後期高齢者医療広域連合議会 2022年2月定例会 条例案質疑(伊藤建治春日井市議・2022年2月14日)
窓口2割負担を押し付けながら、低所得者に負担増をおしつける保険料改定だ 伊藤建治議員(春日井市)
保険料率改定の問題点について
【伊藤議員】今回の保険料率改定は三つポイントがあります。
①賦課限度額が64万円から66万円に引きあがる。②所得割総額と均等割総額の比率が、55:45から、54:46へと改まる。③前期の剰余金のうち125億円を保険料上昇抑制のために使う。
この結果、所得割率は9.64%から9.57%へ0.07%の引き下げ。被保険者均等割額は4万8765円が4万9398円へと633円の値上げ。その結果一人当たり保険料は9万2191円が9万1117円へ1074円の値下げとなったとのことです。
被保険者均等割額も引き下げとなっていれば100点満点だったのですが、ここが上がっているために従前比で値上げの影響を受ける被保険者もおり、この点が残念です。以下質問をいたします。
剰余金活用が全額ではなく、1人1000円程度なのはなぜか
【伊藤議員】剰余金は、算定された軽減前保険料額から一人当たり1000円程度引き下げられるように活用をしたとのことです。なぜ1000円か。下げられるだけ下げればいいのではないかとも思いますが、これについての考え方をお尋ねします。
今後の改定時のための基金の積立を考慮
【管理課長】今回の改定は、コロナ禍の影響で被保険者の所得が低下していることを考慮し、剰余金の活用額を追加して、被保険者の負担軽減を図ることとした。
その際、負担軽減効果を上げるにはある程度の引き下げ額が必要、活用可能な剰余金は143億円、次回以降の料率改定時のための基金の積立額の確保を総合的に考慮した結果、剰余金を21億円追加し、全体で125億円を活用して、一人当たり1,000円程度の引き下げを図ることとした。
この結果、基金に18億円を積み立てることができるが、今後、団塊の世代の加入で医療給付費の増加が想定される。基金を有効に活用することで、安定的な保険料率の設定、ひいては、安定的な後期高齢者医療制度の運用に繋げていきたい。
剰余金を全て活用した場合の均等割額は
【伊藤議員】活用の額をもう少し増やす、あるいは全額を活用すれば、均等割額の値上げもせずに済んだ、もしくは全額を使えば引き下げもできたのではないか。
49,398円から49,006円に392円低くなる
【管理課長】剰余金143億円を全額活用した場合は、49,398円より392円低い49,006円となるが、前回改訂時の均等割額48,765円より241円の引き上げになる。
財政安定化基金を活用しなかった理由は
【伊藤議員】前回は愛知県の財政安定化基金から29億円を繰り入れて保険料率を算定しました。今回は行っていません。その考え方をお尋ねします。
前回は大幅な引き上げが見込まれ、基金で抑制を図った。今回は、剰余金のみで適正な保険料率にできた
【管理課長】県の財政安定化基金は、保険料収納率が予定より下回って保険料不足が生じたり、予想以上に給付費が膨らんだことで生じる財政不足の際に、県が広域連合に貸付または交付を行うために設置され、特例で、当分の間、保険料率の増加の抑制を図るために財政安定化基金を充てることができる。
前回の保険料率改定時には、大幅な保険料の上昇が見込まれたため、愛知県に財政安定化基金の交付をお願いし、保険料の抑制を図ったが、今回の料率改定では、剰余金の活用のみで適正な保険料率とすることができたため、財政安定化基金の交付は受けないこととした。
保険料の引き上げ、引き下げの分岐所得はいくらか
【伊藤議員】今回の改定では、保険料が上がる人と下がる人がいます。低所得者は値上げ、中間所得者層は値下げ、高額所得者は値上げとなりますが、それぞれの分岐点となる所得はいかほどかお尋ねします。
所得133万円以下と660万円以上は増額、中間所得が引き下げに
【管理課長】基本的な傾向として、低所得者は上がり、中間所得者は下がり、高額所得者は上がることになるが、所得状況や家族構成等で分岐点は異なる。年金収入のみの単身世帯の場合は、所得が133万3,879円以下の場合、均等割額の引き上げで保険料は増額となる。増額幅の最大は300円。所得が133万3,880円以上660万2,424円以下の場合は、所得割率の引き下げで、所得額に応じて保険料額は減額となり、最大で年間3,700円の減額となる。所得が660万2,425円以上の場合は、賦課限度額を64万円から66万円に引き上げた影響で、保険料も引き上げとなる。
保険料が値上げとなる被保険者の割合はどれだけか
【伊藤議員】被保険者全体で、保険料が値上げとなる被保険者の割合はいかほどか。
均等割額の引き上げで約70%、限度額の引き上げで約2%の人が増額に
【管理課長】2022年度の保険料賦課の収入所得が確定していないので正確な割合は出せないが、2022年2月3日時点の被保険者情報に基づく結果で答えます。
均等割額の引き上げにより保険料額が上がる方の割合は約70%、増加額は一人平均で年額305円、最大で年額633円です。賦課限度額の引き上げで保険料が増加となる方は約2%、増加額は最大2万円です。
剰余金活用は被保険者への還元が第一、余裕があれば基金が原則(再質問)
【伊藤議員】保険料率の算定の一番の基礎は医療給付費です。医療給付費が予想を下回ったことで剰余金が出ます。医療給付費を賄う財源は、①国、県、市町村負担金、②若年世代からの支援である後期高齢者支援金、③被保険者の皆さんが負担している保険料、が当たっています。①と②については医療給付費が予想より下回った分は返金する仕組みになっています。
つまり剰余金の原資は被保険者が収めた保険料であり、それは収めた被保険者にお返しするべきものです。被保険者の所得が低下していることを考慮したとのことですが、被保険者の所得の動向に関わらず、これは繰り入れることが原則ではないかと思います。
また、今後、団塊の世代が後期高齢者医療制度に加入し、医療給付費の増加が想定されるので、基金を活用し、安定的な保険料率の設定、安定的な後期高齢者医療制度の運用に繋げていきたいとのお答えがございました。ある程度弾力的に使える基金の設置はやぶさかではないと思って議案3号については賛成しますが、考え方については、押さえておくべきことがあると思っています。
先ほども申し上げた通り、剰余金の原資は保険料であります。これを将来的の医療給付の増加に備えるために積み立てるということはすなわち、現在の被保険者が未来の被保険者の給付費の一部を負担するという構造になります。剰余金の活用の優先順位としてはやはり、それを拠出した被保険者へ還元することを一とし、それでもなお余裕があるなら基金へ積み立てることが原則であるべきだと思いますがどうか。
被保険者に還元には異論はないが、全額活用は必ずしも利益とはいえない
【管理課長】剰余金の原資が保険料ですので、剰余金について、その保険料を被保険者に還元することについて、基本的には異論はありません。しかし、保険料を速やかに還元する考え方を優先して、剰余金をその都度全額活用すると、十分な剰余金がないときは、保険料の大幅な上昇を招くことになり、ときどきの剰余金の多寡によって保険料率の変動が大きく左右されることになる。
前々回の改定時には、剰余金140億円の全額を活用して一人当たり保険料を軽減前ベースで3.9%の引下げができたが、次の前回の改定では、剰余金の全額83億円に加え、県の財政安定化基金からの交付金も29億円活用したが、一人当たり保険料で7.8%の大幅引き上げをせざるを得なかった。
剰余金を被保険者に速やかに還元する、剰余金を全額活用することが、必ずしも被保険者の利益であるとはいえない。
基金になるべく多くを積みたがるのが役所の特徴(再質問)
【伊藤議員】基金という入れ物になるべくたくさんの金額を積みたがるのが役所の仕事の特徴であり、支出した被保険者に戻されるべきお金が適正に処置されないということにもつながりかねません。今後の保険料率改定時における剰余金の取り扱いの考え方の原則が、そこをきちんと押さえたものとなるかどうかお尋ねします。
剰余金の多寡によって保険料率の変動が大きく左右されないよう積み立てる
【管理課長】剰余金を全額活用する場合は、剰余金の多寡によって保険料率の変動が大きく左右されることになる。しかし、被保険者には年金生活者が多いことを考慮すると、保険料が改定の都度大きく変動し、先の読めないようなものであるより、適正な水準で安定的に推移した方が、年金生活の被保険者にとっては有益です。
剰余金については、保険料率を適正な水準にするために必要な範囲で活用することとし、活用後に残額が生ずる場合は、基金に積み立て、改定時に十分な剰余金がない場合は、基金からの取り崩しにより、適正な改定を行っていきたい
剰余金の繰り入れ83億円は全額か(再質問)
【伊藤議員】前回の改定時には、剰余金の繰り入れは83億円でした。これは剰余金の全額であったのかどうかお尋ねします。
剰余金全額です
【管理課長】前回の改定時に活用した83億円は、剰余金の全額です。
医療保険制度は社会保障、相互扶助ではない。変動を抑える原資を保険料に依拠することは原則に反する(意見)
【伊藤議員】今回、新たに創設する基金ですので、今後の取り扱いを注視してまいりたいと思います。ただ、今回で言えば、繰入額については、均等割額の上昇を抑えるために、もっと積極的に繰り入れるべきではなかったか、積立額はもっと少なくてもよかったのではないかと思いました。
剰余金を全額活用するということが、必ずしも被保険者の利益であるとはいえないとのお考えも示されました。
医療保険制度は社会保障制度であり、相互扶助が原則ではありません。したがって、その変動を抑えるべき原資を被保険者の拠出した保険料に依拠することは、原則に反します。本来は国が責任を持つべきもの。ただ、これは、各広域連合の努力の及ばない次元での話ではございますので、この点については原則を踏まえ、国に対して要望を続けていただくようお願い申し上げます。
キーワード:福祉・介護・医療、税、地方自治体と住民参加