2023年2月議会
岡田ゆき子議員の個人質問(2023年3月7日)①介護保険のサービス確保と利用料負担軽減策を
フレイル予防に生活支援型訪問サービスの待遇改善で人材確保を
【岡田議員】名古屋市の介護保険計画は、高齢者が住み慣れた地域で、自分らしく暮らし続けられるよう、必要なサービスを切れ目なく提供し、高齢者の生活を支えることとしています。ところが2020年に発生した新型コロナ感染症は感染拡大を繰り返しながら、3年が経過し、その間に、高齢者の日常は外出自粛が続き、比較的外出できていた高齢者が、自宅に閉じこもることで活動量の低下が危惧されます。現にケアマネからは「フレイルに陥っている高齢者がそれ以上重症化しないようにケアプランの見直しが必要」という方も少なくないといわれます。2024年度からの第9期介護保険計画策定に向けては、感染症拡大の影響を受けてきた高齢者や介護事業所の状況を踏まえた検討が必要と考えます。
比較的軽度の方が訪問や通所のサービスを利用しながら、重度化しないように生活できることは、ご本人、支える家族にとっても重要なことです。介護保険計画第6期から始まった、介護予防・日常生活支援総合事業(以下総合事業)によって、要支援1・2の方の訪問サービス、通所サービスをこれまでの介護給付から外し、市町村が行う総合事業に移行されることになりました。サービスの人員基準や報酬は市町村が独自に決めることになり、名古屋市は2016年6月から総合事業を開始しています。
日本共産党は、人員基準や報酬が、これまでの介護給付よりも緩和され、有資格者ではない職員が、有資格者の場合よりも低い報酬でサービスを提供するため、質の低下を招くのではないか、また、基準緩和したサービスを担う事業所が確保できるのかと、指摘してまいりました。総合事業が開始され、6年が経過します。総合事業の中の訪問サービスのうち、人員基準、報酬が緩和された生活支援型訪問サービスについて質問します。
生活支援型訪問サービスは、身の回りのことは自立しているが、掃除や買い物などの生活を支援することで重度化の防止を期待するものです。第8期介護保険計画の目標は一か月あたりの利用者を2990人としていますが、コロナ前の2019年度の月平均利用者数は2493人、2020年度は2447人、昨年度2432人と、利用が延びていません。
昨年8月から9月にかけて、「NPO法人地域と共同の研究センター」が市内の生活支援型訪問サービスを実施する事業所に実態調査を行いました。330の指定事業所のうち78事業所から回答を得ています。生活支援型訪問サービスの利用が全体に減っていることになぜかとの問いに「新規の依頼があっても受け入れられない」との回答が6割を超えています。
アンケートで「困っていること」の問いに、生活支援型訪問サービスの担い手として期待した「『高齢者日常生活支援研修修了者』や介護職員が集まらない」「報酬単価が低い」と回答した事業所はそれぞれ5割を超えています。自由記載欄には、「生活支援型サービス利用者5人をヘルパー2級以上の職員で対応している」「生活支援サービスを何とかやってきたが、ヘルパーにも余裕なく、報酬の低い生活支援は撤退した」「依頼は多いが、受ける事業所が少ない」「最低賃金も上がるのであれば報酬単価も上がらなければ、おかしい」。
自立した生活を支援する必要があって、高齢者のケアプラン計画を立てても、受けてくれる事業所そこでお聞きします。①次期計画に向けて、早急に事業所の実情を調査し、介護人材不足解消の方策の一つとして、報酬単価の見直しを検討すべきと考えますが、見解をお聞きします。
訪問介護員の不足解消に向け、引き続き取り組む必要がある
【健康福祉局長】生活支援型訪問サービスの介護報酬は、身体介護を伴わないサービスであるので訪問介護の「生活援助中心型45分以上」の介護報酬を基に、国の処遇改善加算を勘案しながら設定しています。これに基づき、直近では国の介護職員等ベースアップ等支援加算の創設に合わせて、2022年4月に介護報酬を引き上げるなどの見直しを実施してきました。これにより、生活支援型訪問サービスを、週1回程度利用した場合の介護報酬の月額は、開始当初の2016年度が、現在10,740円になっています。
一方、介護人材の不足、とりわけ訪問介護員は、他の介護サービス職員と比べ、特に不足している状況が続いており、その解消に向け、引き続き取り組む必要があります。
介護報酬の見直しは、2024年度から2026年度までを計画期間とする第9期名古屋市高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画を策定する中で毎年実施している生活支援型訪問サービス実態把握のためのアンケート調査結果や、有識者の意見などを踏まえながら、介護保険料への影響や、サービス利用者への費用負担にも配慮しつつ、検討していきます。
利用をあきらめることのないようサービス利用料の独自軽減制度が必要
【岡田議員】介護サービス利用者負担の名古屋市独自の軽減制度について質問します。介護保険では、事業所が受け取る報酬の1~3割を利用者が負担します。そのため、報酬の引き上げは、利用者にとっては負担増となります。この間、年金額の引き下げが続き、介護保険料は改定のたびに引き上げられ、さらに物価高騰の影響もうけ、経済的に厳しい高齢者は、ケアプランでは介護サービスが必要との判断があっても、利用料負担が重いことから、サービスを抑制する、利用をあきらめるという事が実際に起きています。
名古屋市の利用者負担に対する減免制度は、災害や生計者の入院など特別な事情による減免のみです。また、社会福祉法人が行っている低所得者への利用者負担軽減もありますが、例えば、訪問介護サービスを見ても、897ある事業所のうち、社会福祉法人は37カ所で、95%が営利法人等ですから、圧倒的多くの人が軽減制度のない営利法人等を利用していることになります。県下の自治体では、独自に利用料を軽減する対応がおこなわれています。江南市では、住民税非課税世帯の場合、訪問介護の利用者負担分の2割を月3000円を上限に減免、豊田市では、居宅サービスの高額介護サービス費負担分の2割を月3000円を上限に減免しています。市独自のサービス利用料減免制度を設ける考えはありますか。
法制度の枠組みの中で対応するべきもので国に対し要望している
【健康福祉局長】介護保険制度は全国一律の制度で利用料の負担軽減は法制度の枠組みの中で対応するべきものです。
利用料は、世帯の課税状況等に応じた「高額介護サービス費」等の制度で、また、施設入所時の食費・居住費は低所得者を対象とした「特定入所者介護サービス費」の制度で、それぞれ負担軽減が図られています。
本市独自にも、法制度の枠組みの中で、2018年1月から認知症高齢者グループホームに入居する低所得の方に対する居住費の助成を開始し、2021年10月からは非課税世帯全体が対象となるよう所得要件を緩和して実施しています。
低所得者の利用料の負担軽減について必要な措置を講ずるよう、大都市民生主管局長会議等の活動を通じ、国に対し要望しています。
責任に見合う報酬や人員基準がないと人は集まらない。利用者負担を心配するなら軽減措置も本気で考えよ(要望)
【岡田議員】訪問介護員は、他のサービス職員に比べて特に不足している状況があるという答弁です。
実際に、人材不足等で、サービスの依頼があっても断っているという事業所の深刻な声がアンケートに寄せられていることから今回質問し、重大な問題だと指摘しました。
生活援助の現場でも、急変等で対応が必要な場面が多々あり、その責任に見合う、報酬や人員基準がないと人は集まらないというのが事業所の声です。第9期に向けて事業所の状況を丁寧に把握していただきたい。
一方で、介護報酬と利用者負担は連動しているので、現状でも利用者負担が重くて居宅サービスの利用を抑制しているケースがあると紹介しましたが、新たな独自軽減策は考えていないという答弁でした。
負担が重くて利用を制限していることはないか、第9期計画に向けて、利用者負担とサービス利用の関係を把握する必要があるのではないですか。政令市では横浜市が制度開始当初から低所得者の負担軽減を、一般財源を充てて行っています。
利用者負担の軽減は、一般財源の繰り入れができるのですから、政令市で2番目に財政力のある名古屋市で、軽減制度を本気で考えていただく事を求めます。