2021年11月議会

田口一登議員の個人質問②気候危機を打開する地球温暖化対策について(2021年11月26日)

カーボンニュートラルの表明もできないのか

田口一登議員

2050年カーボンニュートラルの表明を
【田口議員】

異常な豪雨、台風、熱波、干ばつ、森林火災、海面上昇など、気候変動の被害が世界でも、日本でもきわめて深刻になっています。国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)では、世界の気温上昇を産業革命前と比べて「1.5度に抑える努力を追求する」とする成果文書が採択されました。1.5度目標の達成のためには、2030年までに温室効果ガスの排出を2010年比で45%削減し、2050年までに実質ゼロにする必要があります。
 2050年までの二酸化炭素排出実質ゼロ、いわゆるカーボンニュートラルを表明した地方自治体は、環境省によると479自治体、人口では約1億1177万人(10月29日現在)にのぼっています。政令指定都市では、カーボンニュートラルを表明していないのは、名古屋市だけとなりました。これでは、本市が気候危機打開のスタートラインにさえ立てないことになります。
 河村市長は、地球温暖化に懐疑的な発言をされてきましたが、国連IPCC(気候変動に関する政府間パネル)が今年8月に発表した新たな報告書で指摘しているように、人間の影響が温暖化させてきたことには、もはや疑う余地はありません。市長も、市長選挙のマニフェストで、「ナゴヤ版カーボンニュートラルに全力投球」という公約を掲げ、「カーボンニュートラルを見据えた名古屋スタイルとして脱炭素の姿勢を打ち出す」と明記されました。
 だったら、2050年カーボンニュートラルをこの場で表明していただきたい。市長の答弁を求めます。

自動車産業など、経済と温暖化はよく考えて取り組まなければいかん(市長)
【市長】法律は、温室効果ガスの排出量と吸収量のバランスを言い、基本理念で、日本全体で取り組むという趣旨です。
 名古屋は、自動車をはじめとする産業界の皆さんのものすごい努力で支えられており、産業・経済と地球温暖化はよう考えて取り組まないといかん。
 私としては、脱炭素社会の実現に向けるとしても、市民の利便性や生活水準を落とさないように、自動車産業を始めとした事業者を大事にしていく気持ちです。

石炭火力発電からの撤退に対する市長の認識を問う
【田口議員】COP26では、CO2を大量に排出する石炭火力発電からの撤退が議題となり、議長案の「段階的な廃止」から後退したものの、「段階的な削減」で合意しました。2030年度の電源構成で約2割を石炭火力に頼り、国内9か所で石炭火力発電所の新増設を進めている日本政府に対しては、NGO「気候行動ネットワーク」から「化石賞」が贈られました。温暖化対策に後ろ向きとの烙印が押されたのです。
 愛知県内でもJERA(ジェラ)による武豊火力発電所5号機の建設が進められています。また、碧南火力発電所は、わが国で最大のCO2排出事業所であり、この発電所だけで日本全体の2%にあたるCO2を排出しています。
 わが党は、石炭火力の新増設と輸出を中止し、既存の石炭火力についても、2030年を目途に計画的に廃止するエネルギー政策に転換することが、脱炭素に真面目に取り組むかどうかの試金石であると考えています。
 市長、「脱炭素の姿勢を打ち出す」というのなら、石炭火力発電からの撤退を国に求めるべきではありませんか。

石炭火力は国が考えること(市長)
【市長】石炭火力発電については、国が考えられることです。共産党は原発推進なのかと思いました。原発は今の技術水準ではとてもむつかしいと思っている。

2030年度までの温室効果ガス削減・再生可能エネルギー利用目標を
【田口議員】すでに世界の平均気温は1.1度から1.2度上昇しており、破局的な気候変動を回避するために取り組める時間は長くありません。2030年までの10年足らずの間に、全世界のCO2排出を半分近くまで削減できるかどうか、ここに人類の未来がかかっています。
 2030年度までの温室効果ガスの削減目標について、政府が閣議決定した『地球温暖化対策計画』では、「2013年度比で46%削減」とされています。これはIPCCの報告書で示された基準年である2010年度比では42%削減であり、「2010年比45%削減」という全世界平均よりも低い、恥ずかしい目標と言わなければなりません。
 日本共産党は、「気候危機を打開する2030戦略」を発表し、この中では2030年度までに2010年度比で50%から60%削減することを目標にするよう提案しています。これは、日本政府が基準にしている2013年度比では54~63%削減になります。
 本市の『低炭素都市なごや戦略第2次実行計画』では、2030年度までの目標は、27%削減となっていますが、これは当然、見直されなければなりません。
 そこで提案します。2030年度までの温室効果ガスの削減目標は、2013年度比で50%以上という野心的な目標を設定しましょう。これは2010年度比でも50%以上の削減になり、世界標準を上回ります。環境局長の見解を求めます。
 わが党は、2030年度までにエネルギー消費を40%削減し、再生可能エネルギーで電力の50%をまかなえば、50~60%のCO2削減は可能だと考えています。
 日本の発電量における再生可能エネルギーの比率は22%であり、2030年度目標は36~38%と、EU諸国などと比べて立ち遅れています。東京都は、都内の温室効果ガス排出量を2030年までに50%削減することをめざして、再生可能エネルギーによる電力利用割合を50%程度まで高めることを表明しました。
 2030年度の再生可能エネルギーの利用目標については、東京都のように国の目標を大きく上回る意欲的な目標を設定すべきではないか。
 消費エネルギーを100%再生可能エネルギーで調達するRE100を本市が率先して実行し、2030年度までに市有施設のすべてに再生可能エネルギー100%電力の導入をめざす考えはないか。

住宅用太陽光発電設備の設置促進を
【田口議員】2030年度までのCO2半減を実現するためには、あらゆる分野で社会システムの大改革が必要ですが、ここでは具体的な対策について2点提案させていただきます。
 1点目は、住宅用太陽光発電設備の設置促進のための新たな手法です。
 名古屋市内では、太陽光が利用可能な再生可能エネルギーの8割以上を占めています。住宅などを対象にした太陽光発電の導入ポテンシャルは、環境省の再生可能エネルギー情報提供システムによると、本市では226万4千kWとされていますが、導入量は2020年度で25万kW余りであり、可能量の1割余りしか利用されていません。
 再エネ電力の固定価格買取制度の見直しなどによって、太陽光発電の新規導入量が鈍化する中で、東京都や神奈川県、札幌市などが、住宅用太陽光発電の設置費用が不要となる、いわゆる0円ソーラーの普及促進に取り組んでいます。
 0円ソーラーとは、たとえば事業者が初期費用を負担して、住宅に太陽光発電設備を設置し、発電した電力を住宅所有者に販売することで初期費用を回収するので、住宅所有者は初期費用ゼロで太陽光発電を設置できます。設置後、概ね10年間は電気料金の支払いが必要ですが、その後は、設備が住宅所有者に無償譲渡されます。自治体が事業者に補助金を支出することによって、初期費用をゼロにしたり、リース料金などを安くしたりして、補助が住民に還元される仕組みとなっています。
 環境局長、住宅への太陽光発電設備の設置を促進するために、本市でも設置の初期費用をゼロにする0円ソーラーを始めたらどうですか。

オフィス・店舗等の省エネルギー対策への支援を
【田口議員】2点目は、オフィス・店舗等の省エネルギー対策への支援です。
 本市では、CO2排出量の4分の1を、オフィス・店舗等からの排出が占めており、この分野での省エネルギーがCO2削減にとって大きなウエイトを占めます。
 本市には、中小企業が省エネルギー対策を実施するための資金も融資対象となっている環境保全・省エネルギー設備資金融資制度があります。この融資制度は、中小企業の公害防止対策を促進する制度として始まったものですが、1994年度からは、LED照明や高効率空調設備への入れ替え、ネット・ゼロ・エネルギー・ビル(ZEB)化など省エネ設備も対象になりました。しかし、省エネ融資での利用は、昨年度はわずか1件、累計でも27年間で11件にとどまっています。
 私は、オフィス・店舗等の省エネ投資を支援する事業の一つとして、この融資制度がもっと活用されるべきと考えます。
 この融資には利子にたいする補助もありますが、公害防止の場合は全額補助なのに、省エネの場合は半額補助です。省エネ投資を促進するために、省エネの場合も全額補助にすべきではありませんか。
 環境局は中小企業の省エネ対策を促進するために訪問相談を行っていて、省エネ対策に関する補助制度についての相談もあるようですが、本市独自の補助制度はありません。
 オフィス・店舗をはじめとして中小企業が取り組む省エネルギー対策にたいして、独自の補助制度を創設してはいかがですか。

目標を設定し、それを達成するための太陽光発電の導入促進策や中小企業の省エネルギー支援策を具現化し、実行計画に盛り込む(局長)
【環境局長】国の地球温暖化対策計画が2021年10月に閣議決定されたところで、今後、地方自治体向けの実行計画策定マニュアルが2022年1月を目途に示される予定です。市の実行計画は、国の計画やマニュアル等を踏まえ改定していくが、2050年の脱炭素社会実現や、2030年度に温室効果ガス排出量を46%削減することは、容易なものではない。
 計画策定は、単に国の目標値に向けて数字を積み重ねるのではなく、本市における脱炭素社会の実現とはどのような姿であるか、またそのために現在の社会や生活様式をどう変革させていくかなど、市民や事業者と議論を重ねる必要がある。
 来年度にシンポジウムを開催するなど、市民や事業者の意見もしっかり伺いながら、有識者会議などの議論を経て、温室効果ガス排出量や再生可能エネルギーの目標を設定するとともに、それらを達成するための太陽光発電の導入促進策や中小企業の省エネルギー支援策を具現化し、実行計画に盛り込んでいく。

省エネ融資の利子の全額補助は直ちに実施を(再質問)
【田口議員】2030年度の温室効果ガス削減目標や太陽光発電の設置促進、中小企業の省エネ対策支援などで具体的な提案を行いましたが、実行計画を改定する中で具現化していくとの答弁でした。
 そんな悠長なことでいのですか。世界はいま、2030年までに温室効果ガスを2010年比で45%削減しなければ、気温上昇を1.5度以内に抑えることはできないと、取り組みを加速させようとしています。2030年までといったら、あと9年しかない。強い危機感をもって、できることから具現化してくことが必要ではないでしょうか。
 その一つが、環境保全・省エネルギー設備資金融資の利子補助を、省エネルギー対策も全額補助にすることです。中小企業にとって省エネは、光熱費や燃料費のコスト削減になりますが、利子の負担がなくなればメリットがさらに大きくなる。省エネ投資への意欲を高めるでしょう。
 環境局長、省エネ融資の利子に対する全額補助をただちに決断していただきたい。いかがですか。

市として効果的な支援策を総合的に検討する(局長)
【環境局長】温室効果ガス排出量を削減するためには、中小企業の省エネルギー支援策は必要不可欠なものであると認識している。省エネルギー支援策の1つである省エネ融資制度は情勢に合わせて対象事業を増やすなど制度の見直しを行ってきた。
 今後も、中小企業の意見を聴きしながら、市として効果的な支援策を総合的に検討していく。

改定する実行計画の目標は2050年カーボンニュートラルをめざすことが前提でいいか(再々質問)
【田口議員】省エネ支援策を総合的に検討するとのことですので、省エネ融資の全額利子補助や独自の助成制度を検討し、速やかに実施されるよう要望させていただきます。
 さて、石炭火力で先ほど市長は原発のことを言われました。共産党は、原発は直ちにゼロにする、石炭火力は2030年をめどに段階的に廃止をするという立場です。そうしてこそ再生可能エネルギーへと転換できるという立場ですのではっきりと言っておきます。
 2050年カーボンニュートラルですが、市長は、自動車産業を大事にしなければいけない、脱炭素と経済、両方やっていかないといけないということを言われました。脱炭素化の推進は、経済の悪化や停滞をもたらすものではありません。それどころか、新しい雇用を創出し、地域経済を活性化し、新たな技術の開発など持続可能な成長の大きな可能性をもっています。
 自動車産業でも、脱炭素化で失われる仕事がある一方で、電気自動車の部品メーカーのように仕事が増える部門もあります。もちろん、産業や雇用の転換のためには、国や自治体が資金などの支援をしなければなりません。脱炭素と経済成長を同時にすすめるグリーン・リカバリーが世界の流れですので、カーボンニュートラルの表明に躊躇は無用です。
 そのうえで、環境局長に伺います。地球温暖化対策推進法の改正では、2050年の脱炭素社会の実現をめざすとされましたので、改定される本市の実行計画も、2050年カーボンニュートラルをめざすことが前提になると考えますが、それでいいですか。

脱炭素社会の実現という基本理念や、国の計画を反映した実行計画に改定する(局長)
【環境局長】地球塩暖化対策の推進に関する法律は、基本理念で脱炭素社会の実現を掲げ、都道府県及び市町村は、国の地球温暖化対策計画に即した地方公共団体実行計画を策定する、とされている。名古屋市も、脱炭素社会の実現という基本理念や、国の計画を反映した実行計画に改定していく。

この場で、名古屋市もめざすと表明せよ(再々再質問)
【田口議員】法が掲げる「脱炭素社会の実現」とは、2050年までの二酸化炭素排出実質ゼロ、カーボンニュートラルのことです。
 市長にお尋ねします。本市でも、2050年カーボンニュートラルをめざして実行計画が改定されますが、改定を待たずに、カーボンニュートラルを表明していただきたい。そうしてこそ、改定される実行計画が、魂を込めたものになるでしょう。
 2050年カーボンニュートラルの表明は待ったなしです。市長、この場で、名古屋市もめざすと表明しませんか。

 

環境省が、十分に温暖化対策が取られず世界の二酸化炭素排出量が増加を続けた場合の未来を予測した動画「2100年 未来の天気予報を作っています。気候変動政府間パネル(IPCC)第5次評価報告書のRCP2.6とRCP8.5のケースを想定し、また、最新の気象状況等を踏まえ、産業革命以前からの気温上昇を1.5℃に抑える目標を達成できなかった2100年の夏の天気予報を紹介します。

エネルギーを減らすと生活が苦しくなる。ガソリンエンジンを悪に言うのはどうか(市長)
【市長】CO2というか、エネルギーを減らすと市民生活においてなかなかの苦しさになるわけです。科学的にもそうです。特にこの地域は自動車産業によって助けられていることは事実です。ガソリンエンジンがみんな悪であるかのように簡単に言っていいものか。現実にそうは簡単にはならないと思いますので、そこを大事にしながら取り組んでいきたい。

市長がカーボンニュートラルを表明しないのは残念なこと。国の目標を上回る50%以上の削減目標を設定し、その達成に向けて、名古屋が先導する意気込みを示す計画を(意見)
【田口議員】エネルギーを減らしていくというのでなく、もちろん省エネはエネルギーを減らすことだが、省エネは企業にとってもコスト削減になる、市民にとっても断熱などで快適な生活が送れるようになる。エネルギーは原発や石炭から再生可能なエネルギーに転換しようと。これが脱炭素、カーボンニュートラルの方向なんです。市長が表明されないのは極めて残念です。
 最後に、環境局長に要望します。実行計画の改定にあたっては、国の目標を上回る50%以上の温室効果ガス削減目標を設定し、その達成に向けて、脱炭素型の社会システムへの改革を、名古屋が先導するという意気込みが伝わるものにしていただきたい。

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