2021年2月議会
さいとう愛子議員の個人質問:①敬老パスの利用回数制限に同意が必要か(2021年3月6日)
敬老パスの利用回数制限について さいとう愛子議員
回数制限にかかる同意は必要ない
【さいとう議員】敬老パスの対象交通機関が来年2月からJR、名鉄、近鉄に拡大されます。同時に三重交通や名鉄のバス路線にも拡大される予定です。より多くの高齢者の社会参加を促進し、福祉の増進を図るうえで前進であり、大いに歓迎します。
現在、その準備として、2月から順次対象者約8万人に、「敬老パスが変わります」というパンフレットと、「敬老パスの更新手続きのご案内」と「同意書・口座登録票」が送られています。パンフレットでは、来年2月からの対象交通の拡大をお知らせし、制度の変更点を説明していますが、市が設置したコールセンターには連日、問い合わせがあり、多いときで1000件を数えるとお聞きしました。
問い合わせが多いのは、「同意書」についてです。
高齢者に求めている同意事項は3点あります。うち2つは、個人の乗車料金と利用回数を確認するため乗車実績を名古屋市が取得することと、対象交通事業者及びカード発行事業者が名古屋市に乗車実績を提供することで、私鉄などの利用が償還払いであることから、必要な同意と考えます。ここは丁寧な説明が必要です
問題は、3つ目にある同意、書かれている内容は「私が敬老パスの利用上限回数を超過した場合、敬老パスの利用が制限されること」ということに同意を求めているという点です。
私は、市民からこの点について問い合わせを受けました。「利用回数制限の項目にも同意しないと敬老パスは使えないのか」「730回の制限があるのは知っているが、改めて聞かれると、この部分だけ線を引きたくなるそれで提出してもよいか」「コールセンターにかけたが、とにかく出してくださいと言われるだけで、理由の説明はなかった」などの声が寄せられています。
敬老パス条例には、利用回数制限に同意を求める条項はどこにもありませんが、あらためて市民一人ひとりに同意を求める根拠は何ですか。この項目に例えば線を引いて送り返したらどうなるのですか。敬老パスは更新されないのですか。
回数制限があることの確認で、民間事業者の利用実績を取得することに同意すれば敬老パスは利用できる
【健康福祉局長】2020年2月定例会で敬老パス条例の改正を議決、2022年2月から名鉄、近鉄、JR東海の鉄道への拡大と730回の利用上限設定を実施する。名鉄パス及び三重交通の路線バスへの拡大はこの2月定例会で条例改正の予定です。
実施に向けた準備として、現在、敬老パス利用者約33万人かち順次「同意書・口座登録票」を取得する業務を進めている。このうち、同意書の取得については、対象交通拡大及び利用上限設定の実施にあたり、利用回数の集計及び運賃負担金の支給を行うために必要となる乗車実績を、本市が各交通事業者等から取得することに対して、利用者本人に同意していただくことが第一の目的です。
利用上限設定はすべての利用者に等しく適用されるが、超過した場合に敬老パスの利用が制限されることの理解をいただき、同意のうえで利用いただくことが、円滑な制度運用につながると考え、同意書に利用上限回数を超過した場合の利用制限について同意いただく項目を設けた。
したがって、利用回数の集計と運賃負担金の支給に必要な乗車実績の取得にかかる事項のみ同意された場合でも、利用上限回数730回の中で、敬老パスの利用は可能です。
利用回数制限の財政的根拠もなくなった今、導入は延期を
【さいとう議員】そもそも敬老パスの利用回数を制限したのは、敬老パスにかかる費用を暫定上限額145億円以内に抑えるためでした。今年度は、コロナ禍で利用が大きく落ち込み、敬老パス事業費は47億円余が減額補正され、暫定上限額を越えない予想となっています。来年度についても、敬老パスの予算額は125億円余が計上されて、暫定上限145億円と20億円もの開きがあります。利用回数の制限を今、設けなくても少なくとも、今後数年間は暫定上限額を超えるおそれは、ないのではありませんか。
コロナによる影響がいつまで続くのか、緊急事態宣言が解除された今も、外出自粛は続いています。利用回数制限の導入を決めた一年前とは敬老パスを取り巻く状況が様変わりし、利用を制限する財政的根拠もなくなりました。いま、利用回数の制限を急ぐ必要はありません。むしろ必要なのは、コロナ収束後の敬老パス利用促進策ではないですか。
敬老パスの利用回数制限については、来年度からの導入はいったん中止・延期し、その間に、あらためて利用回数制限が必要かどうか再検討すべきではありませんか。
今後を見通すことは困難だが、議決されたことを重く受け止めている
【健康福祉局長】新たな敬老パス制度の目的は、地域や個人ごとの利用の差を解消し、より多くの方にとって使いやすく、公平で持続可能な制度とすることであり、対象交通の拡大と利用上限の設定は、この目的の達成のために必要なものです。
新型コロナウイルス感染症の影響により、現時点では、敬老パスによる市バス・地下鉄等の利用者数は、前年度と比較して減少しているが、新型コロナワクチンの高齢者への接種に関する情報が国から示されるなど、利用者数の回復につながる要因もあり、今後の利用者数を正確に見通すことは困難な状況です。
こうした状況ですが、今回の対象変通の拡大と利用上限の設定は、2020年2月定例会で議決を賜っており、そのことは非常に重いことと受け止めております。
利用回数制限への同意は削除を、利用実績も見込めないままの導入は見送りを(意見)
【さいとう議員】個人の乗車実績の取得にかかる事項のみ同意していただけば、敬老パスの利用は可能といわれ、この点は確認しました。
「利用回数が制限される」ことに同意を求める文言は、必要ないということなので、今後送付する同意書から、削除されることを求めます。
来年度からの導入をいったん中止・延期し、再検討を求めましたが、「新型コロナウイルス感染症の影響により、今後の利用者数を正確に見通すことは困難」といわれました。そうであるなら、よけいに利用実績を見極めてから導入するとし、来年からの実施については延期すべきだと申し上げて、敬老パスについては終わります。