2021年2月議会

さいとう愛子議員の個人質問:②厚生院の縮小・廃止はやめなさい(2021年3月6日)

特養の待機者が数千人もいるのに廃止することは認められない
【さいとう議員】昨年12月の「広報なごや」に「厚生院介護保険施設 入所申し込み受付終了」と小さな記事が載り、特別養護老人ホームの新たな入所の受付を行わないことが市民に知らされました。
 厚生院は、1963年に開設した、特別養護老人ホーム・救護施設・附属病院の3つの機能を有する市立の複合施設です。市内で唯一の直営の特養には、現在233人が入所しています。
 その入所者の家族に、11月17日付で突然、「今後について(重要)」のお知らせが郵送されました。そこには厚生院の特養について「将来の廃止を視野に入れて、規模の縮小を図る」と書かれていました。
 受け取った家族からは「心配で仕方ない」「説明もない」などの声があがっています。私も、厚生院に家族が入所できた方からお話を聞きました。「2018年に認知症が重くなり市外の病院に入院したが、入院後ひと月もたたないうちに、特養へ入所するようにと言われた。特養の入所申請を10か所以上行ったが、いずれも断られ困っていたところ、厚生院に申し込み、約4か月後に入所できた。認知機能の低下は進んでいると思うが、併設の病院で薬を処方していただけるので、ここ1年はコロナで顔も見にいけないが、安心している。やっとほっとしていたら、廃止するとの手紙がきて、ものすごく心配です」と言われました。
 厚生院については、財政福祉委員会の所管事務調査で今後の方向性が示されましたが、廃止の議決は何ら行われていません。「第8期高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画『はつらつ長寿プランなごや2023』」案の概要版には、参考資料として「厚生院特別養護老人ホーム及び介護療養型医療施設の今後について」が(案)として掲載され、そこには、特養について、「段階的な定員縮小と令和10年の廃止予定」とあります。まだ(案)の段階なのに、廃止が決まったかのようなお知らせを送るのは、入所者と家族の不安をあおるだけで問題ではないでしょうか。
 なにより、厚生院について、いま規模の縮小や廃止をすべき時ではありません。
 第一に、特養の待機者がまだ大勢いるからです。特養への入所待機者は、2020年4月1日現在、市内で3,619人です。第8期「はつらつ長寿プラン」では、特養についての取り組み方針は、「厚生院の定員縮小の時期も考慮」するとして、これは2年後の2023年度末には100人縮小する計画ですが、このことを前提にしたうえで3年間の整備計画はわずか380床です。一方で、介護付き有料老人ホーム等の整備計画は400床です。介護付き有料老人ホームやサービス付き高齢者住宅などで特養を必要とする市民ニーズに応えきれるとは思えません。
 入所待機者が数千人規模で存在し、なかなか解消されないのに、市が率先して厚生院の特養の定員を減らしていいのですか。むしろ待機者解消のために積極的に活用すべきではありませんか。

 

特養は当院開設当時は3か所540床だったが今は120か所8800床に増えたので民間にゆだねる
【健康福祉局長】現在の厚生院が開設された昭和57年には、市内の特別養護老人ホームは厚生院を含め3か所540床のみという状況であり、厚生院が担う役割は非常に大きなものであった。しかし、民間の施設整備を進めた結果、2020年度の市内の特別養護老人ホームは120か所8,800床まで増加している。このような状況の中、厚生院特別養護老人ホームが公的施設として担ってきた役割は民間の施設へ委ねることとし、将来の廃止を視野に規模の縮小を図るとの取組方針を定めた。
 なお、特別養護老人ホーム入所申込者のうち、早期に入所が必要な方の待機が解消されるよう、第8期高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画では、特別養護老人ホームの整備目標を、入所申込者の状況や新規施設の開設状況、既存施設の空床の状況等の他、厚生院の定員縮小の時期も考慮し、適切に設定した。

セーフティネット機能は他の施設では代替できない
【さいとう議員】第二に、セーフティネット機能は他の施設では代替できないからです。
 2019年にまとめられた「厚生院のあり方検討にかかる基礎調査」によると、厚生院の特養は、「身元引受人のいない人」を21.0%、「生活保護受給者」を26.3%も受け入れています。市内の特養では、それぞれ1.0%、4.7%です。厚生院は、民間の特養に比べて、家族からの支援が期待できない方は約20倍、生活保護利用者では5.6倍も積極的に受け入れているのです。
 また、この調査では、居宅介護支援事業所が厚生院に対して今後力を入れてほしいと思うことは、「医療依存度の高い方の受け入れ、緊急時の対応、困難事例の対応」との回答が多くよせられました。医療の対応ができる特養も増えつつあるとはいえ、まだまだ十分ではありません。医療・介護・福祉の機能を兼ね備えた公立施設だからこそ、セーフティネット機能が発揮できているのではないでしょうか。
 そこで、お聞きします。
 厚生院は、公的役割を果たし、身寄りのない人や医療的ケアが必要な人などを積極的に受け入れてきました。厚生院が果たしているセーフティネット機能は行政としてこれからもますます必要になると考えますが、いかがでしょうか。

セーフティネットの機能は、民間の施設でも担っていただいている
【健康福祉局長】厚生院特別養護老人ホームは、これまで、公立施設として、医療的ケアの必要な方、身寄りの無い方、低所得の方などを多数受入れているセーフティネットとしての役割を担ってきた。
 一方、民間の施設整備を進めた結果、医療対応型特別養護老人ホームはもとより、他の施設でも医療的ケアが必要な方の入所を受け入れていただいている。
 また、市内の居宅介護支援事業所に行ったアンケートでは、「身元引受人がいない」等といった理由で特別養護老人ホームの入所先に困るといった回答は見受けられず、民間の施設でもこれらの方の受入れに対応いただいている。
 これらのことから、厚生院が担ってきたセーフティネットの機能は、民間の施設でも担っていただいている。

3600人以上の入所待機者の中で、医療的ケアが必要な方は640人。受け入れ可能な医療対応型特養は2施設しかない(再質問)
【さいとう議員】第8期介護保険事業計画に向けて、「特養に早期に入所が必要な方の待機が解消されるように」整備目標を設定している、と言われました。3600人を越える入所待機者がいるんです。その中で、医療的ケアが必要な方の待機者は640人だと聞いています。そういう方が入る、医療対応型特養は、たった2施設しかない現状です。こういう現状なのに、なぜ、厚生院の縮小を計画したのですか。

医療対応型特別養護老人ホーム以外の施設え受け入れている
【健康福祉局長】現在、医療対応型特別養護老人ホーム以外の施設でも、医療的ケアが必要な方の入所を受け入れていただいている。
 第8期高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画における、特別養護老人ホームの整備目標は、厚生院の定員縮小も考慮して設定しており、医療対応型特別養護老人ホームの整備についても検討している。

現場は必死で入所先を探している。緊急時・非常時に受け入れてくれる公的機関としての厚生院は必要。(意見)
【さいとう議員】特養で医療的ケアが行えるようになっても、なお640人方が入所を待っておられ、中には、医療依存度の高い方もおられます。
 居宅介護支援事業所から、特養の入所先に困るとの回答は見受けられなかったといわれましたが、そういう事業者の方が期待しているのは、緊急時・非常時に受け入れてくれる公的機関としての厚生院です。現場では必死で入所先を探しているのです。
 今まで厚生院の果たしてきた役割は非常に大きいと言われましたが、これからも、セーフティネットの役割を担う厚生院はあらためて重要です。
 医療・介護・福祉の機能を兼ね備えた公立施設だからこそ、セーフティネット機能を発揮している、この厚生院を縮小廃止すべきでないと申し上げ、全ての質問を終わります。

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