2020年9月議会

田口一登議員の議案質疑:市民の声も聴かないままに、市民病院(東部・西部医療センター)を名市大附属病院にするのは拙速だ(2020年9月30日 9月定例会)

追加の補正予算案に対する質疑   田口一登議員

市民病院を名市大の附属病院にする準備費を予算計上


【田口議員】一般会計補正予算のうち、公立大学法人名古屋市立大学への情報通信ネットワーク整備費等補助について質問します。

 本件は、東部医療センターおよび西部医療センターという二つの市民病院を名古屋市立大学の附属病院化するための準備として、情報通信ネットワークの整備と財務会計システムの改修を行うために、その経費を市立大学に補助するというものです。総務局長に3点お尋ねします。

市立病院を廃止する議決を しないまま市大附属病院化
【田口議員】第1は、議案上程の手続きについてです。今回、市立大学病院化の準備予算が追加の補正予算に計上されたのは、来年4月からの市大病院化に間に合わせるためですが、8月24日に3つの委員会で所管事務調査が行われる前までは、本市は1年後の2022年4月を市大病院化の時期として考えていました。そこに向けて市側が立てていたスケジュールでは、今年の11月定例会に東部および西部医療センターの廃止を内容とする条例改正議案を上程し、来年の2月定例会に市大病院化にかかる準備経費を当初予算として上程する予定だったと聞いています。 まずは東部および西部医療センターの廃止・市大病院化の是非を市議会で議論する。条例改正案が議決されて、廃止が決定されれば、次は市大病院化に向けた予算を構える。市大病院化に向けて議会に諮る手続きとしては、これが順当だと考えます。
 ところが、今回の補正予算では、東部および西部医療センターの廃止・市大病院化が議会で議決されていないのに、市大病院化の準備予算案が先に上程されています。議案上程の順序が逆ではないでしょうか。答弁を求めます。

上から、市立大学付属病院・東部医療センター・西部医療センター

閉会中委員会で説明した(総務局長)
【総務局長】市立病院の市立大学病院化は、総務環境委員会など3つの委員会で報告した。市

立大学病院化には理解をいただけたと認識しているが、時期は、2021年4月に向けて取り組むよう議会から強く意見をいただいた。委員会

の議論を踏まえ、2021年 4月の市立大学病院化に向けて、全力で取り組んでいる。走りながら、順次、準備をすすめていく。
 今回、市立大学病院と東部・西部医療センターの3病院連携の基盤となる情報通信ネットワークの整備を2021年4月に間に合わせるために必要な経費などを補正予算としてお願いしている。

財務会計システムの改修が年度内に完成しない計画でいいのか
【田口議員】第2は、財務会計システムの改修が来年度に及ぶことについてです。
 財務会計システムの改修費補助については、来年度への繰越明許とされており、システム改修は来年4月からの市大病院化までには完了しない予定となっています。
 改修した財務会計システムが稼働するのは来年度のいつごろからか。また、稼働するまでの間は財務会計システムが使用できませんが、そのことによる支障は生じないのか、お答えください。

情報通信ネットワークシステムへの接続ができるまでは手入力で(局長
【総務局長】財務会計システムの改修は、地方独立行政法人会計基準に基づく会計処理を行うため、現在市立大学で使用しているシステムを東部・西部医療センターへ導入するもの。
 財務会計システムを使用するためには、情報通信ネットワークへの接続が必要となるが、情報通信ネットワークの整備が2021年3月未までかかるため、4月からテスト運用を行い、5月未頃に本格稼働となる見込みです。
 本格稼働までのテスト期間は、東部・西部医療センターで支払書類を入力し、データが正しく処理できているかどうかを確認することとなり、不具合が生じた場合は、市立大学で修正入力をしなければならないが、事務に支障がないよう取り組みたい。

1000床の市立病院がなくなり、効率的優先の法人化をすることに危惧
【田口議員】第3は、市大病院化の時期についてです。
 東部および西部医療センターの市大病院化は、二つの病院合わせて約1000床の市民病院を公立大学法人の附属病院化し、名古屋市が直営で運営する市民病院がすべてなくなるという重大な方針であります。それが、新型コロナ危機のもとで進められようとしています。新型コロナ危機は、政府が進めてきた医療費削減路線のもとで、医療現場から「ゆとり」を奪い、日本の医療の脆弱性を明るみに出しました。すべてを市場原理にまかせ、経済効率優先という新自由主義の路線の見直しが突き付けられていると思うのです。
 そのときに、「効率的な業務運営」を努力義務としている大学法人の附属病院化を拙速に進めていいのでしょうか。市民病院の職員からは「新型コロナウイルス感染症への対応で、院内の状況は過酷となり、職員の疲労や不安は蓄積されている。いまの私たちに病院の大きな変化について考えている余裕はない」との声があがっています。市大病院化についての市民的な議論も不足しています。
 総務局長、市民病院を受け入れる側の市立大学を所管する総務局としても、市民や職員の十分な議論を尽くすために、市大病院化の時期について、来年4月という前提を見直すお考えはありませんか。

医師確保と人材育成などに来年4月の法人化へ取り組む(局長)
【総務局長】市立大学病院化は、3病院の特長を伸ばしたさらなる機能分担を可能にすることで医療提供体制及び専門・先進医療機能の強化を図ること、医師を確保し地域医療を担う人材を育成すること、地域の医療機関との連携を探化し、地域医療水準を向上させることを主な目的として行う。
 市大病院化は市議会の3委員会で報告し、理解をいただけたと認識し、時期は、2021年4月の市立大学病院化に向けて全力で取り組む。

各病院の役割があり、議会や市民に関与が薄れる法人化を市民の納得のないまま拙速に進めてはならない。コロナ感染拡大防止に集中を(意見)
【田口議員】先の3つの委員会で行ったのは、所管事務の調査でありまして、東部・西部医療センターの市大病院化について委員会で議決したわけではありません。財政福祉委員会では、わが会派の岡田議員が、市大病院と市民病院との役割の違い、議会や市民の関与、医師の処遇などで問題があることを質した上で、いまは新型コロナ対策に力を集中すべき時であり、市民や職員の理解と納得なしに市大病院化を拙速に進めるべきではないとの意見を述べています。
 議会全体の理解が得られているわけではないということを申し上げ、この後は委員会での審議に委ねて、質問を終わります。

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