさか天皇陛下のこんな動画が出とろうとか、騙してやっとるとは思わんかったからです。
そういう状況のもとにおいては、むしろ、ちょっと待てと。これは、わしが止めたわけじゃないです。大村さんに、議論させてくれ、そう言ったんです。それは私の務めじゃないですか。何を言っとるんですか。
「支援しない」とは、負担金を支出しないということか
【江上議員】「本件展示を支援しない」というのは、「表現の不自由展・その後」に対する負担金を支出しないということですか。お答えください。
住民自治の適正なプロセスで決定されるものと思う(市長)
【河村市長】それは検証委員会やっていただきますんで、そこでよく議論していただいて、議会の皆さんともよう判断していただいて、そういう住民自治の適正なプロセスで決定されるもんだと思います。
検討中の第三者機関は行政権力の介入を受けない保障があるか
【江上議員】第三者機関について質問します。表現の自由を守るために行政が行うことは、市民も芸術家も表現の自由について議論をし、多様な意見を表明ができる場をつくることであって、表現内容に介入しないことです。河村市長は、アーツカウンシルをつくる、と発言し、名古屋市の来年度予算要求内容の公開で、「名古屋版アーツカウンシルの実施」を観光文化交流局は要求しています。名古屋市文化振興計画2020では、アーツカウンシルとは、「一般に、文化芸術に対する助成の審査、事後評価、調査研究などを行う専門家による第三者機関をさす」と記述しています。問題は、表現の自由に対する行政権力の介入を許さない第三者機関をどう保障するか、という点です。
9月25日、大村知事が「表現の不自由展・その後」を再開すると発表をした翌日の26日、文化庁は、「運営中の懸念を申告しなかった」として、「愛知トリエンナーレ2019」への補助金全額の不交付決定を発表しました。その翌日、27日、文化庁所管の独立行政法人「日本芸術文化振興会」が、政府出資や民間資金による芸術や文化を振興する活動への助成金の交付要綱を改正し、助成金交付の内定や決定を取り消す理由として、「その他公益性の観点から不適当と認められる場合」を追加しました。誰が判断するかといえば、芸術文化振興会理事長裁定となっていますから、理事長です。第三者機関が「公益性」を理由に表現の自由に介入するものです。これは、第三者機関を名乗って、行政権力が表現の自由に介入することに等しいのではないでしょうか。
そこで、観光文化交流局長に質問します。今、予算要求している名古屋版アーツカウンシルが、第三者機関として、助成金の審査などで「公益性」を理由にせず、自由な議論を促進する機関となることを求めます。いかがお考えでしょうかお答えください。
他都市の事例を参考に十分に検討したい(局長)
【観光文化局長】2018年度に策定された名古屋市文化振興計画2020において、「新たな文化芸術の推進体制」として、文化芸術を活用した新たな取り組みを行う第三者機関、いわゆる「アーツカウンシル」の設置に向けた検討を行っている。
その具体的な機能としては、文化活動に対する助成の審査や評価のみならず、当地域の文化を支える人材育成事業や、調査研究など行う企画戦略事業などを検討している。
他都市の事例なども参考にしながら、本市のアーツカウンシルのあり方や組織などについて、引き続き十分に検討したい。
自由な議論を促進する機関に(要望)
【江上議員】第三者機関の設置、あるいはこれから検証委員会ということもあるようですが、公益性を理由にせず、自由な議論を促進する機関となるよう、そのことを保障する、そういう姿勢を名古屋市として持っていただきたいということを申し上げておきます。
「金は出だしても、口は出さない」、表現に対して自由な論議ができる場を作る、名古屋市の表現の自由に対する姿勢を求めます。そして、市の負担金を全額支出することを求めて質問を終わります。
キーワード:平和と人権、市民生活、江上ひろゆき