後期高齢者医療広域連合議会 2月定例会 議案質疑 保険料値上げ(伊藤建治春日井市議・2020年2月7日)
保険料の大幅値上げで負担が増大
愛知県後期高齢者医療広域連合議会 伊藤建治議員(春日井市)
連合長は「1円でも安く」といっていた
【伊藤議員】この条例改定は、主に①保険料率の改定、②賦課限度額の引き上げ、③均等割額の軽減基準の見直しをするもの。
保険料率について、8月議会で保険料率の引き下げが出来る要件はあると値下げを求めた。軽減特例の縮小・廃止、高額療養費の自己負担限度額の引き上げで負担は大幅に増えており、せめて保険料率改定で負担軽減がなされることを期待した。
連合長からも「一円でも安く」という前向きな答弁があり、期待したが、10パーセントもの値上げの提案です。
医療給付費の見込みはどうだったのか
【伊藤議員】保険料率算定の基礎数値のうち医療給付費の推移について、一人当たり医療給付費は、88万4150円と見積っている。ここ数年は横ばいで推移、2019年度は給付費の増加があった。2020、2021年度の医療給付費見込みの考え方を示せ。
1人当たりで2018年度実績86万4,376円、2019年度見込87万2,408円(課長)
【給付課長】今回の保険料率改定にかかる基礎数値は、2016年4月診療分から2019年9月診療分までの実績値を基に求めた伸び率、各月の被保険者数見込み及び診療報酬改定等を加味して算出。2019年度も1人当たり医療給付費は上昇。今後も医療の高度化や診療報酬改定等で1人当たり医療給付費が増加傾向と見込まれ、2020、21年度は1人当たり医療給付費の伸び率を2.72%と見込み、2か年の医療給付費の総額を1兆7,475億4,369万1千円と見込んだ。1人当たりの医療給付費実績は、2018年度86万4,376円、2019年度87万2,408円の見込み。
一人当たり医療費の実績は(再質問)
【伊藤議員】一人当たり医療給付費は、医療の高度化や診療報酬改定により給付の増加が見込まれるとのことだが、医療給付費だけでは、医療費の全体が見えにくいため、一人当たり医療費はいかほどか。
2019年度実績は94万4,634円、今年度の見込みは95万5,085円(課長)
【給付課長】1人当たりの医療費は、2018年度実績は94万4,634円、2019年度見込みで95万5,085円。2020年度96万4290円、2021年度は97万3123円の見込み。
医療費等の増加要因はなにか(再質問)
【伊藤議員】診療報酬は大幅なプラス改定にはなっておらず、一人当たり医療費及び医療給付費を押し上げている要因は、疾病の状況によるものと思われます。どのような疾病が、医療費や医療給付費の増加に影響しているのか。
医療技術の高度化等が要因。慢性腎臓病、骨折、糖尿病の3つで15%(課長)
【給付課長】医療費が増える要因には、医療技術の高度化等、様々な要因があり、特定の疾病のみが影響すると一概に断定できない。多種多様な疾病で受診され、各々の疾病も医療費全体に占める割合や前年度比較の伸び率は上下している。
個別の疾病では、透析治療を行う慢性腎臓病、骨折、糖尿病の3つが上位であり、この3疾病が医療費全体に占める割合は15.62%。特に糖尿病は、昨年比で7.69%増加、透析治療を行う慢性腎臓病と合わせ、医療費全体の11.35%を占める。これらの疾病の増加は、一人当たり医療費及び医療給付費の増加に一定の影響をあたえている。
健診率を上げることが必要。負担軽減に国がより責任を果たすべき(意見)
【伊藤議員】医療費の増加について、透析を行う慢性腎臓病、骨折、糖尿病が上位とのこと。透析を行う腎臓病の中には、ある程度の割合で、糖尿病が起因している方が含まれているものと推察。Ⅱ型の糖尿病は、遺伝的な要因に運動不足や食べ過ぎなどの生活習慣が加わって発症するもので、早期にその改善を図れれば、重症化を避けられることが期待できます。そのためには、健診が重要な役割を果たします。改めて、35パーセント程度にとどまっている健診受診率を上げていくことが必要だ。
とは言え、医療給付費が増えたら保険料が際限なく上がっていく仕組みには無理があります。社会保険の扶養家族や、国民健康保険の枠組みであれば、全体で支えることができていたものを、高齢者だけ切り離した。社会保険は身軽になった。他の世代よりも医療が必要な高齢者だけで作られた医療保険なので、医療技術の高度化などの要因に対する影響のふり幅が大きくなる。それが保険料にそのまま反映されてしまうわけですから、制度そのものに無理がある。後期高齢者医療制度を社会保障制度として機能させには、国がより責任を果たすべきものです。
財政安定化基金の繰入の考え方は
【伊藤議員】2018年度、2019年度の医療給付費の実績値について、県の財政安定化基金交付金を29億円繰り入れるが、保険料率上昇抑制の一つの手立てであり、歓迎する。繰り入れについての考え方と、根拠を示せ。
基金は国・県・、広域連合が医療給付費総額の0.038%を拠出。29億円全額を保険料の増加抑制に充てる(課長)
【管理課長】この基金は、国、県、広域連合がそれぞれ3分の1ずつ財源を拠出し財政リスクに備える他、保険料の増加抑制にも充てられる。
保険料率の算定作業を行うにあたり、県と協議しながら、国の方針に沿った活用をしてきた。制度開始当初は、激変緩和の観点から保険料増加抑制の目安や基金交付額の基準が示されていたが、保険料増加抑制のために新たに基金を積み増したうえで取り崩す方法は、原則として認めない方針へと変更された。
しかし、当広域連合では、一人当たり医療給付費の増や、高齢化の進行に伴う後期高齢者負担率の上昇からなる水準を目安とし、それを超える保険料の増加を、基金の活用により抑制してきた。
今回も同様の考え方で県と協議を進めたが、国の「基金の拠出は、標準拠出率0.038%によることを目安とする」旨の技術的助言を受け、国、県及び広域連合が医療給付費総額の0.038%をそれぞれ拠出し、財政リスクのために0.115%を備える運用が決定された。
従来は、財政リスクへの備えとして、保険料賦課総額の3%を確保していたが、標準拠出率どおりの運用に改め、新たな積み増し分のみで財政リスクへの担保も可能となり、2019年度末基金残高29億円全額を保険料の増加抑制に充てることとなった。
財政安定化基金はどうなるか(再質問)
【伊藤議員】積立金29億円すべて取り崩すが、標準拠出率どおりに積み立てる基金の取り扱いはどうなるのか。また、その額はいかほどか。
29億円を2か年で取り崩し、新たな積立で2021年度末で20億円になる(課長)
【管理課長】2019年度末時点の基金残高の見込額は、約29億300万円。2020・21年度の財政運営期間で、基金の取り崩しや積み立ては2か年に分けて行われ、取り崩しは、2020年度に約14億3,800万円、2021年度に約14億6,500万円を予定。積立は、標準拠出率により、国、県、広域連合の三者が各年度、約9億9,500万円を予定。2021年度末時点の残高見込は、約19億9,200万円。
基金の積立目安を標準拠出率に減らし、保険料の増加抑制になった(意見)
【伊藤議員】基金の積み立ての目安を保険料賦課総額の3%から、標準拠出率にすることで、基金のボリュームが縮小し、その分、保険料の増加抑制になったものと理解しました。
賦課限度額の見直しの影響は
【伊藤議員】賦課限度額を現行62万円から、64万円に引き上げるが、影響を受ける所得、収入のライン、影響を受ける人数と影響額はどれだけか。
所得626万円(年金のみで823万円)以上で限度額に。約2万人。4億円増。
中間所得者の保険料が減となる
【管理課長】賦課限度額の引上で、保険料が62万円を超える所得・収入、所得で概ね626万円以上、年金収入のみでは、概ね823万円以上となる。対象となる被保険者数は約2万人で、影響額は約4億円。
この約4億円で所得割率が9.72%から9.64%に抑えられ、所得が33万円から626万円の範囲の中間所得者 約40万人の保険料が減となる。年金収入のみでは153万円から823万円の範囲。
均等割額の軽減基準見直しの影響は
【伊藤議員】被保険験者均等割額の軽減基準の見直しで、5割軽減、2割軽減の基準が見直されるが、影響を受ける人数と額は。
5割軽減の対象者数は2,326人増。2割軽減の対象者は2,312人の増
【管理課長】被保険者均等割額の5割軽減判定に用いる所得基準額の引上により、2020年度予算で対象者数は、95,010人から97,336人、2,326人の増。軽減総額は、約23億1,700万円から約23億7,300万円、約5,600万円の増。2割軽減の影響対象者は、115,632人から117,944人、2,312人の増。軽減総額は、約11億2,800万円から約11億5,000万円、約2,200万円の増。
値上げをどう思うのか(再々質問)
【伊藤議員】最後に、今回の保険料率改定について、連合長から総括的なご所見をお伺いいたします。
医療のコストが合理的かどうか(連合長)
【連合長】1円でも安くしていこうということは、減税を主張してますので、当然の仕事ですが、こういう競争のない分野において、どうやってコストダウンをしていくかということはどえらい問題でして、医療というのは、各病院や医者がそれぞれ使っているコストが本当に合理的かどうか。わかりませんよね、公表されておりませんので。
そういうことですけれども、今、言われたように、何でもええで、医療費は必要経費を充ててどんどん上げていくというのなら、世の中、誰でもできるじゃないですか。民間で商売やっとる人、ばかみたいなもんですよ、そんなことが認められたら。
おっしゃるとおりですけれども、世界的に見ると、日本の医療というのは、多分世界一ではないかと、こういうやり方はですね。というのが普通言われているところです。
かといって、高齢者のところだけ切り離して、その分のところはちゃんと別に考慮をする必要があるのではないかというのも言い得るところでございますので。なかなか合意せんもんだで、わしも、ちょっと勉強もさせていただきたいと思っております。
キーワード:福祉・介護・医療