2023年2月議会
江上博之議員の個人質問(2023年3月7日)③水余りなのになぜ木曽川水系連絡導水路の再開か
揖斐川のおいしい水確保:木曽川水系の水と揖斐川とどのような違いの「おいしさ」なのか
【江上議員】木曽川水系導水路事業に対する河村市長の発言について、市長は2月14日、記者会見で、「使わん水に市民の税金や水道料金を払ってええのか。徳山ダムにも反対したけど、できた以上は生かす道がないか考えるのが市長の仕事だ」という趣旨の発言をし、「水余りだ」と言って、凍結していた木曽川水系連絡導水路事業を「再開したい」、と発表しました。理由は、水余りの主張は変わらないが、新たな目的を目指すということで、①揖斐川のおいしい水の確保 ②豪雨時の治水対策 ③堀川浄化 の3点を挙げています。
市民団体は2月16日、河村市長に対して、「無駄に無駄を重ねて川を殺す『徳山ダム導水路』建設容認という河村市長の『方針転換』という愚に抗議する」という抗議文を発表しました。
徳山ダム建設は総事業費約3300億円で、市の負担分は525億円、そのうち429億円を市は支払い済みで、残り約97億円。これに加え、今後も年2億円の管理費を支払い続けます。
導水路事業を再開すれば、130億円の支出と報道されていました。おや、と思ったのです。今まで、経済水道委員会の審議で、上下水道局は、水道事業で50億円余、工業用水道事業で30億円余の計80億円余の建設費の支払いと回答していました。じゃ、後の50億円は何か。上下水道局に質問しました。そうしますと、揖斐川から直接名古屋市に水を持ってくるために50億円必要だというのです。徳山ダムから木曽川の上流部への導水路事業による導水管を利用して、木曽川に接続する直前に直接名古屋市に導水管を敷設し、揖斐川の水を直接名古屋市に導水する。その費用が50億円というのです。徳山ダムの97億円と管理費、それに加えて導水路事業で80億円、さらに、市の独自策の50億円。現時点で総事業費はもっと増えると思われます。徳山ダム、導水路、そして、独自の導水管。無駄に無駄を重ね、さらに、無駄を重ねるもので、「無駄の三重奏」ではありませんか。
名古屋市の水道給水事業の現状はどうなっているでしょうか。名古屋市の給水可能量は、木曽川だけでも1日当たり160万トンあります。水需要は、一日最大給水量を2015年度で124万トンと予測しましたが、2015年度の実績は、約87万トンでした。コロナ前の2019年夏で81.7万トン、昨年夏は82.2万トンです。給水可能量の半分です。渇水時が心配だといいます。1994年の「平六の大渇水」と言われる大渇水時でも、木曽川だけで81.6万トンの給水が可能でした。当時、電力会社や農業用水の協力もありました。利用者も自重します。大渇水でも木曽川だけでやっていける計算です。
まず、揖斐川のおいしい水の確保という点についてお聞きします。木曽川の水がおいしいといわれていますが、揖斐川と木曽川で「おいしさ」に違いがあるのでしょうか。
また、木曽川の水が余っていても持ってくる理由を明らかにしてください。
揖斐川の水は、木曽川と同等以上に良質
【上下水道局長】揖斐川の水は、木曽川と同等以上に良質で、揖斐川流域は人口や事業所が少ないことや、揖斐川の取水付近は木曽川の犬山取水場付近に比べて、国により、高い環境基準が設定されており将来にわたり水環境が維持される。新たな水源として、この先も安心・安全でおいしい水道水を安定して供給することができます。
また、揖斐川の水を直接取水できるようにすることで、災害などで木曽川から取水できない場合でも揖斐川から水の融通ができるため、水源の多系統化の効果を最大限発揮できます。
治水対策:木曽川水系でダム放流後に見込んでいた量の雨が降らなかった例はあったのか
【江上議員】市長が「豪雨が見込まれる際は、木曽川上流のダムから事前に水を放流して流域の被害を防ぐが、見込んでいた量の雨が降らなかった場合でも導水路を通じて揖斐川から水を引いて木曽川の水量を確保できる。」と発言しました。木曽川で、市長が言うようなダム放流して、見込んでいた量の雨が降らなかった例が、今まであったのか明らかにしてください。
3回とも事前放流後に降雨があった
【上下水道局長】これまで、木曽川水系では、2020年度に締結した事前放流の実施方針等に関する「木曽川水系治水協定」に基づき、事前放流が3回(2020年7月豪雨、2021年8月の大雨、2022年台風14号)実施されましたが、いずれも事前放流後に降雨がありました。
一方で、事前放流を実施する態勢に入っても、結果として事前放流に至らなかった事例が多いことや、気象庁の資料によると、線状降水帯の予測確率は3割程度と低いため、正確な雨の予測は大変難しい。
こうした現状や近年の水害の激甚化等を踏まえ、今回の提案は、現在の事前放流とは異なり、木曽川の治水能力をさらに向上する施策として、新用途の導水を通じて河川の流況を確保することを前提に、積極的な事前放流等を行い、ダムの洪水調整機能のさらなる強化を図るものです。
堀川浄化:木曽川から堀川へ流す実験をしたが、効果や課題は
【江上議員】堀川浄化では、以前に木曽川から上水道を通じて鍋屋上野浄水場まで引き、その後雨水幹線を使って、堀川へ流す実験をしています。一日当たり最大どのくらいの水量を流したのか。その効果がどうであったのか。実験の結果、どのような課題が明らかになったのか。回答を求めます。
水質は改善したが新規水源の確保が必要
【緑政土木局長】堀川では、木曽川導水社会実験として、2007年4月から2010年3月までの3年間導水を行い、導水後の事後調査を2012年3月までの2年間実施した。
導水量は最大で毎秒0.4m3、一日当たり約3万4千m3であり、導水の効果としては、堀川中流域の納屋橋付近まで、水質の改善を確認しました。
現在、河川整備に合わせたヘドロの除去や合流式下水道の改善、瀬・淵の設置による直接浄化などの浄化施策を進めているが、課題として、河川整備計画における水質目標値を達成するためには、新規水源の確保が必要であることが判明している。
国交省のダム管理能力を信用しない議論だ。市長があげる3つの提案に根拠はない。導水路事業再開発言は撤回を(再質問)
【江上議員】おいしい水は、木曽川も良質であることに変わりありません。余裕がある木曽川の水で、市民は十分においしい水を飲むことができます。
ダムの事前放流後に予測していた雨が降らなかったことは「協定」に基づく事前放流が行われるようになったこの3年間はない、と回答がありました。「ダムが空になったら」ということで例に出されましたが、例はないし、そもそも国土交通省の河川管理者としての管理能力や情報能力を信用しない発言に聞こえる。また、1994年の大渇水で、ダムの水が空になっても80万トンの給水可能量があったのは質問で述べたとおりです。
木曽川の水を使った堀川の浄化実験では、堀川の浄化に効果があったことは示されました。一日当たり最大で約3万4千トンの使用でした。木曽川の給水可能量はまだ80万トンあるわけですから、木曽川で十分賄える量じゃありませんか。
市長の提案では、「堀川への恒久的な導水」を求めていますが、河川の水を使うということに関しては、水利権の問題があると考えます。
3つの提案は導水路を再開せんがために過去の事例から見ても根拠はないし、施策を進めていると言われたが解決に至っていない。水利権という大変大きな問題を含む発言であり、市民を惑わすような発言は認められません。
さらに問題がある。今年度から水道事業が赤字になっている。9億円。来年度も赤字で計上している。コロナ過で事業所の水利用が減っているだけではありません。これから少子高齢化問題もあります。経営が厳しくなっている。市民に安心・安定した水の供給のためにも、支出を減らすことが必要な時です。その時に過大な水需要予測、かつ市長の新たな取り組みでさらに支出を増やす、こんなことは許されません。明治用水や静岡の事故を例に挙げて再開の理由にしているようだが、しかしまず、原因がどこにあったのか、どうしたらいいのか、そうした究明をもっと行うことが必要です。今新たな施策を持ち出す段階ではありません。
そこで、市長に質問します。今回の発言は撤回することが市民への水道供給の安心・安全につながります。発言の撤回を求めます。
撤回しません。作ってしまったものを無駄にしない提案だ(市長)
【市長】撤回しません。いろいろ言われたし、私らも反対していた。しかし作ってしまった。学者にも毎年のように意見を聞いている。毎年2億かかるし、実際ズーと払っていくとトータルで700億円だと。どうしたらええんだね。まさか壊すという話はないわね、そりゃないでしょとか、毎年のように聞いていました。前からお付き合いがある反対派の意見聞いて、一人の人は何でもいいからやめればいい、金なんか払わんでいいといった人もいる。それはできんと思います。正式に名古屋市が約束していますので払い続けないかん。もう一つは、みんなで相談して活かすなら活かすという方向で考えたらどうかという話もありまして。用途を変え、名前も変えようというほうが名古屋市民のために一番なるんじゃないかと。決してほかっておくことが名古屋市民のためになるとは思えません。伊勢湾の浄化という意見もあったが、具体的な案にまで行かなかった。そういうことで今回は一つの提案をさせていただいた。税金を無駄にしないようにしていくのが市長の仕事なので一定の判断をさせていただいた。
過大な投資でなく、コロナ禍と物価高騰から市民の命と暮らしを守る名古屋市政実現に全力を(意見)
【江上議員】市民に安心・安全な水を供給するということが名古屋市の使命だということは十分承知している。これを継続的にやっていく必要がある。429億円、この支出について日本共産党は反対したが、木曽川導水路事業ももちろん反対しています。さらに新たに50億、これも反対です。安心・安全な供給、これからの少子高齢化、こういうことを考えたらここでしっかりと止まって、もっと議論する、他市町村とももっと議論する、丁寧な行動こそ市長の見識だと、私は思います。
3つの項目について市長に対して、発言の撤回や事業の中止を求めましたが、認められませんでした。過大な投資でなく、コロナ禍と物価高騰から市民の命と暮らしを守る名古屋市政実現に全力を尽くすことを申し上げて質問を終わります。
キーワード:大型開発・ムダ遣い見直し、江上ひろゆき