2022年11月議会
さいとう愛子議員の個人質問(2022年11月25日)①中学校のスクールランチは全員制の給食に
昼食を食べていない生徒がいることを、どう認識しているか
【さいとう議員】現在、市内の学校給食は、小学校は全員制の自校方式で行われ、中学校は1校を除いて(鳴海中は自校式)弁当併用のスクールランチ方式で提供されています。約30年前、名古屋市は県下で唯一中学校の給食がなく、親たちから小学校のような自校直営の温かい給食を我が子に食べさせたいと中学校給食の実施を求め大きな運動がおこり、市長選挙の争点ともなりました。その結果、中学校の給食は、1993年度から7校で試行が始まり、1998年度から全校実施となりました。しかし、導入されたのは、小学校のような全員制の給食ではなく、「選択制メニュー、ランチルーム、弁当併用」の特徴を持つスクールランチで、今に至っています。
スクールランチの目標は、「食生活を自主的に管理できる力を育てること、また、くつろいだ自由な雰囲気の会食で、豊かな心や、個を尊重した好ましい人間関係を育てること」としています。
しかし、約30年たって、社会情勢は大きく変化してきました。コロナ禍で家計がひっ迫し、その上物価高騰が子どもたちの食事まで影響しています。小学校のように全員制給食であれば、たとえ給食費が滞納となっていても給食が提供されないことはありません。しかし、スクールランチの喫食率51%で、注文していない生徒が、全員弁当を持参しているのでしょうか。
学校の先生たちに聞きました。ある中学生Aさんは、約1年前から母と子ども4人の生活。一番下の保育園児の送り迎えもしているヤングケアラー。母が料理を作らないので冷蔵庫にほとんど食材がなく野菜だけ弁当箱に詰めていったことも。学校を休みがちなので、スクールランチの注文もできない。ある父子家庭の子どもBさん。親子でいろいろ努力しているが、食べることは自分でするのでおにぎり1個の時もあった。マークシートにチェックして、お金を持ってきて注文するのが、めんどうくさいと言って頼み忘れることがあります。
小学校では給食が提供され、唯一の栄養を給食で摂取できていた子どもが、中学校に入るとバランスの取れた食事どころか、食べることさえ困難であったことが表面化します。小学校で食のセーフティネットであった給食は中学校でもやはり同様です。スクールランチを申し込むお金がなかったり、3日前までに申し込めなかったり、不登校で休みがちでスクールランチ申し込みの手続きが間に合わなかったりと食べられなかった理由は様々で、そのときの対応は学校現場に任されています。この子どもたちこそ、栄養バランスの取れた食事を安心して食べることが一番必要なのではないでしょうか。
教育長にお尋ねします。中学校での昼食時、何も食べていない生徒がいることについて、どう認識されていますか。お聞きします。
食べていない子がいれば、保護者に連絡し、個別に対応(教育長)
【教育長】中学校では、昼食を忘れてきたり、家庭の事情で昼食の用意ができなかったりという生徒がいれば、保護者とも連絡を取りながら、その日の昼食を食べられるよう、個別に対応をしている。
もし昼食時に何も食べていない生徒がいた場合には、生徒に声がけを行い、事情を聞き取った上で、保護者とも連絡を取りながら対応している。経済的な理由で昼食の用意ができないという家庭があれば、就学支援に適切につなげるよう、配慮している。
栄養バランスの取れた給食を全生徒が食べられるよう、全員制給食にすべき
【さいとう議員】食育基本法には、「子どもたちが豊かな人間性をはぐくみ、生きる力を身に付けていくためには、何よりも「食」が重要である」と特に次代を担う子どもたちの食育を重要としています。 生きていくためのセーフティネットの役割というだけでなく、学校給食は、学校の中に一歩入ったら、どの子も同じように温かい給食を食べることによって、安心して学び当たり前の学校生活を笑顔で送ることができる前提なのです。学校給食実施基準では、「学校給食は、当該学校に在学するすべての児童又は生徒に対して実施されるものとする」とされ、全員喫食が基本です。
今、政令市の中学校給食は、すでに半数以上が全員制給食で、神戸市・広島市・相模原市・横浜市も、全員制めざして移行する予定や議論を進めています。全員制となっていないのは、名古屋市と京都市、新潟市の3市です。
神戸市にお聞きしました。現在、中学校全校で全員喫食を基本としてデリバリーランチボックス方式による給食が行われ、家庭弁当持参も可能とされ、名古屋市と似ています。2019年度の全生徒及び保護者へのアンケート調査において、生徒・保護者ともに「温かい給食」を希望する意見が最も多く、「家庭弁当を持参させたい」という保護者の意見は少数となっており、全員制の温かい給食への移行に向け、具体的な検討を行っているそうです。
愛知県下54市町村では、名古屋市をのぞいて、53市町村が全員制の給食であり、加えて、給食費についても、小中学校とも無償の豊根村など、19市町村がさまざまな形で補助を行っています。
今年8月から行っている市議団の市政アンケートに、ある母から寄せられた声です。「中学校も給食にしてほしいです。毎日弁当持参になってとても憂鬱。働く母が多い中、『弁当』の選択があることで負担が大きい」と書かれていました。
教育長にお尋ねします。中学生という心身ともに最も栄養バランスの取れた食事が必要な時、誰一人給食が食べられない子がいないよう、中学校給食を全員制にする必要があるのではないですか。お答えください。
広い選択肢があるスクールランチだ。経済的に困難な家庭には就学援助がる(教育長)
【教育長】本市の中学校スクールランチは、複数のニューから選ぶことができ、家庭からの弁当持参も併用できる制度となっている。経済的な理由で給食費の負担が困難な場合は、就学援助でスクールランチ代の全額補助を行っている。家庭の事情で弁当を用意することが負担なら積極的にスクールランチを利用していただきたい。生徒と保護者にとってより広い選択肢を提供できる制度となっている。
スクールランチの喫食率は51%。全生徒・保護者にアンケートをとるべきでは
【さいとう議員】「昼食の用意ができなかった生徒がいれば個別に対応している」「就学支援に適切につなげるよう配慮している」と言われました。実際に、スクールランチも弁当も用意できていない子がいてその都度、学校で対応している状況があるということです。
成長期にある中学生の給食は、栄養バランスの取れた温かい給食で、誰一人食べられない子がいないよう全員制の給食が求められるのではないですか。喫食率は今51%で60%の目標に届かず、毎年子どもたちへの調査では、「冷たいこと」がスクールランチを食べない主な理由としてあげられています。保護者には、試食会でのアンケートとなっているので、意見を聞く対象が限られています。
教育長に再度お尋ねします。なぜ喫食率が上がらないのでしょうか。生徒に行っているアンケートを全生徒全保護者にも広げ、調査する必要があるのではないですか。
低い喫食率は課題。毎年度実施のアンケートの対象拡大を検討したい(教育長)
【教育長】毎年度、生徒及び保護者を対象としたアンケートを行ない、全体の傾向は概ね把握できているが、スクールランチの喫食率が低い状況であり、課題であると認識している。
近年の喫食率低下の原因は正確にはわからないが、不登校の生徒数増加や、新型コロナ感染症による影響があると考えている。
今後、生徒及び保護者の意向をより詳しく知るために、アンケートの対象拡大を検討する。
アンケートを必ず実施して、温かい全員制給食の実現を(要望)
【さいとう議員】今のスクールランチ方式では、3日前までに予約しないと給食を食べることはできず、それ以外は家庭弁当持参という2択となります。親がダブルワークで作れない時や、病気で急に倒れた時には対応できません。学校給食は、誰一人取り残さないことが重要です。
全生徒全保護者のアンケートを求めましたが、対象を拡大して行うことを検討するという回答をいただきました。しかし、検討するだけでなく、ぜひ実際におこなっていただきたい。成長期の中学生にとって、栄養バランスの取れた給食はどうしても必要です。子どもたちの給食をいかに充実するか、スクールランチ方式を抜本的に見直すことも含め、温かい全員制の給食を求め、この質問は終わります。