名港管理組合2022年6月議会 (江上博之議員) 気候危機打開・脱炭素に向けた取り組み(2022年6月8日)
気候危機打開のためにこれまで以上の対策が必要。技術が未完成な水素に頼るだけでなくあらゆる取り組みを
江上博之議員
気候危機のもと、名古屋港での水面はどの程度上昇しているのか
【江上議員】新型コロナウイルス感染症の発症・対策に追われ2年半近くになります。発生源は定かではありませんが、自然破壊で洞窟に住む蝙蝠を起こしてしまったということが言われています。コロナ禍が自然破壊の問題ともつながっています。
毎年、日本のどこかで豪雨被害があり多くの被災者が出ています。線状降水帯という言葉を頻繁に聞くようになりました。世界に目を移すと、米カリフォルニア、オーストラリアなどで山火事が頻発しています。南極、北極では氷山が溶け出し、海洋諸国は海面上昇で暮らしていけないと危機的状況になっています。
では、この地域ではどうか。この名古屋港でも名古屋港水面が上昇しているようなことがあるのでしょうか。お答えください。
世界平均の1年あたり3.7mmの海面上昇率(2006年~2018年)と同程度
【企画調整室長】名古屋地方気象台によると、「海面水位の変動について名古屋港のみの評価は行っていないが、2022年2月15日の気象庁発表のとおり、日本沿岸においては近年の海面水位の上昇率は世界平均の海面上昇率と同程度になっており、世界平均では2006年~2018年の期間で1年あたり3.7mmの割合で上昇しています。その要因については明らかではありません。」との回答を得ている。
*日本沿岸の海面水位は、1980年代以降、上昇傾向が見られます。1906~2021年の期間では上昇傾向は見られません。また、全期間を通して10年から20年周期の変動(十年規模の変動)と50年を超えるような長周期の変動があります。2021年の日本沿岸の海面水位は、平年値(1991~2020年平均)と比べて71mm高く、統計を開始した1906年以降で第1位の値を更新しました。
*気候変動に関する政府間パネル(IPCC:Intergovernmental Panel on Climate Change)第6次評価報告書第1作業部会報告書(2021年)は 「世界平均海面水位は、1901~2018年の期間に0.20[0.15~0.25]m上昇した。その平均上昇率は、1901~1971年の間は1年あたり1.3 [0.6~2.1] mmだったが、1971~2006年の間は1年あたり1.9[0.8~2.9]mmに増大し、2006~2018年の間には1年あたり3.7[3.2~4.2]mm増大した(確信度が高い)。少なくとも1971年以降に観測された世界平均海面水位の上昇の主要な駆動要因は、人間の影響であった可能性が非常に高いことが示されています。
*IPCC第6次評価報告書第1作業部会報告書(2021年)とほぼ同じ期間で日本沿岸の海面水位の変化を求めると、1906~2018年の期間では上昇傾向は見られませんでした。一方、2006~2018年の期間で1年あたり2.9[0.8~5.0]mmの割合で上昇しました。近年だけで見ると、日本沿岸の海面水位の上昇率は、世界平均の海面水位の上昇率と同程度になっています。
2030年度で、2013年度比26%削減の目標に対し、2020年度で32.9%削減という実績だが国連の45%減には達していない。どんな取り組みをしてきたのか
【江上議員】この気候危機を打開するために、国連では、産業革命期より地球の平均気温が1.1℃から1.2度上昇しており、1.5℃までに抑えることが確認されました。そのために2050年温室効果ガス、特にCO2実質排出ゼロを確認し、今から8年後の2030年までに、2010年比で45%の削減が確認されています。日本政府も2050年実質排出ゼロを言っています。
名古屋港ではどうか。名古屋港管理組合として、組合が所有するすべての施設・設備における事務・事業を対象に、「名古屋港管理組合地球温暖化対策実行計画」を策定し、今第4次の2021年度が終了したところで、第5次の案を検討しているところだと思います。第4次の長期目標は、2030年度で、2013年度比26%削減でした。実績は、2020年度までに、2013年度比32.9%削減と超過達成をしていますが、国連の目標にはまだまだです。
そこで、質問します。削減のための具体的な取り組みとして、省エネルギーと再生エネルギーの両方があり、省エネルギーでは、温室効果ガスの排出の少ない材料・設備機器等で省エネルギータイプの設備機器類の採用、再生エネルギーでは、太陽光等再生可能エネルギーの活用を検討となっています。実際に、削減のために行ったことを明らかにしてください。
省エネルギーでは、道路照明や上屋の照明のLED化、低燃費車の導入及び船舶の燃料使用量の削減など。再生可能エネルギーの取組では、港湾施設や本庁舎での再生可能エネルギー100%の電気の調達、新舞子マリンパーク風力発電所の稼働など
【企画調整室長】「地球温暖化対策の推進に関する法律」に基づき、所有する施設・設備における事務・事業から排出される温室効果ガス削減のための目標や取組などを記載した「第4次名古屋港管理組合地球温暖化対策実行計画」を2017年度に策定している。
この実行計画に定めた温室効果ガス削減のための取組として、省エネルギーの取組では道路の照明約1500灯や上屋17棟の照明設備のLED化、公用車への低燃費車の導入及び船舶の経済運航による燃料使用量の削減などを、再生可能エネルギーの取組では、ポンプ所など14の港湾施設や本庁舎における再生可能エネルギー100%の電気の調達、「新舞子マリンパーク風力発電所」の稼働などを行ってきた。
国連の目標を突破するための新たな取り組みはなにか
【江上議員】第5次実行計画の策定について、管理組合としての目標はどうするかということです。最低でも、国連の目標を突破しなければなりません。第4次の2013年度比26%でなく、2010年比で、45%を超えるものだと考えますが、そのような方向で検討しているのでしょうか。
この目標実現には、今までの取組みだけではとても無理です。新たな取り組みはどのようなことを検討しているのでしょうか。組合が所有するすべての施設・設備における再生可能エネルギー100%で調達し、その電力は、組合施設で調達するなど検討されているでしょうか。
国の地球温暖化対策計画での「温室効果ガスを2030年度に2013年度から46%削減」にあわせ、新たな目標を設定したい
【企画調整室長】2021年10月に閣議決定された「地球温暖化対策計画」における温室効果ガス削減目標では、2030年度において、温室効果ガスを基準年度の2013年度から46%削減することを目指すとされている。
改訂に向けて検討を進めている第5次実行計画においては、政府の削減目標を踏まえて、新たな目標を設定したい。目標達成に向けた具体的な取組としては、再生可能エネルギー電気の利用拡大や、所有する施設における照明設備のLED化の推進など、引き続き検討を深めていく。
再生エネルギーとしての水素の位置付け
【江上議員】再生エネルギーの調達方法について、港湾ではカーボンニュートラルポート形成計画を策定していくこととなると思います。その内容については、ここでは触れません。気になっているのは、再生エネルギーとして、水素・アンモニアが声高に言われていることです。「脱炭素」で2050年CO2実質排出ゼロは至上命令です。そうしなければ、地球そのものの存続が危うい。相当な省エネルギーと再生エネルギーの導入が必要です。その方法は、モノの製造から廃棄まで全体でCO2の排出を減らすライフサイクルCO2の観点が必要です。現在の水素の調達は、オーストラリアの石炭の一種である褐炭からつくられるという化石燃料由来です。これで、今求められている再生エネルギーと言えるのでしょうか。また、水素の利活用方法は、まだまだ実用化の目処が立っていないのではないでしょうか。水素・アンモニアの利活用を否定するものではありませんが、今、2050年という期限、2030年という期限が必須です。
そこで、質問します。実行計画の策定にあたり、水素を掲げるとすれば、なぜ、水素利用なのか。理由を明らかにしてください。
経済産業省資源エネルギー庁のHPより
水素は、利用時には温室効果ガスを発生させないエネルギーであり、民間事業者による取組が活発化しているので、大変期待されている次世代エネルギーの一つ。実行計画の中で検討する
【企画調整室長】水素は、利用する際に温室効果ガスを発生させないクリーンなエネルギーであり、政府において、脱炭素化に向け、その活用がうたわれている。
民間事業者が水素に関する取組を活発化しており、脱炭素社会の実現に向けて大変期待されている次世代エネルギーのひとつと認識している。
本組合としても水素の利活用が進むよう取り組み、実行計画の対象である本組合の事務・事業から発生する温室効果ガスの削減につなげていく必要があると考えている。
次期実行計画は、現在検討をすすめており、水素の取り扱いは、その中で引き続き検討していく。
太陽光エネルギーは、国内自給でき、再生エネルギーとして一番であり、水素も一つのエネルギーだが、その利活用の技術が間に合うか、化石燃料由来の水素でいいのかが問われている。地球を守る、港湾を守る、私たちの暮らしを守ることになる計画に(要望)
【江上議員】これからの検討ということですが、気候危機打開・脱炭素は、地球の異変を少しでも止めるためのもので、期限が迫っています。2030年、2050年に間に合うことが絶対条件です。太陽光エネルギーは、国内自給でき、再生エネルギーとして一番のものです。水素も一つのエネルギーです。ただ、その利活用の技術が間に合うか。化石燃料由来でいいのかが問われています。組合の第4次計画まで、「水素」という語彙は出てきていません。第4次作成が2017年7月です。その後、12月に国が水素基本戦略を作成しました。第5次はその点を踏まえるのでしょうが、新しい話だけに、丁寧な説明が必要です。コロナやロシアのウクライナ侵略に伴う影響で、国内自給エネルギーの大切さが求められています。その時に輸入でいいのかもあります。
地球を守る、港湾を守る、私たちの暮らしを守ることになるような計画を求めて質問を終わります。
主要国の一次エネルギー自給率比較(2018年)
(出典)IEA「 World Energy Balances 2019」の2018年推計値、日本のみ資源エネルギー庁「総合エネルギー統計」の2018年度確報値。※表内の順位はOECD35カ国中の順位
日本の一次エネルギー供給構成の推移 (出典)資源エネルギー庁「総合エネルギー統計」日本の化石燃料輸入先(2019年) (出典)財務省「日本貿易統計」(海外依存度は総合エネルギー統計より
キーワード:雇用と地域経済・中小企業、環境と防災、まちづくり、江上ひろゆき