2020年6月議会
さはしあこ議員の個人質問①新型コロナウイルス感染症を踏まえた避難所の見直し・確保を(2020年6月19日6月定例会)
新型コロナウイルス感染症を踏まえた避難所の在り方について
さはし あこ 議員
一人当たりの避難スペースの拡大を
【さはし議員】新型コロナウイルス感染症の予防には「密集・密閉・密接を避け、人と人との物理的距離をとる」「手洗いや消毒の徹底など清潔で衛生的な環境を整える」そして「栄養バランスがとれた食事や十分な睡眠などで健康を維持し免疫力を高める」ことが大切です。これらは感染症予防だけでなく、災害関連死を防ぐためにも大切です。体育館の床での雑魚寝や冷めたおにぎりが当然だった避難所の生活環境を思いきって改善する必要があります。
まずは、一人あたりの避難スペースです。
一般的に、避難所である学校の体育館は、まさに密集・密閉・密接を生じやすい場所です。国の通知でも「避難所が過密状態になることを防ぐ」「避難者が十分なスペースを確保できるように」とし、人と人との間隔はできるだけ2m空けること、つまり一人あたり2m×2m=4㎡を確保することが望ましいとしています。ところが、現在「名古屋市指定避難所運営マニュアル」では、避難スペースは「一人あたり2㎡が目安」です。先日、行われた市の職員による「新型コロナウイルス感染症に対応した指定避難所開設運営の実地検証訓練」の検証を踏まえ、マニュアルを改定する予定とお聞きました。
そこでお伺いします。避難所での3密状態を避けるためには、一人当たりの避難スペースの基準を拡大する必要があります。指定避難所運営マニュアルの改定にあたって、現在の2㎡から4㎡へと避難スペースの基準を変更する必要があると考えますが、いかがですか。
国基準や訓練結果を参考に見直す(局長)
【防災危機管理局長】避難所における3密状態を避けるため、避難者同士が一定の距離を保つことができるような避難所のあり方を考える必要がある。
国の基準でも、一家族が一区画を使用し、人数に応じて区画の広さを調整すること、家族間の距離を1m以上あけることとされており、先般、この基準を参考に実施した検証訓練の結果などを踏まえ、指定避難所運営マニュアルに反映していく。
学校以外にも避難所を拡大することが必要ではないか
【さはし議員】現在、市内の指定避難所は約800カ所、収容人員は約26万人を想定しています。一人あたりの避難スペースを2倍にすると避難所も現在の2倍以上必要になります。国の通知では、可能な限り多くの避難所の開設、親せきや友人の家への避難の検討を呼びかけています。安全確保を最優先し、可能ならば自宅や車中泊も含めて様々な避難先を想定するようにしています。これからは学校でも、体育館だけでなく教室を避難所として活用することが当然になり、ホテル・旅館、民間団体等の会議室・研修センター等の活用も積極的に行っていくことになると思います。感染症対策の上でも様々な部屋を準備しておくことは有効です。国も感染によるリスクの高い高齢者、基礎疾患を有する者、障害者、妊産婦及びその家族などへの配慮の必要性を呼びかけています。様々な部屋の一部は、以前から私が必要性を訴えている妊産婦や乳幼児のための避難所としても確保すべきです。
これからの避難所は、このようにいろいろな形態を組み合わせて運営することが求められると思いますが、本市は具体的にどうするつもりですか。学校以外にも避難所を拡大することが必要だと考えていますか、お答えください。
指定避難所内におけるスペースの拡大し、高齢者や妊産婦等は、避難所の専用スペースや別室等を確保したい(局長)
【防災危機管理局長】まずは現行の指定避難所内におけるスペースの拡大を図り、1人当たりのスペースをこれまで以上に確保したい。
今回のコロナ禍の状況を踏まえ、感染リスクが高いとされる高齢者や妊産婦の方々は、避難所の専用スペースや別室に案内するなど、避難所内におけるソーシャルディスタンスの確保をさらに進め、感染リスクを減らせるよう務めます。
避難者への温かい食事の提供を
【さはし議員】避難所の生活環境について、何度かTKB(トイレ、キッチン、ベッド)の改善を呼びかけてきました。段ボールベッドの備蓄については、前向きに取り組むとお聞きしています。今回、伺いたいのは、キッチン、食についてです。感染症予防には、バランスの取れた温かい食事も重要です。
新型コロナの影響で、営業時間の短縮を余儀なくされた飲食店では、テイクアウトに取り組むところが増えました。どこへでも出掛けて温かい食事を提供するキッチンカーはイベントの中止に悲鳴をあげながらも、必死に営業努力を続けていました。キッチンカーの会社では組合をつくり、災害時でも物資の提供などで自治体を応援する取り組みを広げています。昨年9月議会でも提案しましたが、今回の経験も活かして災害時にも、その食事提供力を発揮していただいてはどうでしょうか。業者には一定の売り上げを保証し、被災者には元気が出るおいしい食事を届ける。小規模分散型の避難所にふさわしい食事支援になります。
飲食店などやキッチンカーの事業者と協定を結び、災害時にも温かい食事を避難所に提供してもらう仕組みをつくることをあらためて提案します。いかがでしょうか。
時系列に応じて適切に対応できるよう、供給体制の充実に務めてきた(局長)
【防災危機管理局長】温かい食事の提供は、時系列に応じて適切に対応できるよう、供給体制の充実に務めてきた。今後も様々な物資供給事業者との協定締結など、関係局と連携を図りながら、避難所における生活環境の向上に取り組みたい。
避難先の拡充を(要望)
【さはし議員】避難スペースについては新しい基準に変えていくと理解しました。これまで以上にスペースは確保するとはいうものの、学校内での確保にとどまっています。本当にそれで足りるのか不安です。愛知県下の市町村では、リスクが高くなる基礎疾患のある方や高齢者や妊産婦などに滞在してもらうよう新たな避難所の確保もすすめています。感染対策も含め、新たな避難先の拡大を早急にすすめるよう要望します。
よりよい衛生環境のために地域の担い手づくりを
【さはし議員】次に、避難所でのよりよい衛生環境のための地域の担い手づくりについて、健康福祉局長に、お伺いします。
避難所では、エコノミークラス症候群の予防とともにインフルエンザなど感染症の予防が健康管理の基本です。市内でも、避難者の健康管理を支援するサポーターの養成が取り組まれてきました。サポーターとは、感染症予防や避難者の健康管理についての知識や技術を学んだボランティアです。大規模災害時、行政や医療職がすぐ避難所にかけつけることは難しい。避難所での集団生活は感染症が流行しやすい。そこで適切な対策を行える知識を持ったサポーターが、地域役員と協力して避難所での健康管理や衛生管理を自主的に行うしくみです。既に百数十人が受講し、フォローアップ研修も行われています。
避難所の運営を主体的に取り組むリーダーの育成が、地域の防災力を高めます。新しい感染症に対しても、医療チームと力を合わせ、正確な情報と適切な行動をとれる人々を地域に育てることが必要です。
避難所には、施設班や救護班が設置されますが、加えて、新型コロナの対応がさらに増えます。日頃から住民一人ひとりの意識を高めることが、避難所全体の衛生水準を引き上げ、感染を最小限に抑えます。その中から、リーダーとなる方が出ていただければ、さらに底上げになります。
自主防災会や保健環境委員の方々などや退職された保健士や養護教諭、力になりたいと思っている地域の方々に感染症対策の基本をしっかり学んでもらい、避難所での清潔な環境保持と被災者の健康悪化の兆候を見逃さない地域の担い手を育てていく考えはありませんか。
保健センターでは保健師が健康教育をしており、この中で避難時運営における対応などを周知啓発している(局長)
【健康福祉局長】避難所の生活で感染症などの健康被害を防ぐためには、被災者ひとり一人が自分の健康を守る意識と行動ができるよう平常時から意識を高めていくことが必要になる。保健センターでは、保健師が健康教育として災害時の健康危機管理に関する講話等を行っており、令和元年度は市で280回、延べ8256人の参加があった。
この中で、自然災害が起こった場合の避難所運営における感染症予防や感染症が発症した場合の対応などについても、周知啓発を実施してきた。
今後は、新型コロナウイルス感染症対策についての内容も適宜加えまして、引き続き地域の方々に対する健康教育に取り組む。
健康教育の啓発に一層の努力を(要望)
【さはし議員】避難所を運営する地域住民の中でも、感染症への対応力、公衆衛生の知識を広げることが、災害と新型コロナの複合災害において、大きな力となりますので、しっかり取り組んでいただきますよう要望します。
キーワード:新型コロナウイルス、環境と防災、まちづくり、さはしあこ