2021年6月議会

田口一登議員の個人質問:②小中学校の統廃合計画(2021年6月24日)

住民無視の小学校の統廃合はやめよ      田口一登議員

高坂小の統合先の液状化や鉄塔など安全性が課題
【田口議員】「ナゴヤ子どもいきいき学校づくり計画」にもとづく小中学校の統廃合計画について質問します


「子どもいきいき学校づくり計画」では、教育委員会が対象校ごとに個別プラン、すなわち統廃合計画案を作成し、有識者でつくる「子どもいきいき学校づくり推進審議会」へ個別プランを諮問し、答申を受けるというステップを踏んで進めるとされています。これまでに、港区の野跡小学校と稲永小学校の統合に関する個別プランが、今年2月5日の審議会に諮問され、次の4月15日の審議会で答申が出されました。
 一方、天白区の高坂小学校をしまだ小学校に統合する個別プランについては、昨年12月14日の審議会に諮問されて以降、今年2月5日、4月15日、5月25日、そして6月17日と、都合5回にわたって審議が行われてきましたが、いまだに答申が出されていません。
 高坂小の個別プラン=統廃合計画案の審議に相当な時間を要しているのはどうしてか。私は5月25日の審議会を傍聴させていただきましたが、議論の焦点になっていたのは、統合予定場所であるしまだ小学校の立地の安全性でした。パネルをご覧ください(左図)。お手元にも配布しました。これは、教育委員会が審議会に提出した資料をもとに作成したものです。しまだ小学校は、敷地の東側に「液状化発生の可能性が高い」エリアがあります。敷地の南西角は、土砂災害警戒区域にかかっています。この崖の上に、写真のように送電線の鉄塔が立っているのです。
 液状化と鉄塔の問題は、審議会でくり返し議論になり、5月25日の審議会では、鉄塔の安全性については電力会社の社員も招いて熱心に議論されていました。
ところが、審議会での議論に長時間を要している統合場所の液状化と鉄塔の問題について、教育委員会が諮問した個別プランでは一言も触れられていません。教育長、これはどうしてですか。
 液状化や鉄塔については、個別プランを作成する段階で、教育委員会が保護者・住民を対象に開いた説明会でも、参加者から懸念する意見が出されていました。説明会で出された保護者・住民の意見を受け止め、真摯に対応する姿勢が教育委員会にあれば、個別プランにおいて、統合場所の立地の安全性に課題があることを明記されたと思うのです。
 しかし、教育委員会は、保護者・住民への説明会を、形式的な手続きとしてしか捉えていなかったのではないか。だから、個別プランでは、液状化や鉄塔の問題が抜け落ちてしまい、数度にわたる審議会で大論議になっているのではありませんか。お答えください。

審議会において現地調査が行われ、それを踏まえて審議が進められている(教育長)
【教育長】しまだ小学校では、現在約400人の児童が学校生活を送っている。高坂小学校としまだ小学校の統合に関する個別プランは、説明・意見交換会でいただいた意見も踏まえ、しまだ小学校の校舎等を全面的に取り壊し、新築する方向性を示している。しまだ小学校の状況は審議会で現地調査が行われ、それを踏まえて審議が進められている。

保護者アンケートで63%が反対。住民の理解は得られていない
【田口議員】高坂小の統廃合計画については、私は、保護者や地域住民の理解が得られていないと考えます。それは、河村市長に直接提出された「高坂小学校の存続を求める署名」が、4500筆を超えて集まっていることに示されています。さらに、高坂小のPTA役員が昨年7月、保護者を対象に行ったアンケートでも、統合に反対が63%にのぼり、賛成は12%しかありませんでした。
 教育長は、高坂小の統廃合計画案について、保護者や地域住民の理解が得られているとお考えですか。お答えください。
 教育委員会が審議会に諮問した個別プランでは、「審議会からの答申後6か月程度をかけて保護者・地域への説明・協議を行い、教育委員会が統合を決定する」とされています。
 本市のこれまでの学校統廃合は、保護者や地域住民の協議によって合意形成を図るという手順で取り組まれてきましたが、こうした「協議による合意形成」は進みませんでした。そこで、「子どものことを第一に考え、教育委員会が主体的に進める」という考えのもとに策定されたのが、「子どもいきいき学校づくり計画」であります。学校統廃合が「子どものことを第一に考え」たものなのかは、この後伺いますが、「教育委員会が主体的に進める」というのは、保護者や地域住民の理解が得られなくても、教育委員会が統合を決定するということなのでしょうか。
 教育長、文科省が2015年に策定した学校統廃合を推進するための「手引き」でさえ、「地域住民や地域の学校支援組織と教育上の課題やまちづくりも含めた将来ビジョンを共有し、十分な理解や協力を得ながら進めていくことが大切」と明記しています。「十分な理解や協力」が学校統廃合の留意点とされているのです。ですから、高坂小の統廃合計画については、保護者や地域住民の十分な理解を得ることなしに、教育委員会が一方的に決定してはなりません。私はこう考えますが、見解を求めます。

審議会からの答申後、保護者・地域への説明と協議を行いたい(教育長)
【教育長】高坂小学校としまだ小学校の統合には、それぞれの小学校の保護者や地域住民から様々な意見をいただいている。この統合に関する個別プランは、現在、子どもいきいき学校づくり推進審議会で審議している。審議会からの答申後、保護者・地域への説明と協議を行いたい。

小規模校がふさわしくないという実証的な根拠はあるのか
【田口議員】「子どもいきいき学校づくり計画」では、小規模校の課題として、「様々な考え方や価値観に出会い、社会性や協調性、コミュニケーション能力を伸ばす機会が限られる」とか、「クラス替えが困難であるため、人間関係の固定化や男女比の偏りが生じやすい」、「クラス同士が切磋琢磨する教育活動ができない」などをあげています。これは、文科省の2015年「手引き」の引き写しにすぎません。
 小規模校では「人間関係が固定化する」とか、「切磋琢磨できない」などのデメリットがあると耳にするたびに、私は、自らが受けてきた教育環境が否定されるような不愉快な気分になります。私は、岐阜県の山村で生まれ育ちまして、小学校は6年間、28人の一クラス、中学校も3年間、39人の一クラスでした。加えて保育園も、当時は神社の社務所を借りて保育を受けていたのですが、39人の一クラスで2年間過ごしました。合わせて11年間、ずっと一クラスでした。
 学校では、ケンカをしても、お互いのことをよく知っているので、すぐに仲直り。勉強が遅れがちな子には、進んでいる子が教え合う。上級生と下級生が一緒に遊ぶ中で、教えたり、教わったりしました。保育園時代からの39人は、小学校は2つに分かれましたが、同じクラスでしたので、当然ながら人間関係は固定化します。でも39人の同級生は、すでに4人亡くなっていますが、生涯の友として固い絆で結ばれています。
 こうした教育環境で育ちましたので、小規模校は「子どもにとってふさわしくない」とするのは、私は、一方的な思い込みや断定といわざるをえません。
 そこで教育長にお尋ねします。小規模校はふさわしくないとするのなら、それを裏付ける教育学上の研究論文など実証的な根拠はありますか。

小規模校には良さも課題もある(教育長)
【教育長】小規模校には「一人ひとりの児童・生徒にきめ細かい指導がしやすい」といったよさもある一方で、「人間関係の固定化が生じやすい」、「体育の球技などの集団学習などに制約が生じる」といった課題がある。こうした課題を解決するため、ナゴヤ子どもいきいき学校づくり計画は、学識経験者や学校関係者などから意見を聴取し、策定した。

小規模校はふさわしくないとする実証的な根拠はないことがはっきりした(意見)
【田口議員】私は、「小規模校がふさわしくないとする実証的な根拠はあるのか」とお尋ねしましたが、教育長は、実証的な根拠を示すことができませんでした。
昨年12月14日に開催された「子どもいきいき学校づくり推進審議会」では、ある委員から「盛んに学校の規模をおっしゃっていますけれど、このぐらいの規模がいいよという研究論文とかオフィシャルなものは出ているのでしょうか」という問いかけがありました。これにたいして専門家の委員が答えておられます。「実はこれまで何度も国立教育政策研究所をはじめとしてそういう調査をしているのですが、結論に中々至らないんです」と。専門家の方も実証的な根拠を示せない。
 小規模校はふさわしくないとする実証的な根拠はないということがはっきりしました。


統合場所の立地に課題がある計画は白紙に戻すべき
【田口議員】教育委員会が審議会に諮問した個別プランの中では、統合校の新設は示してありますが、統合場所の液状化エリアの存在や土砂災害警戒区域の鉄塔については明示されていません。


 それにもかかわらず、審議会で数回にわたって議論になったのは、保護者や住民のみなさんが、審議会への請願や口頭陳情の中で、液状化と鉄塔の危険性を訴えられたからです。審議会の委員のみなさんは、住民の訴えを真摯に受け止め、時間を費やして議論されています。しかし、教育委員会は、「液状化の地盤調査はやっていない」、「統合校の設計の中で対策を検討する」、「鉄塔の安全性は法的にクリアしている」などと、文切り型の答弁をくり返すだけであります。こちらのパネルをご覧ください(右図)。お手元に配布した資料の裏面になります。これは、「高坂小学校を存続させる会」の方からいただいた資料です。ここに記されているように、高坂小学校は、「南だれの土地で日当たりがよく見晴らしも良好。周囲4面が道路となっていて学校全体が見渡しやすいため、明るく安心感の得られる好立地」であります。この立地のよい小学校を廃止して、立地に課題がある場所にあえて統合しようとするから、高坂小の保護者や住民は理解できないのです。審議会でも大論議になっています。
 教育長、液状化対策や鉄塔の安全性という「子どもいきいき学校づくり」とかけ離れた議論を審議会でしなければならないような統廃合計画案は、白紙に戻すべきではありませんか。お答えください。

審議会では現地調査が行われて審議した(教育長)
【教育長】子どもいきいき学校づくり計画では、学校統合を契機に安心・安全・快適な施設環境の確保を目指しており、審議会では現地調査が行われ、審議している。

統合如何に関わらず、巨大地震に備えた対応を(意見)
【田口議員】しまだ小学校敷地の液状化問題については、統合如何にかかわらず、いま通っている児童などの安全のために、速やかに地盤調査を行って、巨大地震に備えた対応を検討することを求めておきます。

答申後6か月程度で統合を決めるのか(再質問)
【田口議員】私は第1問目で、「高坂小の統廃合計画案について、保護者や地域住民の理解が得られていると考えているのか」とお尋ねしました。教育長の答弁は「様々なご意見をいただいている」というもので、理解が得られているとはおっしゃいませんでした。
 「子どもいきいき学校づくり計画」では、審議会からの答申後、「あらかじめ設定した目標期間を目処に、保護者・地域との協議を行います」とされています。
教育長、保護者や住民の理解が得られなくても、「あらかじめ設定した目標期間」、高坂小の個別プランでは、「審議会からの答申後6か月程度」とされていますが、答申後6か月程度で統合を決定するのですか。

答申を得たら、保護者・地域への説明・協議を行い、統合を決定する(教育長)
【教育長】個別プランでは、答申から統合決定までの期間を6か月程度としている。審議会から答申を得ましたら、その内容を踏まえ、保護者・地域への説明・協議を行い、統合を決定していく。

住民の理解を得なくても統合を決めるのか
【田口議員】6か月程度で決定するのは無理ですよ。
6月17日の審議会を傍聴された方によると、高坂小の個別プランについて、委員のみなさんから、「審議会での議論の熟度が低い」とか、「保護者や地域住民に理解が届いていない」、「子どもたちのためになるよう丁寧な説明が必要」など、慎重な意見が出されていたそうです。審議会では6か月程度かけても答申がまとまらないのに、保護者や地域への説明・協議の期間が6か月程度というのはあまりに短い。改めるべきです。
 今までの教育長はこの議場で、学校統廃合は住民の理解を得て進めると答弁されてきました。2019年の2月定例会でのわが会派の代表質問では、当時の杉崎教育長が「学校ごとの個別プランに基づいて丁寧に協議を重ね、関係する皆様の理解を得て、取り組みを進めてまいりたい」と答弁されています。
 河村市長は、今年2月定例会でのわが会派の代表質問で、「学校を一つなくすかどうかは、地域の問題に大変深くかかわっているので、よく考える。教育委員会には勝手に決めるなと言ってある」と答弁されました。
 鈴木教育長、あなたは勝手に決めるのですか。高坂小の個別プランについて審議会から答申が出れば、それをお墨付きにして、保護者や住民の理解を得なくても統合を決めるのですか。はっきり答えてください。

理解を得て進めるよう努力する(教育長)
【教育長】審議会からの答申を得たら、その内容を踏まえ、保護者・地域に対し小規模校の課題、統合の必要性や効果等をしっかりと説明し、丁寧に協議を重ね、関係する皆様の理解を得て取り組みが進められるよう努める。

保護者や地域住民の十分な理解が得られなければ、統合を決定してはならない(意見)
【田口議員】教育長は、「丁寧に協議を重ね、関係する皆様の理解を得て進める」と答弁されました。「理解を得て」と初めておっしゃった。それでは、理解が得られなければどうされるのか。
 私は、高坂小の個別プランについては、白紙に戻すことを求めますが、審議会から答申が出されても、その後の説明・協議で保護者や地域住民の十分な理解が得られなければ、統合を決定してはならないということを申し上げて、質問を終わります。

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