2022年6月議会

江上博之議員の個人質問(2022年6月24日)判決に従いトリエンナーレ負担金の支払いを

河村市長が支払拒否したトリエンナーレ2019の負担金は判決に従って支払を
                             江上博之議員

トリエンナーレ負担金の支払を拒否して訴えられた裁判で名古屋市が全面敗訴
【江上議員】あいちトリエンナーレ2019(以下、芸術祭と呼ぶ)に係る負担金交付請求事件判決への控訴に関する専決処分について質問します。
 名古屋市は、本件芸術祭主催のあいちトリエンナーレ実行委員会に対する負担金の一部を支出しないことを決めました。それに対し、同実行委員会が、2020年5月、名古屋市に対し、負担金の一部である3380万円余の支払いを求め提訴し、先日5月25日、名古屋市全面敗訴の判決が下されました。これに対し、名古屋市は、5月30日、控訴しました。この控訴を専決処分で行ったことの承認を議会に求めています。

負担金交付請求事件 判決  令和4年5月25日
原告 あいちトリエンナーレ実行委員会
被告 名古屋市
主文 1 被告は、原告に対し、3380万3000円及びこれに対する令和元年10月19日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
   2 訴訟費用は被告の負担とする。
   3 この判決は、仮に執行することができる。

控訴の理由が市民に理解されるのか
【江上議員】第1に、控訴の理由は何かという点です。
 市長の説明の1点は、「地方公共団体が行うような公共事業ではない」と判決されたことに反論し、補助金申請や主に税金で運営されているから「公共事業であることは明白」と言います。
 判決では、事業収入のおおむね70%前後を県と市で負担していることを認め、国に対して補助金申請していることを認めたうえで、「公的な側面を有する催物であることは否定することはできない」としています。そのうえで、あいちトリエンナーレ実行委員会が、「準備及び開催運営」を行っており、実行委員会は、「権利能力なき社団であって、地方公共団体ではないから、本件芸術祭は地方公共団体が行うような公共事業であるということはできない。」としています。
 市長は、「公金支出の適否」についても主張しています。また、今回の「展示」は、「『行政が認めた』と誤解を与えることにつながり、ましてや公共事業の場合は、一度でもそのような展示を認めてしまうとその考え方が固定化されてしまう」と説明しています。
 判決は、「芸術活動は、多様な解釈が可能であるうえ、ときには斬新な手法を用いることから、鑑賞者に不快感や嫌悪感を生じさせる場合があるのもある程度やむを得ない。」とし、「いわゆるハラスメントなどとしてその芸術活動を違法であると軽々しく断言できるものではない。」したがって、公金支出を認めています。
 また、判決では、「どのような作品を展示するかということは、芸術監督及び不自由展実行委員会が自律的に決定しているものであり、」名古屋市が、「当不当の判断に基づいて決められたものではない。」、芸術祭の中での不自由展の「予算割合や展示面積割合は、」「本件芸術祭の一部を占めるに過ぎない催しであると言わざるをえず、」名古屋市が「本件芸術際に対して本件負担金を交付しても、」名古屋市が、「その主張するところの政治的に偏向した作品の政治的主張を後押ししていると一義的に評価されることになるものでもない」と述べています。
 それでも名古屋市が、メディアの扱い、社会的反響から本件芸術祭の中で、「不自由展が中核的企画」と主張するということまで判決は検討したうえで、この点だけとらえて負担金交付が、後押しになるとは断定できない。現に、名古屋市が、「すでに交付済みの負担金について返還を求めていない。」ことも理由にしています。まして、「公務員の政治的中立性を求める各法令に違反すると法的に評されるものでもない。」とまで述べています。
 このように、市長の判決に対する反論は、ことごとく、判決の中で反論されています。そこで市長に質問します。
 第1に問題なのは、市長の肩書を使って、展示物について個人的評価を与え、表現の自由に対する介入ではないか、という点です。展示物に対して市長の個人的評価、主張まで含んでいます。名古屋市として展示物の表現内容を問題として控訴することは認められません。それでも、控訴する理由があるなら示してください。見解を求めます。
 もう一点。判決で、「公共事業かどうか」、「公金支出の適否」、市長が「行政が認めた」と誤解を与えるという主張にも答えているではありませんか。この点からも控訴する理由は認められません。何を理由にするのかあらためて説明を求めます。

芸術祭を「地方公共団体が行うような公共事業ではない」というのが承服できない(市長)
【市長】判決についてとりわけ承服しかねることは、本芸術祭を「地方公共団体が行うような公共事業ではない」とされたことです。議会の皆さんと公共事業として議決したんですけどね。そもそも。
 県と市の共催事業である本芸術祭は、県は国に「地方公共団体が実施する事業」として補助金申請をしている上に、主に税金で運営されていることを踏まえると、公共事業であることは明白である。
 憲法15条2項に全国民の奉仕者というのがあり、各補助金交付規定にもあるように、政治的宗教的に中立であるというのが当然なルールとしてある。
 ですので、税の使い道の判断として、皆さんが納得いけるもんでないといかんと考えるわけです。
 ところが、天皇の写真が焼かれ踏みつけられる展示は出品目録に入っていなかった。慰安婦像、日本政府が韓国に大使館の前に展示するのはやめてくれということを言っている。軍人の寄せ書きみたいなものを愚かな日本人だと。税金使って、名古屋市主催でやるんですか。一切知らされてませんでした。この3点は。
 異常な事態が生じたときにはちょっと待ってくれとなん度も言ったが、一切会議が開かれず、市民に説明責任が果たせない。
 少なくとも政治的中立を著しく害していると思う。この税金の使い道に対する判断から、とんでもない判決だったということ。そういう判断は市議会、市長、マスコミは別だが、そういうとこで判断するもの。裁判官が、河村よ、お前の言っとることは軽々しい、と判決文に書いてある。
 軽々しいと言って、市民の皆さんから3300万円いただいて展示を認めよという判決をしたということは、まさに驚きだった。司法は一定のところを超えたのではないかと思っております。(概要)

臨時会を開く時間的余裕は十分あったのに専決処分したのは民主主義に反する
【江上議員】専決処分について質問します。
 日本共産党名古屋市会議員団は、5月30日午後、「控訴すべきでないこと。仮に、控訴する場合は、すみやかに急施臨時会を開催すること」の2点を名古屋市長に申し入れました。
 5月30日夕方名古屋市は、控訴期限を10日残して控訴しました。この控訴の専決処分の理由は、地方自治法第179条第1項によるとしています。「特に緊急を要するため」ということでしょうか。
 通常の議会でも7日前の告示で開催できます。急施議会となれば、2~3日前でも可能です。10日も前であれば「特に緊急を要するため」という理由には当たりません。地方自治法違反の専決処分ではないでしょうか。まさか負担金の強制執行を免れるためだとすれば、さらに問題です。議会の審議より強制執行停止を上に置くものであり民主主義に反します。
 そこで、市長に質問します。専決処分を行った理由、根拠を明らかにしてください。

強制執行されないよう、時間もなかったので専決処分にした(市長)
【市長】仮執行、強制執行を認めていて、そのまま時間がたち強制執行されてしまえば、市民に対して申し訳たたんじゃないですか。時間がまことにないということで専決させていただいて、今回の議会で皆さんの了解を得たいというようになった。

専決処分には全く理由がない(意見
【江上議員】専決処分については、まったく理由がないとだけ明らかにしておきます。

憲法の立場で表現の自由を守ってきたといえるのか(再質問)
【江上議員】
表現の自由が問題です。そこで、第2質問を、松雄副市長にします。
 名古屋市として、憲法21条の表現の自由を守る立場として、多様な表現、展示を公開の場で議論できるようにすることが役割であり、個別の展示に判断を下すようなことはしてはならないと考えます。文化芸術基本法でも、「文化芸術の礎たる表現の自由の重要性を深く認識し、文化芸術活動を行うものの自主性を尊重すること」が謳われています。この姿勢で表現の自由を守ってきたと理解してよろしいですね。見解を求めます。

憲法第21条で保障された国民の権利、最大限尊重されるべきもの(副市長)
【松雄副市長】「表現の自由」は憲法第21条で保障された国民の権利であり、最大限尊重されるべきものと認識している。一例として、昨年、「市民ギャラリー栄」に、「私たちの「表現の不自由展「その後」」の会場として使用の申し込みがあった際には、様々な意見もあったが、法令及び最高裁判所の判例に基づいて使用を許可し、対応した。
 一方、芸術文化団体活動助成補助金の補助対象事業の要件で「宗教的又は政治的意図のないもの」を掲げており、政治的中立性が求められ、公金の支出には特定の主義主張に偏らない内容となるよう留意することも必要と考えている。

表現の自由を侵害しない姿勢を強く求める(意見)
【江上議員】副市長は、私が憲法21条の表現の自由で述べたことを否定はされませんでした。市としては、その立場で「表現の自由」を守ってください。
 問題は以下の点です。本市芸術文化団体活動助成補助金の補助対象事業を例に上げられましたが、名古屋市が公金の支出だからと判断できるというものです。 問題はその判断の基準です。文化芸術基本法で「文化芸術の礎たる表現の自由の重要性を深く認識し、文化芸術活動を行うものの自主性を尊重すること」は述べました。同法の基本理念では「文化芸術に関する施策の推進にあたっては、文化芸術活動を行うものの創造性が十分に尊重される」ことが求められ、地方公共団体の責務として、「基本理念にのっとる」ことが求められており、ここを基準に判断することです。
 このように、名古屋市主催の芸術活動の補助金支出だからこそ、文化芸術活動を行うものの自主性、創造性を尊重する姿勢で、「表現の自由」を守るため、「金は出しても口は出さない」姿勢が求められますが、その姿勢が見えません。
 公権力として表現の自由を侵害しない姿勢を強く求めます。以上のことを申し上げ、引き続き、委員会で審議することを申し上げて質問を終わります。

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