2022年度一般会計予算に対する反対討論(3月22日)
3月22日に2022年度名古屋市予算案の採決が行われ、田口一登議員が河村市政の問題点を指摘し、新年度予算に対する反対の討論を行いました。田口議員の討論を紹介します。
コロナから市民の命と健康を守る取り組みの強化を
新型コロナ対策の「まん延防止等重点措置」は解除されましたが、本市の新規感染者数は依然として高い水準にあります。ワクチンの3回目接種を急ぐとともに、無料のPCR等検査の拡充、高齢者・障害者施設に学校や保育所などを加えた定期的検査の実施、保健所・保健センターのさらなる体制強化など、コロナから市民の命と健康を守る取り組みの一層の強化を求めたいと思います。
「減税」で財源不足をつくり、福祉・医療などを後退
それでは、2つの角度から予算案に反対する理由を申し上げます。
第1は、富裕層優遇の市民税減税で財源不足をつくり出し、福祉・医療を後退させ、学校の統廃合、国民健康保険料の値上げなどを進める予算となっていることです。
河村市長の市民税減税が、「金持ち減税」であることは、自明の理ではありますが、あえてその裏付けを述べたいと思います。減税額がトップの方は448万円も減税されます。その方の所得は約15億円だそうです。納税者の0.1%に満たない約1千人の富裕層が20万円を超える減税の恩恵を受ける一方で、納税者の過半数を占める年収がおおむね500万円以下の方の減税額は5000円以下です。所得再分配機能を損ねる「減税」ではありませんか。
敬老パスに利用回数制限
この「減税」によって、来年度は約92億円も税収が減り、そのしわ寄せが市民生活に及びます。
まず、敬老パスの利用回数制限です。「事業費が暫定上限額の145億円を超えるから」という理由で導入されました。「金持ち減税」をやめて税収を確保すれば、暫定上限額など持ち出さなくてすみます。
しかも、敬老パスの利用は、コロナ感染の影響でコロナ前の7割余りに落ち込んでおり、私鉄と民間バスに利用が拡大されましたが、それでも来年度の利用見込みはコロナ前の83%にとどまります。利用回数に制限をかけなくても、事業費が暫定上限額を超えるようなことはありません。コロナにより高齢者の外出機会が減り、フレイルが危惧されているいま、やるべきことは敬老パスの利用促進であり、利用抑制をもたらす回数制限ではありません。市長には、「乗り継ぎカウント1回」の公約に責任を持ち、ただちに実施するとともに、利用回数制限を撤回するよう求めます。
市民病院はゼロに。病床削減も
河村市長の就任前には5つあった市民病院は、民間への譲渡や名市大の附属病院化が進められ、来年4月には緑市民病院も市大病院化され、名古屋市から市民病院と名の付く病院はすべてなくなります。厚生院の附属病院も市大に統合され、名古屋市直営の病院は姿を消します。
問題なのは、緑市民病院と厚生院附属病院の市大病院化を機に、合わせて504床ある入院ベッドを154床も削減することです。これは、公立病院の再編・統合を前提とした政府の地域医療構想を忠実に実行するものであり、コロナ危機のさなかの病床削減は許されません。
北部地域療育センターが民間移管
子どもたちの成長・発達を支援する北部地域療育センターが民間移管されることに、保護者からは「職員が変わることに不安」「保育内容が継承できるのか」など、多くの不安の声が寄せられています。保護者の不安を置き去りにした民間移管は容認できません。
一方的に高坂小学校の統廃合計画を進める
来年度は3つの地域で小学校の統廃合が進められます。学校の統廃合にあたっては、行政が一方的に進めてはならず、住民の理解と合意形成が欠かせないというのが、わが会派の立場であります。ところが、高坂小学校の統廃合計画は、教育委員会が一方的に決定してしまいました。
教育長は、私の本会議質問にたいして、「丁寧に協議を重ね、関係する皆様の理解を得て取り組みが進められるよう努める」と答弁しましたが、統合の個別プランの説明会で反対や疑問の声が噴出したにもかかわらず、再度の説明会を開かないまま、教育委員会の見解を伝える「お便り」を一方的に配布・回覧しただけで決定したのです。
これは、市議会における答弁を反故にするものであり、「地域住民の意向の反映」という教育委員会制度のそもそも意義からも逸脱した〝お上に従え式〟の進め方だと言わなければなりません。教育委員会は、高坂小の統廃合計画の決定を撤回し、住民・保護者との丁寧な協議を続けるべきであります。
背景に公共施設の統廃合・縮小方針
小学校の統廃合や図書館の再編・縮小などが進められている背景には、政府が地方自治体に押し付けている公共施設の統廃合・縮小方針があります。本市も、保有資産量を40年間で10%削減する『市設建築物再編整備の方針』を策定していますが、この方針の撤回、少なくとも市民の理解や合意なしに一方的に進めることのないよう、強く求めるものであります。
国保の都道府県化で保険料値上げ
国民健康保険料は来年度、医療給付費の増により、一人平均2761円の値上げになり、2023年度からは4年間かけて、保険料の賦課率を92%から94%に引き上げることが決まりました。政府は、国保の都道府県化をテコにして、一般会計からの繰入金のうち、決算補填等目的の法定外繰入の解消を自治体に押し付けており、賦課率の引き上げによる保険料値上げは、こうした政府の圧力に屈したものです。
しかし、今でも高すぎる国保料のさらなる値上げは、コロナ禍で疲弊している市民の暮らしを圧迫します。繰入解消は義務ではなく、自治体の判断で続けることは可能ですので、一般会計からの繰り入れによって、保険料値上げをやめるべきです。
大型事業を推進する予算
第2は、名古屋城天守閣の木造復元、中部国際空港の2本目滑走路整備など大型事業を推進する予算となっていることです。
五里霧中をさまよう木造復元事業は中止を
名古屋城天守閣の木造復元は、いつ着工できるのか、見通せない事態に陥っています。なによりも、天守地下1階の穴蔵の石垣、内堀の御深井(おふけ)丸側の石垣など復元工事が影響を与える石垣の調査と保存方針の決定、そして修復に相当の期間を要すると思われます。石垣保存方針が決まらなければ、木造復元の実施設計もできません。
木造天守のバリアフリーについては、昇降技術を公募しますが、公募条件は、大(おお)天守の「少なくとも1階に昇降ができること」というものです。最上階まで上がれなくても、バリアフリーというのでしょうか。
その一方で、「いま買わなければなくなってしまう」といって木材を購入したものの、着工のメドが立たず、木材の保管料として市民の税金が毎年毎年1億円ずつ消えていっているのです。
五里霧中をさまよう木造復元事業は中止し、名古屋城跡の修景保全を行い、失われた建物・庭園などを復元し、名古屋城跡の総体としての魅力向上策を講じる方向に転換するべきです。
中部国際空港の2本目滑走路は急ぐ必要ない
中部国際空港の2本目滑走路整備に向けて、中部国際空港株式会社への無利子貸付金が、初めて予算計上されました。愛知県、名古屋市など3県1市と空港会社、中部財界で構成する「中部国際空港将来構想検討会議」は昨年12月、第1段階として現在の誘導路を2027年度までに第二滑走路として整備する。第2段階として空港西側沖の埋め立て完了後に新たに滑走路を整備するという「将来構想」を発表しました。
この2段階整備が構想されたのは、「空港沖の埋め立て完了を待っていたら15年先で、遅すぎる」というものですが、そんなに急ぐ必要はまったくありません。現在の滑走路の発着可能回数は13万回ですが、昨年度の実績は4万1千回余、今年度も1月までで4万2千回余と落ち込んでいます。
しかも、コロナ禍による需要激減を踏まえた中部国際空港に特化した需要予測調査はなく、2027年度までに2本目滑走路が必要という根拠のある需要予測が示されていません。空港沖の埋め立てが始まりましたが、これは名古屋港の浚渫土砂を処分するためであり、埋め立て後の利用目的は、大規模地震で発生する「津波漂流物を一時保管する臨海緑地」の確保とされており、2本目滑走路整備のためではありません。
「大規模改修のため」という理由が前面に持ち出されていますが、2本目を整備するかどうかの判断基準は、あくまでも需要のはずです。需要がないのに造ろうとするから、別の理由を持ち出さなければならなくなっているのです。
リニア開業を前提とした大型開発の中止・見直しを
中部国際空港の2本目滑走路も、笹島地下通路など名古屋駅周辺開発も、都市高速道路のアクセス向上を理由にした追加工事も、2027年のリニア開業を前提に推進されています。しかし、リニア建設は、大井川減水問題で南アルプストンネル静岡工区の工事が未着工となり、2027年開業は先送りせざるを得なくなっています。日本共産党は、リニア建設の中止、リニア開業を前提とした大型開発の中止・見直しを求めるものであります。
行政のデジタル化で市民サービス低下させない
次に、本市行政のデジタル化についても触れておきます。情報システムの標準化について、わが会派の代表質問で市長は、「市の独自施策を制限するものではない」と答弁されましたので、この言明どおり、システム標準化を口実に独自サービスを抑制しないようにしていただきたい。
政府が進めるデジタル化は、「データが価値創造の源泉」であるとして、データを企業等に開放して利活用を促進するところに狙いがあり、そのために、個人情報保護制度が一元化されました。個人情報保護条例の改正にあたっては、現行の保護水準を低下させないよう求めておきます。
ロシアの軍事行動は即時中止を、ウクライナ難民への支援を
最後に、ウクライナでは、ロシアによる無差別の攻撃によって、多数の民間人が犠牲になる人道的危機が生まれています。ロシア・プーチン政権に厳しく抗議し、軍事行動の即時中止を求めます。市長には、ウクライナからの避難民の受け入れにあたり、衣食住の確保をはじめとした支援体制を整えるよう求めるとともに、日本共産党としても、募金活動など人道支援に力を尽くすことを申し添えて、討論を終わります。
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