2023年2月議会
さいとう愛子議員の予算反対討論(2023年3月16日)物価高騰やコロナ禍から市民の暮らしを守り、福祉・医療・教育など市民の願い実現の応援を
【さいとう議員】私は、日本共産党名古屋市会議員団を代表して、2023年度一般会計予算に反対する立場から討論を行います。
いまこそ市民を守る取り組みを
新型コロナ対策の「まん延防止等重点措置」は解除されましたが、本市の新規感染者数は依然として高い水準にあります。ワクチンの3回目接種を急ぐとともに、無料のPCR等検査の拡充、高齢者・障害者施設に学校や保育所などを加えた定期的検査の実施、保健所・保健センターのさらなる体制強化など、コロナから市民の命と健康を守る取り組みの一層の強化を求めたいと思います。
コロナ禍と物価高騰でくらしが厳しい――アンケートの声で明らかに――
3年以上にわたるコロナ禍の上に、物価高騰が追い打ちをかけ市民生活がかつてなく厳しい状況となっています。日本共産党市議団が行った市政アンケートには約1万通の返信をいただきましたが、コロナ前と比べ暮らし向きが悪くなったという方が6割にも及び、2年前のアンケートの時より、大幅に増加しました。「仕事の時間数が減り、生活が厳しくなった」「収入が減ったが物価は上がった。家にいる時間が増え光熱費が上がった」など20代30代の若い世代も、物価高騰を訴える声が目立ちました。
こんな市民の悲痛な声に対し、暮らし・営業を守る施策が必要ですが、市民の声に名古屋の市政は応えているでしょうか。
憲法の義務教育は無償の立場で学校給食費の無償化を
子育て家庭にとって、学校給食費の無償化が有効であり、私たちも求め続けてきましたが、今2月定例会では、ほとんどの会派のみなさん、減税日本以外の方々ですが、学校給食費無償化を求められました。約11万人の小学校の給食費無償化には、約47億円が必要です。物価高騰に対する支援策というだけにとどまらず、保護者負担の軽減、子育て応援の施策として、全国でも無償化・一部無償化に踏み切る自治体が増えています。にもかかわらず、市長の答えは相変わらず、就学援助制度を充実させるとの従来の答弁にとどまり、給食費無償化は「金持ち優遇になる」という答弁でした。非常に残念です。
私たちが求めている給食費無償化は、「義務教育は無償とする」という憲法26条にのっとり、全て国民は等しく教育を受ける権利を有しており、親の所得にかかわらず、それを保障するためのものです。憲法の原則には所得制限という考え方はありません。まず小学校の給食費無償化に踏み出すよう強く求めます。
市民負担増の予算は許されない
市民生活が悲鳴をあげているときに、新年度予算はどのような提案がされているでしょうか。私たちが反対する主な理由を申し上げます。
国保料(介護分除く)が1人平均で年10,000円以上の引上げ
第1に、均等割国民健康保険料が大幅に値上げとなったことです。1人平均で年10,466円の値上げです。医療給付費の増大に加え、国による一般会計からの繰り入れを解消する方針に名古屋市が従い、保険料賦課率を来年度から段階的に引き上げることによる影響です。障害者、高齢者、非正規労働の若者も加入する国保は「払える保険料を」というのが切実な声です。この保険料値上げを食い止めるために、一般会計からの繰り入れをさらに増やし値上げをやめるべきであり、減税を標榜するなら、負担が重い国保の保険料値上げを行わないことの方が求められます。
金持ち減税の財源づくりに市民サービスを民営化し職員を削減
第2に、減税の見返りに行革を行うことが求められ、教育や保育、療育の分野まで民営化が広がり、人件費の削減が進められていることです。
公立保育所は124カ所から87カ所に
124あった公立保育園は来年度87となります。公立保育園を78か所まで減らす計画を、コロナ禍のもとでもおし進め、行事すら共同して経験できなかった「引き継ぎ保育」に保護者は不満を持っています。
療育センターも経験豊かな職員が変わって子どもへのストレスが不安
北部地域療育センターは来年度民間移管となります。移行協議会への意見には、「経験のある市職員による移管後のアフターフォローを充実してほしい」「障害児療育の経験のある職員の配置をしてほしい」など今の職員をできるだけ変えないようにして、子どもたちへの負担を減らしてあげたいという保護者の気持ちがあふれています。もともと公立の地域療育センターとして本市が責任を持って築きあげてきた療育センターをなぜ民間に移管しなければならないのでしょうか。療育を受けている、環境の変化に敏感な小さな子どもたちに負わさなくてもよいストレスをかけてしまいました。療育の分野では、市として責任をもって心配なお子さんをできるだけ早く支援できるよう専門的な体制を厚くつくることにこそ、もっと力を注ぐべきで、子どもたちへの負荷がかかる大きな変化は行うべきではありません。
市立図書館の指定管理は9館に拡大
また、公立図書館は、「なごやアクティブライブラリー構想」によって、来年度から指定管理館が一気に4館増え、21館中9館となり、市の正規職員の司書が大幅に減ります。1ブロック1館しか直営館を置かない「構想」の下では、継続的安定的雇用によって高い資質を培い、図書館ボランティアなど地域で図書館活動を広く支える人材の養成にもかかわる正規職員の司書を減らすことになり、今すでに年齢構成などがアンバランスになっている図書館の質的維持が非常に懸念されます。「知の拠点」として社会教育施設である図書館は指定管理者制度にはなじまないことは明らかです。「なごやアクティブライブラリー構想」の撤回を求めます。
市民税減税で6700万円もの減税。8割の人は1万円以下
第3に、市長が「1丁目1番地」という市民税減税は、所得格差を広げるものでしかないということが顕著に示されたことです。
市長が固執する「市民税減税」は、これまでも指摘してきたように、230万市民の半数は、非課税世帯、扶養など控除対象者であり、直接市民税減税の恩恵がありません。さらに、市民税減税を受ける納税義務者であっても、減税額1万円以下の人が8割を占め、減税額の総額の6割を残りの高額所得者を含む2割の市民が受けるというものです。特に今年度の減税最高額は6700万円の見込み。数百億円もの収入となる人に減税が必要でしょうか。市民税減税額は96億円にものぼります。この巨額の減収分を作り出すために、行政改革で挙げられているのは、先ほど示した人件費削減であり、学校統廃合や名古屋市厚生院特別養護老人ホームの入所縮小です。市民税減税によって、市民サービスの低下がもたらされています。
市民税減税分があれば、親の収入に関わらず、子どもたちの学校給食費無償化が実現できるではありませんか。今年度の数百億円という収入の方への巨額減税は、市民税減税の「正体」を顕著に示したものです。
不要不急の大型事業が新たな市民負担増に
第4に、見通しのない大型事業を続け、もっと拡大しようとしていることです。
問題だらけの天守閣木造復元
1つ、名古屋城天守閣木造復元事業です。市民合意もなく、強引に進められています。天守閣地下1階の穴蔵石垣の調査で、近世の遺構が出てきていますが、それ以上は、「解体後の調査」でしかわからないまま、特別史跡現状変更申請にあたる基本計画を文化庁に提出しようとしています。基本計画作成のための実施設計費や、木材の保管料を計上する特別会計予算に、2億6,700万円余の貸付は認められません。また、現天守解体を前提として博物館建設を行うことも認められません。
事業の財源は、「税金投入でなく、入場料収入によって」進めるとしています。しかし、コロナ禍以前の入場者数から見ても、コロナ禍後の、交流人口や観覧の在り方を見ても入場料収入では賄えず、税金投入となるのは必至であり、収支計画は破綻しています。
以上のことから、事業は中止し、建設会社との基本協定を解除し、名古屋城天守閣木造復元関連経費は削除する必要があります。
高速道路の名古屋駅アクセス
2つ、名古屋高速道路公社への出資です。今回、名古屋駅地区や栄地区を含む都心部と高速道路とのアクセス性向上を図る出入り口の建設が目的とされていますが、高速道路建設の「都心への自動車流入を減らし渋滞を解消する」という基本的な理念に全く反する計画であり、地域住民にとっては、住環境を低下させ犠牲を強いるものとなります。この市民犠牲の事業に、総額約1200億円もの巨額投資を行うことは問題です。
需要見通しもない第二滑走路
3つ、中部国際空港第二滑走路整備です。現在、第二滑走路整備に向けて環境影響評価が行われていますが、この環境アセスでは、滑走路整備の目的の中に将来の航空需要への対応がありません。そのため、国土交通大臣からも、「環境影響評価手続を進めるに当たっては、社会状況の変化等に応じ、可能な範囲で航空需要予測を実施し、今後の環境影響評価に反映させること」との意見が提出されています。
第二滑走路は、法律で定められている中部国際空港に関する基本計画の見直しがなされないと整備はできません。将来の需要が見込めるから2本目が必要とならなければ、国は基本計画を見直さないのではないでしょうか。第二滑走路の必要性を判断する一番のメルクマールは将来の需要見通しであり、これを脇に置いて整備を急ぐことは認められません。
水余りなのに木曽川導水路の再開
4つ、市長が、今年2月突然発表した木曽川水系連絡導水路事業の再開です。一般会計からも徳山ダムや木曽川水系連絡導水路事業に支出されています。①揖斐川からのおいしい水の確保 ②治水対策 ③堀川の浄化の3つを理由にしていますが、もともと2009年4月市長自身が「水は余っており、導水路は不要と」撤退を表明したものです。現状において、本市の給水量の実績は80万トン前後、給水可能量は160万トンで、市長が導水路事業から撤退したときと同様、水は十分に供給されています。木曽川のダムが空になった例は過去に無く、大渇水といわれる1994年の渇水時においても給水量は確保しています。
すでに建設された徳山ダムの負担金だけでも、新年度以降、工業用水道事業と合わせ、約97億円。管理料毎年約2億円。その上に、木曽川水系連絡導水路事業の市の負担金として国の補助も含めて約120億円に加え、さらに市長は、揖斐川からの新たな導水管布設で約50億円の負担を市民にさせようとしています。こんなとんでもない過大な投資を認めることはできません。
市長がかかげた3つの理由は、過去の事例から見ても根拠はなく、導水路を再開せんがために、水利権というたいへん大きな問題を含む発言であり、建設容認の発言は撤回することを求めます。
子どもたちの豊かな未来へ、市民の暮らしや営業を支え、高齢期が安心して迎えられる市政に
以上、市民生活がかつてない困難に直面している時に、市長のこだわる金持ち優遇の市民税減税を漫然と続け、市民サービスを低下させ、将来に渡って過大な負担を負わせる数々の大型事業を行おうとする新年度予算には、到底賛成できません。
今こそ、子どもたちの豊かな未来のために、市民の暮らしや営業を支えるために、高齢期が安心して迎えられるために、市政を切り替えようではありませんか。
日本共産党は、市民の命、暮らし、福祉を守る市政のために全力を尽くす決意を申し上げ、討論を終わります。
キーワード:子どもと教育、環境と防災、まちづくり、大型開発・ムダ遣い見直し、平和と人権、市民生活、税、地方自治体と住民参加、さいとう愛子