2020年6月議会
江上博之議員の個人質問:医療・保健・公衆衛生体制の拡充・強化など、第2波を見据えた新型コロナ対策を(2020年6月19日6月定例会)
医療・保健・公衆衛生体制の拡充・強化を
江上博之議員
PCR検査数の抜本的拡大が必要ではないか
【江上議員】「コロナにかからないようにするにはどうしたらいいのだろか」この不安が続いています。不安は、治療薬やワクチンができるまでは続くでしょう。1年、2年でないかもしれません。
この間の取組みで、新型コロナウイルス感染拡大は、密閉、密集、密接の3密を避け、マスク、手洗いとうがい、人と人との間をできれば2m取った生活、テレワークなどを励行すれば、ある程度防ぐことができることが明らかとなり、緊急事態宣言解除後、「新しい生活様式」として求められています。休業要請をしないということで、金銭的補償はありません。「補償もなしで、仕事や商売を続けるのは無理だ」というのが率直なところではないでしょうか。「感染拡大防止」という公共目的のための損失補償がなければ、暮らしや営業は続きません。これらを踏まえ、第2波、第3波に備え、感染拡大防止と市民の命、暮らしと営業を守る施策を、以下求めます。
1項目です。北九州市では、5月23日から6月1日までの検査結果で、感染者113人のうち61人は無症状(濃厚接触者を検査)でした。無症状の方を含め、感染状況をつかむ動きがでてきました。
では、名古屋の実態はどうか。名古屋で、PCR検査を受けた方は、発熱など何らかの症状がある方や、かかりつけ医が必要だと認めた方となっています。PCR検査数の状況は、名古屋市民233万人のうち2月8日から6月8日までで、3,592人、人口千人当たりで、1.54人です。海外との比較で、日本の検査数が、けた違いに少ないと言われています。
5月11日に、愛知県知事を含む全国18道県知事が「感染拡大を防止しながら一日も早く経済・社会活動を正常化し、日常を取り戻すための緊急提言」を発表しました。そこでは、コロナ感染の「有症者に対して受動的に検査を行うのではなく、発想を転換し、・・・適切に検査対象者を設定して検査を大規模に行い、・・・先手を打って感染拡大を防止する」「ごく軽症も含むすべての有症者やすべての接触者へのすみやかな検査を行うとともに、・・・症状の有無にかかわらず医療従事者及び入院者、並びに介護従事者及び介護施設利用者等、医療・介護・障害福祉の機能確保に重要な関係者については優先的に検査を行う」ことを提言しました。
そこで、健康福祉局長に質問します。
感染拡大第2波に備えて、PCR検査数を今までの基準でなく、今述べた18道県知事の提言に沿って抜本的に拡大する必要があると考えますが、どう認識していますか。お答えください。
重要な視点だが、検査実施の環境整備の途上。現時点では課題が多い(局長)
【健康福祉局長】国立感染症研究所感染症疫学センターによる要領に基づき原則、症状のある方を対象に検査を実施してきたが、5月29日に改訂された国の要領やマ二ュアルに基づき濃厚接触者も対象としてPCR検査を実施している。
18道県知事の国に対する提言にある「医療・介護・障害福祉の機能確保」は、重要な視点と認識しているが、感染疑いのある方の検査をすみやかに実施するための環境整備の途上であり、現時点では課題が多い。
「提言」を実施するうえでの課題は(再質問)
【江上議員】この秋から冬にかけ、第2波とともにインフルエンザも心配されおるところであります。今、PCR検査の抜本的拡大を求め、医療・介護・障害福祉関係者を優先的に検査することを求めました。回答は、「重要な視点と認識して」いるが、現時点では課題が多いので、拡大はできないというものでした。
そこで、健康福祉局長に再度質問します。どんな課題なのでしょうか。そして、それをどのように克服していくおつもりでしょうか。
検体採取の体制などが課題(健康福祉局長)
【健康福祉局長】「医療・介護・障害福祉の機能確保」に重要な関係者に検査を実施することは、検体採取の体制を含め課題と考える。
今後とも、新たな知見に基づく国の要領やマニュアルの改正に従って、PCR検査体制の拡充は必要と認識している。
PCR検査所のさらなる増設を
【江上議員】2点目に、そのための体制をどうつくるかです。現在PCR検査は市衛生研究所で、一日80件まで、5月にできた名古屋市PCR検査所で土日以外平日一日30件まで可能となっています。現在の検査数は、一日20~30件であり検査能力に余裕はありますが18道県知事が求める検査数はできません。さらに、PCR検査所を抜本的に拡大する必要があります。市長の提案説明でも、「PCR検査体制の拡充」を述べられました。もちろん、施設、検査関係者、防護服なども必要です。
PCR検査所の更なる増設が必要と考えますがいかが認識していますか。
需要を賄えている。現行体制で実施したい(健康福祉局長)
【健康福祉局長】名古屋市PCR検査所は、比較的軽症な方について、かかりつけ医等の診断により直接依頼することができるPCR検査であり、関係団体の協力で実施している。現在は1日の需要を賄えているので、現在の体制で実施したい。
PCR検査は、PCR検査所の他、衛生研究所でも実施しており、市内医療機関等に対するPCR検査機器の設置補助で市全体の検査数拡充を図っている。
新たな知見に基づく国の要領やマニュアルの改正に従って、PCR検査体制の拡充は必要と認識している。
PCR検査拡充に全力を(要望)
【江上議員】今回無症状の濃厚接触者にも実施する、これは前進でありますが、やはり危険度が高いと思われる医療や介護や障害福祉関係者へのPCR検査に明確な回答はありませんでした。「市民の安心を実現するために、PCR検査体制の拡充に全力を尽くす」、こういうことを言われているわけですから、この線に沿って引き続きお願いしたいと思います。
保健所(保健センター)の対応に対する市長の評価は
【江上議員】PCR検査の抜本的拡大には、保健所・保健センター、衛生研究所の検査体制の充実が必要です。今年2月以降、名古屋においては介護施設の集団感染などがあり感染拡大が心配されましたが、市民の皆さんの協力、そして、何より、相談や感染症対策に携わった保健所・保健センター、衛生研究所のみなさん、医療に携わったみなさん関係者の奮闘で拡大を防ぐことができています。
この間、帰国者・接触者相談センターの電話先は、各行政区保健センターの感染症対策等担当にかかっています。相談件数1月27日から5月いっぱいで、57,533件で、現在6万件を超えています。様々の相談に保健師をはじめ職員のみなさんが対応され、その他の職員も応援、行政区をまたいでの応援、感染者が出れば、感染可能期間を「発症の2日前まで」(感染源特定のためには発症日2週間前から)の接触者の聞き取り、観察者の聞き取りと続きました。
一人にかかる時間もかかります。市長の提案説明で、「国に先駆け、おそらく日本で唯一、感染可能期間を『発症の2日前から』と広範に設定したうえで、健康観察の対象者を特定し、ピーク時には1日約1000人もの方のきめ細やかな健康観察を行うことで、・・・感染拡大防止に大きな効果があったものと自負しております」と述べています。衛生研究所も全力を尽くしています。
こういう努力で感染拡大を抑えることができていますが、1行政区1保健所から1保健所16支所(保健センター)へとなり、定員削減があり、1996年と2020年と比較すると、保健所関係で23%、衛生研究所と生活衛生センター合わせて48%の削減となっています。
それでもここまでできているのは、感染症対策に対する名古屋の独自努力があります。医師の保健センター長をできるだけ確保し、感染症対策など人とかかわる分野は組織を維持し、各保健センターで感染対策を地域ごとに行うことができたのが力になっているのではないでしょうか。
そこで河村市長に質問します。
感染拡大を抑えているのは、16行政区各保健センターそれぞれに感染症対策の組織が維持されていることが大きいのではないでしょうか。どのように認識していますか。お答えください。
保健所の皆さん、サンキューベリマッチ(市長)
【市長】市役所の職員をここで褒めてもいかんですけれども、現実的に保健所の700人を超える皆さん、大変に地味な努力、いわゆる健康観察で国の基準を実質的に上回っているんです。感染二日前、それと対象者も大きくして、最大で3月2日に1000名の健康観察をしていただいた、それがこの封じ込めに力になったのではないか。報道は何人陽性者が出て何人亡くなったかという話ばかりなのでなかなか分からんですけど、実は非常に丁寧な、伝統的ですけど、やわらかい隔離政策をとって、地道に行政として仕事をやっていくことが非常に重要なんでないかということがわかったと思います。国立感染症研究所もレポートを出してくれて、マスコミも連載してくれて、名古屋の対策が非常に広げるのを抑えるのに役立つということをしていただきました。それは本当にひとえに保健所の皆さんのサンキューベリマッチというか、市民の皆さんに成り代わりまして、ありがとう、と言っていきたいと思います。
体制を変えて保健センターということで一本化し、所長が1人、浅井さんが非常にリーダーシップをとってくれて、それから統一的といいますか指令が降りるようになって、非常に上手くいったと聞いております。権限はそのまま維持してやってきましたので、一応現状においては成功してきたと認識しております。
保健所(センター)・衛生研の組織、人員の増員が必要ではないか(再質問)
【江上議員】市民のみなさんからは、「相談の電話がかかりにくい」「熱があるといってもなかなか検査を受けさせてくれない」と不満が続出しました。組織もぎりぎりの対応となっていました。さらに継続すると思われる感染拡大防止、さらに、災害時の密になる避難生活での衛生管理も大きな問題となっています。
そこで河村市長に質問します。体制強化で、保健・公衆衛生分野の充実のために保健所・保健センター、衛生研究所の組織、人員の充実・増員が必要と考えますがいかが認識していますか。
今後組織をどうするか、再度検討したい(市長)
【市長】振り返りますと、守山に衛生研究所を早くやろうということで前倒しでオープンし、検査の体制が市でもできるようにしたのが最初でした。そこに生活衛生センターと遺伝子解析センターも一緒になり、いろんな技術を皆さんで磨いていこう、共有しようというふうに始まった。確かに、今回は保健所の皆さんの努力によって、名古屋の皆さんにええサービスができたと思うけど、この後組織をどうしたらええかということは、ちゃんと、再度検討したい、考えにゃいかんと思っとります。
本当に健康観察というのはほとんどTVに出ませんから、初期対応の行政とすると、電話をかけて、「あんた二日前に、だれだれさんと一緒にカラオケやっとらせんかったか」という話です。そういうふうにずうっと丁寧にフォローしていくという活動が非常に重要だということをやれたのは、保健所の皆さんのおかげです。医療関係者の皆さんもあります。市民の努力というのが一番ですけど。そういうことで、せっかくですので、保健所の皆さんにはサンキューベリマッチ、ありがとう、とお礼言っときます。
組織のありかた再検討を(要望)
【江上議員】保健所体制について、感染症対策の組織を維持したということが大きい、そして職員の皆さんの大きな努力があった、ということも評価されました。そして今後については、「再度検討し、考えないかん」と、組織の在り方について今後再度考えていくということも言われました。この姿勢で引き続き臨んでいただきたい。市長にはぜひお願いしたいと思います。
「新しい生活様式」に伴う
給与所得者等への支援について
コロナ禍による失業・収入減の市民に住民税減免を
【江上議員】2項目目です。「非正規最悪97万人減、うち71万人は女性」前年同月比でこのような数字が、5月29日総務省の4月労働力調査で明らかとなりました。失業者の住まい確保もままなりません。コロナ倒産も6月1日現在の帝国データバンク調べで200件を超え、事業所の廃業も増えています。いくつかの施策が行われてきましたが、今、税金の支払い請求が市民に届き、払えなくて困っている、という声がでています。
そこで、財政局長に、市民税の減免の改善について質問します。
新型コロナ対策で、市民税の徴収猶予の「特例制度」ができましたが、やはり、税そのものの減免がさらに必要です。総所得200万円以下、給与所得者で言えば年収311万円以下の方が、今年2分の1以下になるという条件です。この制度は、コロナ禍の前からある制度です。コロナ対策でも対象にするという程度でいいのでしょうか。これだけ、失業や収入減が出ているのですから、もっと対象の上限額を引き上げることが必要ではないでしょうか。
国民健康保険では、収入でなく合計所得1000万円以下で、各段階ごとに減免率を変えてですが減免することになりました。合計所得300万円以下は、保険料ゼロです。市民税の減免制度の上限額を引き上げ、対象者を増やすことを求めます。いかがお考えでしょうか。お答えください。
低所得者には手厚い減免措置がある(財政局長)
【財政局長】一定期間、収入が概ね20%以上減少した方は、無担保・延滞金無しで、最大1年間、全ての税目について納付を猶予できる特例が創設された。
中小事業者等の事業用家屋及び償却資産に係る令和3年度分の固定資産税・都市計画税では、一定期間における売上げの減少に応じ税額が2分の1に軽減ないし免除となる特例が創設されたので、これらの制度をしっかりと適用したい。
個人市民税は、扶養親族等の数に応じ所得が一定金額以下は非課税で、減免は真に担税力が低い方を対象に、条例により、適用するものとされている。
「所得が大幅に減少すると見込まれる方に対する減免」における「前年の所得金額200万円以下」という要件は、給与収入にすると年収約311万円以下に当たり、国税庁の民間給与実態統計調査結果における1人当たりの平均給与440万7千円の約7割の水準まで対象となる制度となっている。
また、所得割非課税限度額を一定額上回る方に対し、一律、所得割額の2分の1を減免するなど、主に所得の低い方を対象として非常に手厚い減免措置を講じており、減免の適用人数も他の政令都市を大きく上回っている。
徴収猶予より減免が大切。減免対象者を増やせ(要望)
【江上議員】徴収猶予があると言われましたが、1年後には払わなければなりません。1年後、収入が戻る可能性はむつかしいのではないでしょうか。やはり、今、減免が大切です。所得が低い方への施策はもちろん大切ですが、今回求めたのは給与所得者で年間311万円以上の方で、対象にならない、ここが問題なんです。コロナというとんでもない事態です。今までの制度でなく減免の上限額を引き上げ、対象者を増やすことを要望します。
事業者等への「協力金」「応援金」の継続の検討を
【江上議員】事業者について、「感染拡大防止に協力」「不特定の市民との感染リスクを負いながらの営業に応援」ということで協力金や応援金がでています。今なお限られた人しか出ていません。国の「雇用調整金」や「持続化給付金」も欠陥だらけで、今の失業、破産、廃業、という事態になっています。これをなんとか止めなければなりません。名古屋市では、南区、緑区の介護施設に休業に対する損失補償を行い優れた実績を持っています。
「新しい生活様式」を国も市も求めているのですから、それに見合う損失補償が必要ですが、少なくとも、今まで給付を行う「協力金」「応援金」の速やかな給付はもちろんですが、さらに1回限りでなくこれからも給付することを求めますが、いかが認識していますか。
協力金・応援金は緊急の一時的な措置(経済局長)
【経済局長】新型コロナウイルス感染症対策協力金は、愛知県の休業要請に応じて、協力いただいた事業者等に対し、愛知県と市が連携して交付するもので、6月18日現在、約17,000件の申請があり、約10,700件の交付を決定した。
新型コロナウイルス感染症対策事業継続応援金は、愛知県により「基本的に休止を要請しない施設」に位置付けられ、個人消費者と対面して商品・サービスを提供する事業所を継続した事業者に対し、本市が独自に交付するものです。
その他、多くの中小企業者に大きな影響をもたらしていることから、事業の継続を支援していくことが重要と考え、「ナゴヤ新型コロナウイルス感染症対策事業継続資金」を創設した。6月16日現在で名古屋市信用保証協会への申込件数は約10,000件、総額では2,000億円を超えるなど、多くの方々にご利用いただいている。
協力金や応援金は、緊急の一時的な措置と考えている。
事業者の売上減少に対する損失補償を国に求める考えはあるか(再質問)
【江上議員】協力金や応援金の更なる支援を求めましたが、「緊急的一時的な措置」という回答でした。
コロナによって、人件費が安いからと外国に頼るのでなく国内産業、地元企業の重要性がはっきりし、地元企業が存続できるようにするのが行政の仕事です。「新しい生活様式」によって自粛が求められていることから、事業者で言えば売り上げが減少しており、さらなる支援が必要です。
そこで、経済局長に質問します。何より、事業者に対する損失補償が必要です。損失補償の必要について、国に求めていますか。あるいは、求めるお考えがあるかお聞きします。
適切な施策が実施される(経済局長)
【経済局長】中小企業経営者に対する売上減少を理由とした損失補償について、国に要望していない。国では、第1次補正予算や第2次補正予算で、中小企業者等の事業を下支えする施策が講じられている。
第2次補正予算では10兆円の予備費が計上されており、国において今後も中小企業者等の事業継続のため、適切な施策が実施されると認識している。
新型コロナウイルス感染症対策のための財源確保を
不要不急の事業の見直しで
【江上議員】3項目目です。感染拡大防止のための財源をどうするか、です。財政調整基金が残り少なくなってきました。しかし、コロナ禍は、続きます。軽い症状と思っていてもあっという間に死に至るという大変怖い感染症です。本来、感染拡大防止のために自粛を求め、市民の収入が減っているのですから、事業者等に対する損失補償を国が行うべきです。そのことは引き続き求めていきます。そのうえで、施策への財源の確保が問題です。
そこで、財政局を所管する副市長に質問します。名古屋市としても、国の臨時交付金の活用や、基金の活用、市民税減税の見直し、そして、今年度の事業の中で不要不急の事業を見直してでも、市民の命を守るための施策のために財源を確保するお考えはありますか。お答えください。
決算剰余金など適時適切に財源確保する(副市長)
【副市長】新型コロナウイルス感染症対策は、数次の補正予算を編成して、国や県の交付金・補助金などをできる限り活用するとともに財政調整基金の取り崩しで対応してきました。
今回、国の第二次補正予算において地方創生臨時交付金が増額された。加えて、例年の状況を踏まえると、決算剰余金も一定程度見込まれる。
これらを踏まえたうえで今後も、適時適切に財源確保に取り組んでいく。
市民の命と暮らし、営業を守るため全力を(要望)
【江上議員】市民税減税や不要不急の事業の見直しについて、直接回答はありませんでしたが、あらゆるコロナ対策のための財源を確保するためには、あらゆる見直しに取り組む必要があります。伊東副市長の回答にあった「適時適切に財源確保に取り組んで」いくという中に、これらも含んでいるものと私は思っておりますので、その理解でまいりたいと思います。
治療薬やワクチンができるまでは不安が続きます。市民の不安解消に全力を尽くすとともに、市民の命、暮らし・営業を守ることに全力を尽くすことを求めて質問を終わります。