2021年度名古屋市一般会計予算案への反対討論 岡田ゆき子議員
3月19日本会議で、岡田ゆき子議員が2021年度名古屋市一般会計予算について反対討論を行いました。その内容を紹介します。
日本共産党名古屋市会議員団を代表して、2021年度名古屋市一般会計予算について反対の立場から討論します。
新年度予算の問題点を指摘する前に、河村市長の12年間とは市民にとって、いったい何だったのか?総括しておきたいと思います。
河村市長のもとで 「民主主義終焉の地 ナゴヤ」に
あなたが市長になったとき、「民主主義発祥の地 ナゴヤ」という垂れ幕を掲げていました。12年たった今、「民主主義終焉の地 ナゴヤ」になりかねない事態が起きました。
愛知県知事リコール運動をめぐる不正署名問題です。選挙管理委員会が実施した署名簿の調査では、実に8割以上が有効と認められない署名との判断がなされ、何者かが大量の署名を偽造していたという、民主主義を冒涜する前代未聞の事件に発展しています。
知事リコール署名運動で河村市長は、主導的な役割を果たしてきました。それは、署名を集めることができる受任者集めに表れています。2010年の市議会リコール署名の受任者約3万4千人のデータを「知事リコールの会」に提供しただけでなく、受任者募集はがきに河村たかし名古屋市長名の「受任者のお願い」文を同封して郵送しています。差出人は「ネットワーク河村市長」であります。
リコール署名運動の成否を握る受任者を組織するために、自らの事務所で管理している名簿を使い、自らの名前で協力を呼びかけたのですから、河村市長は、まぎれもなくリコール運動の中心人物の一人であります。
コロナ対策よりリコール運動を優先
リコール署名運動が行われた時期は、新型コロナ感染症が市中感染となって広がりました。市長として感染拡大を何としても抑え込むために、愛知県とも協力して立ち向かわなければならない時に、あなたは街頭に出てマイクを握り、「署名してチョー」と繰り返していました。コロナ対策よりもリコール運動を優先したと指弾されてもしかたがありません。河村市長には、知事リコールを煽ってきた政治的道義的責任をきっちりととってもらわなければなりません。
市民税減税で貧富の格差が拡大。減税の財源のために図書館や保育園など次々に民営化
河村市長は「庶民革命」を標ぼうして登場しました。その1丁目1番地が市民税減税です。
しかし、この減税は多くの庶民にとっては恩恵がないものだったことはあまりに明白です。厳しい批判のなか、減税額は10%だったものが3.75%になり、法人市民税減税は廃止されました。減税規模は縮小されたとはいえ、格差を広げる施策としての性格はそのままです。
コロナ禍でも富裕層は所得を増やし、減税額のトップの方は621万円も減税されます。その方の所得は今年度見込みで約20億7千万円になります。これはコロナ前の2019年度と比較しても、1.2倍に増えています。コロナ禍で高額所得者はさらに収入をのばしているのです。
コロナ禍で庶民の暮らしも零細業者も大変な事態に。高齢者には負担増まで
一方、コロナ禍で、庶民の暮らしはどうでしょうか。緊急小口資金貸付の相談件数は、コロナ前に比べ45倍になり、5万5千件を超える方の相談がありました。家賃さえ払えず、住宅確保給付金を受けた方は、例年の16倍というすさまじい数です。少なくない市民が生活に窮する状況に陥りました。
高齢者のくらしはどうでしょうか。コロナで外出が制限される中、敬老パスの利用が大きく落ち込みました。今後利用が回復するかもわからない。新年度の敬老パス予算は、控えめな利用予測に基づいて計上されています。事業費を抑えるために利用制限をかける必要はありません。
さらに、介護保険料が基準額で年額3013円も引き上げられ、後期高齢者の低所得者への軽減特例は段階的に廃止となり、保険料が引き上げられます。
今こそ、「金持ち減税」を廃止して、税の本来の姿である所得の再分配機能を発揮させる時です。コロナ禍でも漫然と金持ち優遇の市民税減税を続けるのは許されません。減税分の91億円は、真に助けが必要な市民に活用してこそ、「庶民革命」と言えるのではないですか。
それでは、新年度予算に反対する主な理由を申し上げます。
不十分なコロナ対策、攻勢的なPCR検査を渋り、事業者支援は融資だけ
第1に、最優先で取り組まなければならない新型コロナ対策が、不十分なことです。
PCR検査については、ようやく高齢者・障害者の入所施設の職員に対する検査を、この3月に行うことになりましたが、対象者も実施機関も極めて限定的です。新規感染者を抑え込むためには、一斉検査を4月以降も定期的に行い、検査の対象者も医療機関や通所施設へと拡大することが不可欠です。
市長は「感染状況に応じ、必要な場合には的確に検査を実施する」と答弁しましたが、予算案にはそのための経費は盛り込まれていません。感染拡大の兆候を早めにつかむ攻勢的な検査戦略を持ち、積極的な予算を組むことこそ必要です。
保健所・保健センターの体制強化についても、新年度は基本的に現状維持。正規職員の保健師は本庁に3名増えますが、16区の保健センターは一人も増えません。河村市長は、積極的疫学調査を誇示していますが、現場の職員さんの長時間労働に支えられたものです。感染対策の最前線で頑張る保健センターの体制を抜本的に強化すべきです。
中小企業への支援でも、融資以外の支援策は見当たりません。営業時間短縮や仕事の減少に苦しむ中小事業者に対しては、家賃補助など名古屋市独自の温かい支援策を設けるべきです。
市民病院を公立大学法人名古屋市立大学の付属病院化に、小学校給食の調理を民間に委託、学校の統廃合推進など公的責任を投げ捨て
第2に、市の事業を民間に差し出す「新自由主義」路線をさらに推し進め、市の公的役割を後退させる予算になっていることです。
東部医療センターと西部医療センターの市大病院化が強行されます。コロナ禍で公的医療機関の重要性が改めて認識されてきたのに、市直営の市立病院をなくすことは問題です。
図書館の指定管理者制度をさらに拡大しようとしています。昨年11月の図書館協議会の答申でも「指定管理者制度を、無条件で推奨しているということではない」とし、課題が示されました。市民的な議論もないまま、図書館への指定管理者制度拡大は認められません。
さらに、公立保育園の民間移管、小学校給食の調理業務の民間委託、北部療育センターの民間移管も容認できません。
小中学校の統廃合計画も、地域住民を置き去りに進められようとしています。国もようやく少人数学級の実現に動き出した今こそ、少人数学級で運営している小規模校の魅力にこそ光を当てるべきです。
文化庁の許可もないままの天守閣木造復元や2027年開業困難になったリニアに合わせた駅前開発など、行き詰まりの大型事業を見直せ
第3に、行き詰っている大型開発事業にしがみつく予算になっていることです。
2022年12月の完成を断念した名古屋城天守閣の木造復元に、一般会計から特別会計の貸し付けだけでも1億9300万円余が計上されています。その中身はすでに購入してしまった木材の保管や運搬費用です。文化庁が木造化を許可する見通しは立っておらず、無駄な支出だけが膨らんでいます。
名古屋駅前開発の前提であった、リニア中央新幹線の2027年開業は困難だとJR東海も公言しています。コロナの影響で名鉄は、名駅再開発計画を見直し、事業の方向性は2024年度を目途に判断するとしています。名古屋市が名駅通り西側に計画する地下通路の建設事業にも影響が出ることを当局も認めています。
これだけ状況が変化してきたのに、従来通りの多額な予算を大型開発事業につぎ込むことは認められません。
以上、予算に反対する理由を述べてきました。コロナ禍で市民のいのちと健康、生活と営業が脅かされているにもかかわらず、これまでの河村市長の路線をそのまま延長するだけの新年度予算には、到底賛成できません。
コロナ禍で苦しむ市民を支え、励ます市政を
いまこそ、名古屋市がその持てる力を、コロナ禍で苦しむ市民を支え、励ます施策に思い切って投入しましょう。日本共産党は、コロナ感染から市民のいのちと暮らし、福祉を守る市政を実現するとともに、リコール不正署名問題で、危機に瀕している名古屋の民主主義を取り戻すために、全力を尽くす決意を申し上げて、討論を終わります。
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