2020年2月議会
江上博之議員の天守閣関連補正予算案に対する質疑(2020年2月26日)
台等仮設工事の予算とともに実施設計の予算も取り下げを。石垣調査の見通しがないのに実施設計はできない 江上博之議員
現天守閣の解体予算を取り下げる以上、実施設計予算も取り下げるべきだ
【江上議員】名古屋城天守閣特別会計補正予算の天守閣木造復元実施設計1億3100万円の繰越について質問します。
当初予算には、現天守閣解体の予算と、天守閣木造復元の予算を計上しています。ところが、解体を先行する現状変更許可が認められず、名古屋市は建設会社との基本協定書に掲げる2022年12月完成を断念致しました。
今回の補正予算では、現天守解体のために必要な工事用の構台等仮設工事を取り下げるとしています。この予算を取り下げるのですから、その後の復元のための実施設計も、同じように取り下げるべきではありませんか。
文化庁と協議するための資料作成に必要(観光文化交流局長)
【観光文化交流局長】昨年4月に現天守閣解体のための現状変更許可申請書を提出したが、許可取得に至らず、8月には竣工時期を延期することを公表した。その後、天守閣木造復元を実現可能な手順に基づいた工程にするため、現在も竹中工務店、文化庁、地元有識者との相談を重ねている。
構台等仮設工事の予算は、現時点でも現天守閣解体の現状変更許可が取得できず、解体工事の着手の目途が立っていないので、2019年度の予算と合わせ、2020年度の債務負担行為も取り下げることとした。
一方で、2018年4月に契約締結して以来進めている実施設計業務は、文化庁の指摘事項に適切に対応していくため、文化庁をはじめ地元有識者へ相談・協議するために必要な資料作成などを行う業務を、継続して確実に実施していく必要がある。実施設計業務は、本事業を実現するために進めることが必要なので、予算を取り下げるのでなく、2020年度に実施する必要のある業務について繰越をお願いしている。
設計ができなかった要因である石垣調査等の目途は立っているのか
【江上議員】それでも実施設計だけは繰越すといいます。今年度実施設計ができなかったのは、石垣調査などの結果を反映した設計ができなかったからではないでしょうか。天守閣の土台の石垣で、特に、北側の石垣の孕んでいる部分の文化庁が求める調査が行われていません。また、天守閣と石垣との接合部にあたる基礎構造について石垣を移動させることがいいのかどうかも含め方向性も出ておりません。さらに、地盤調査も行われておりません。今後石垣調査などができる目途があるのでしょうか。今後できる目途も立たない事業費の繰越をなぜ行うのでしょうか。この点からも実施設計を取り下げるべきではありませんか。
石垣調査の目途は立っていると認識
【観光文化交流局長】天守台石垣の調査は、今年度中を目途に石垣の現況調査の結果を整理し、有識者に諮ったうえで、追加調査の必要性について判断する。調査が必要となれば早急に対応する。
石垣調査等を反映して進める基礎構造の設計はできていないが、今後、遺構に配慮した基礎構造を検討するため、穴倉石垣の残存状況を確認する試掘調査を石垣部会に諮ったうえで行う。
石垣部会との打ち合わせでは、「文化庁からは、復元まで一体でと言われていることもあるので、名古屋市が全体整備検討会議との関係を整理していくなかで、これからは復元まで含めた議論を行っていく事になる」との意見をいただいた。従って、石垣調査は実施できる目途が立っていると認識しており、実施設計の繰り越しをする。
繰越予算計上は、石垣の有識者との約束をも違えるものではないか
【江上議員】今回の補正予算の前提に、石垣の調査保全修復を最優先とする石垣の有識者との話し合いの結果があったと思います。「天守台石垣の調査保全修復を最優先にし、木造復元も含めて議論する」という話し合いがあったと聞いております。とすれば、石垣の調査を最優先にすることです。その調査がいつ完了するのか。その結果次第で石垣保全のために修復作業が必要になります。修復作業だっていつまでかかるかわかりません。このようにいつできるか何らめどが立たない石垣調査、保全修復ですから、天守閣実施設計は中止するのが、有識者との話し合いを実行することではありませんか。繰越予算計上は、有識者との約束をもたがえるものではありませんか。
石垣の保存方針をできるだけ早く整理し必要な措置をすすめるので約束には反しない
【観光文化交流局長】石垣部会の有識者には、石垣調査をしっかり行った上で、必要であれば石垣保存のための処置を行う、という考え方を示した。
これまでに行った石垣調査の成果の見直し・分析を、3月末を目途に進めており、それに基づいて、石垣部会の有識者に諮りながら、保存方針を整理したい。その保存方針に従い、必要な処置は優先して行う。
有識者に示した考え方に従って進めており、約束を違えるものではない。
石垣保全に必要な調査研究体制が整っていないなか、完成の目途すらわからない実施設計は中止すべき
【江上議員】今必要なことは天守閣北側の孕んだ部分をはじめとする石垣調査です。地盤調査を行うことです。それを行うのは、石垣の有識者の協力の下、名古屋城調査研究センターです。その調査研究センターは、確かに、石垣調査体制のための人員は確保されつつあると思いますが、石垣調査の経験者の実態は、一人ではありませんか。個々の学芸員の力量はあると思いますが、専門性とともに経験がものをいう世界です。一人では、実際の調査はなかなか進まないのでありませんか。400年先まで保全される石垣を考えたら、石垣調査の力量を高めたうえで、調査をし、保全を考える。そのために、5年10年かかる仕事ではないでしょうか。現に、本丸搦め手馬だしの石垣修復は、2004年に初めて16年目に入っています。ここだけでも時間がかかっています。体制を整えなければ本物である石垣保全とはなりません。
そこで質問致します。石垣保全を最優先すると決めたのですからその仕事に徹することです。今は、石垣保全に全力を尽くすことです。完成のめどすらわからない実施設計は中止すべきではありませんか。
石垣調査や保存方針の立案をしながら、実施設計を進め、木造復元に向けて努力する
【観光文化交流局長】名古屋城調査研究センターの学芸員は若い職員が多く、経験を積んでいる段階であり、経験のある職員や石垣部会構成員を始めとする外部有識者、コンサルタントなどの指導を受けながら、日々研さんに努め、石垣調査を行い、保存方針の立案に向けて分析を進めている。できるだけ早く、調査研究センターの能力を向上させ、石垣の調査研究体制を整えたい。
石垣の調査や保存方針の立案を行いながら、実施設計を進め、木造復元早期の実現に向けて継続して努力する。
実施設計が完成できるという根拠を示せ(再質問)
【江上議員】名古屋市が契約をした実施設計を繰り越すのは、「文化庁をはじめ地元有識者への相談をしていくために必要な資料作成などを行う業務が必要」とか、石垣部会との打ち合わせで、「石垣調査」の「実施できるめどが立っていると認識し」たから、との回答でした。しかし、実施設計は、木造復元の設計のために必要な業務であって相談の資料作成のためではないはずです。また、石垣調査ができるからと言って、調査結果次第で保全ができるのか、修復の必要があるのか、どうなるかわかりません。実施設計を繰越すというなら今後実施設計が完成できる根拠が必要です。根拠を示してください。
木造復元の意義を文化庁に理解してもらうためには実施設計が必要
【観光文化交流局長】文化庁の指摘事項の追加情報として、「現天守の解体・仮設物設置が石垣等遺構に与える影響を判断するための調査・検討」と合わせ、「現状変更を必要とする理由」として木造復元を挙げるのであれば、天守解体と木造天守復元を一体の計画として審議する必要があるため、木造天守復元に係る計画の具体的内容を提出するように求められている。
これらの指摘事項に適切に対応し、文化庁へ回答していく中で、木造復元の意義をしっかりと説明し、理解をいただければ、木造復元の議論をはじめる環境が整うと考えている。木造復元は実現可能であると認識している。そのためにも、実施設計業務を継続して進め、完了させなければならない。
市民合意がないまま復元を進めることが 問題。実施設計繰り越しは中止を
【江上議員】思いは聞いたが、私が聞いたのは根拠です。実施設計を繰越して、今後実施設計が完成できる根拠は示されませんでした。
そこで市長に質問致します。市民合意もなく強引に木造復元を進めてきたことに問題があります。石垣の有識者との約束から言えば、今最優先するのは石垣の調査、保全、修復を行うことです。天守閣木造復元のための作業は、中止すべきです。そのために、今回の実施設計の繰越は取り下げるべきと考えますが、いかがですか。
石垣部会と目指す方向性は一致している。データが出たら速やかにやると文化庁から聞いている(市長)
【河村市長】石垣部会の皆さんとは完全に目指す方向性においては一致しています。市民から、早うつくってもらわんと死んでまうという声を伺っております。文化庁とも確認して、石垣部会とも仲ようやってちょうと、もうちょっと丁寧な言い方でしたけど、石垣部会と一緒になってすすめていきましょうと、伺っております。データが出てきたら速やかにやりますよと文化庁から聞いておりますので、誠実に従っていこうということです。
工期を急ぐために高額な契約をしたのに完成時期もはっきりしない事業だ。直ちに中止を
【江上議員】市長からも繰り越しをする根拠は明確に示されませんでした。期限を切っての木造天守閣復元に市民合意はありません。
2020年7月というのが最初に提案されたものです。2020年7月から2022年12月完成も断念いたしました。技術提案交渉方式による基本協定そのものがいま問題となっています。2016年の提案当時「4年間の工期で完成する能力は名古屋市にないので技術提案交渉方式」を取るとしていました。この方式は、金額が高くなる危険があり、現に505億円という金額が出てまいりました。当時の説明では、250億円から400億円と言われていたにもかかわらずです。その期限が伸びているのです。技術提案交渉方式そのものを導入した意味もありません。完成時期もはっきりしない、技術提案交渉方式でなければ費用も見直しが必要です。市民合意がない事業を強引に進めてきた結果がいま現れています。
実施設計繰越は取り下げ、名古屋市と建設会社との基本協定書を廃棄し、事業を中止することを求めて質問を終わります。
キーワード:大型開発・ムダ遣い見直し、江上ひろゆき