さはしあこ議員の個人質問:②災害時における要配慮者への個別支援計画の推進(2021年3月5日)
防災と福祉の連携による災害時における要配慮者への個別支援計画を
【さはし議員】3月11日で東日本大震災から10年となります。先日は、再び東北地方を震度6強の地震が襲いました。甚大な豪雨災害も、毎年のように発生しています。
災害で犠牲になるのはどのような方々でしょうか。亡くなられた方の多くは、高齢者や障がい者など支援や配慮を必要とする方々でした。
東日本大震災で亡くなった方の約6割以上が60歳以上、障害者の死亡率は住民全体の2倍以上です。倉敷の水害では真備地区で亡くなった51名のうち9割が高齢者、要支援・要介護認定者は、全体の4割です。熊本豪雨では犠牲者65名の約7割が70歳以上でした。
防災の推進に尽力されている東京大学の片田敏孝教授は「防災の本質は『人が死なない』こと」と強調し、「災害犠牲者の多くが要配慮者で占められる問題は災害のたびに指摘されます。防災において最も重要なことは、災害犠牲者を出さないことです。犠牲者の多くが要配慮者で占められる事実があるのであれば、要配慮者の避難問題は、わが国の防災において最重要課題のはず」と指摘しています。
まず一般の人たちの避難計画があり、そのうえで配慮や支援を要する方々の避難計画を考える、のではなく、一人も犠牲者を出さないためには、亡くなるリスクが高い人から救う、と発想を転換することが必要だと思います。
国も、東日本大震災の教訓を踏まえて、平成25年に「災害時要援護者の避難支援ガイドライン」を大幅に改定し、自分一人で避難が困難な人を支援するために「避難行動要支援者名簿」の作成を自治体に義務づけ、その名簿を活用した「個別計画」を作成するよう求めています。本市においては、個別支援計画の作成は、昨年度末において、全体の約16.6%とお聞きしています。
本市における個別支援計画の作成は、町内会や自治会など地域が主体となって、自発的、自主的に避難が困難な住民を助ける「助け合い仕組みづくり」の中に位置づけられています。ところが、計画づくりに取り組んでいる町内会・自治会は約4割程度にとどまっているとお聞きしています。
ある自治会長さんは「最近は、役員を引き受けてもらうことさえ大仕事。役員の高齢化も問題。マンションに引っ越してきた新しい住人が町内会に加入しない。自治会・町内会運営が困難なっている」と言われます。計画の作成を従来の地域コミュニティだけに頼って、果たしてできるのでしょうか。
また、地域の方にもお話しを伺うと「とても作れない。それどころか、避難所が市境にあるため、隣接する市町村から避難してくる方の対応や指定避難所の中学校は、2つの学区からの避難が想定されているのに、今、災害が起きたら大変なことになる。やらなくていけないことはわかっているけど。」と言われました。計画づくりまで、とても手が回らないのが実情です。
避難時に、支援が必要な方は、施設利用者や在宅介護や医療ケアが必要な方に加え、実際は支援が必要なのに避難をあきらめてしまっている方など、避難行動要支援者名簿には載っていない方も少なくありません。コロナ禍の下、感染症対策の配慮が特別に必要な方々もみえます。きめ細やかな一人ひとりに寄り添った具体的な個別支援計画をつくり、さらに、訓練までつなげ、実効性のあるものにしていくことが、誰一人として取り残さない支援につながります。
最も亡くなるリスクの高い方々の個別支援計画を町内会や自治会などの地域に委ねるには、限界があります。
そこで、国も、災害対策基本法を見直し、自治体に「個別避難計画」を義務づけ、計画づくりを支援するために、福祉関係者などの協力に対し、謝礼金を支給するなどして推進しようとしています。
兵庫県や大分県別府市では、個別支援計画を作成する過程で、福祉と防災を連携させ、実態にそくした避難計画になる取り組みを進めています。別府市の取り組み、いわゆる「別府モデル」は、ケアマネージャーや相談支援専門員など福祉関係者が、平時の「ケアプラン」に加え、災害時における避難行動を記入した「災害時ケアプラン」を同時に作成しています。要支援者一人当たり7千円が専門職側に支給されます。「災害時ケアプラン」の中には、「緊急の持ち物」「避難行程」「サポート人数」など当事者が必要なことがきめ細かく記入されています。さらに、作ったプランを地域の防災訓練で検証し、改善していき、より実効性の高いものにしていくというものです。
そこで、お尋ねします。災害で一人も犠牲者を出さない名古屋にするためには、支援が必要な人々一人ひとりの個別計画づくりが、欠かせません。本市の個別支援計画づくりがすすまない理由をどのように捉えていますか、また、何が問題だとお考えですか。
国の流れや他都市の取り組みからも、「防災と福祉」の連携が、カギを握ると思います。
防災と福祉の連携による、災害時における要配慮者への個別支援計画づくりをする予定はありませんか。防災施策を統括する防災危機管理局長にお尋ねします。
関係局とともに検討を進めていきたい(局長)
【防災危機管理局長】要配慮者への個別支援計画の作成は、高齢者や障がいのある方などの避難支援の仕組みや安否確認の方法などをそれぞれの地域で行う「助け合いの仕組みづくり」事業を通じてすすめている。介護に関する専門的な知識がないことや地域内での活動の担い手となる人材が不足していることなど、地域住民だけでは対応が困難なケースがあるという課題がある。
要配慮者への対策は、災害対策基本法の改正が予定され、新たに個別避難計画の作成について取り組みの充実が求められること、また福祉専門職の参画を想定されることなどの方針が示されている。
市では、国の方針を踏まえ、要配慮者の避難の実効性確保に向けた実施準備を着実に進めるため、全庁的な対策ワーキングを立ち上げた。防災と福祉の連携による要配慮者への対策も、そのワーキングの中で健康福祉局を始めとする関係局とともに検討を進めていきたい。
平時と災害時の支援を一体的に取り組む個別支援計画づくりを(要望)
【さはし議員】防災危機管理局長から、地域住民だけでは困難という課題を認識されており、その対応策として「全庁的な対策ワーキングを立ち上げ、防災と福祉の連携による要配慮者への対策についても健康福祉局を始めとする関係局とともに検討を進めていく」とお答えいただきました。まさに、統括局としての役割であり、大変心強く思いました。
高齢者や障がい者など支援を必要とする方々を優先的に救うためにも、高齢者の介護に携わっているケアマネージャー、障がい者を支えている相談支援員など、日常的に支援が必要な方をよくわかってみえる福祉の専門職のみなさんなど協力していただける人材を広げ、その貴重なネットワークを活用し、支援計画づくりを早急に進めていただきたいと思います。統括局である防災危機管理局が、引き続きイニシアティブを発揮して関係局に働きかけていただくことを期待します。
また、福祉と防災の連携をすすめるにあたっては、日頃から、高齢者や障がい者の福祉施策に取り組んでみえる健康福祉局の存在が重要です。
社会福祉協議会が策定した「なごやかスタッフ」に向けた防災マニュアルの中に、避難経路などの確認事項も盛り込むなど、福祉に携わる方もすでに防災の担い手となっているといえます。そうした方々こそが、さらなる防災の推進力です。平時と災害時の支援を一体的に取り組む個別支援計画づくりを展開していただく必要があるということを申し上げて質問を終わります。