市総合リハビリテーションセンター 附属病院と福祉部門の運営が別法人に

医療と福祉の総合的・一体的・一貫性ある支援の継続を

 9月議会本会議で岡田ゆき子議員は、市総合リハビリテーションセンター附属病院(瑞穂区)の名古屋市立大学移管に向けた条例改正案等について質疑しました。

相談→医療→訓練→社会復帰 トータルで支援する県内唯一の施設

 同センターは、障害のある人の相談から医療、訓練を経て社会復帰に至るまでの総合的で一貫性のあるリハビリテーションを提供する県下唯一の施設。運営は名古屋市総合リハビリテーション事業団が行なっています。
 市は有識者等による「今後の名古屋市総合リハビリテーションセンターの役割検討に係る懇談会」の議論を踏まえ、附属病院の運営主体を2025年4月に市大に移管する方針。そのための条例改正案と改修工事の補正予算案が今議会に提案されています。
 岡田議員は、昨年11月に出された有識者懇談会の「まとめ」のなかで、附属病院の市立大学病院化を見据え、福祉部門と連携の上で、センターが今後推進すべき役割として求めている、三つの役割を紹介(下参照)。

「市総合リハビリセンターが今後推進すべき役割 有識者懇談会の「まとめ」より
①障害者リハビリテーションの中核施設として、地域リハビリテーションを推進し、地域共生社会の  実現に貢献する。
②障害者リハビリテーションに関する医療機能・研究・人材育成の充実を図る。
③相談から医療・訓練を経て、社会復帰に至るまでの総合的・一体的・かつ一貫性のあるリハビリテーションを安定的・継続的に提供する。

高次脳機能障害、視覚障害からの社会復帰、職場復帰に大切な役割を担う」(局長)

 岡田議員はさらに、センターが現在担っている役割として「特に、事故や病気などで高次機能障害、視覚障害者となった人の就労等社会復帰に向け、医療と福祉の総合的、一体的かつ一貫性のあるリハビリを行っている」と指摘し、同センターに対する市の評価を求めました。
 答弁にたった健康福祉局長は「センターは医療・福祉の総合施設であり、特に高次脳機能障害や視覚障害を有する方に対し、医療から福祉の切れ目のない支援を行うことで早期の職業復帰を果たすなど、大切な役割を担っていると認識・評価している」と述べました。

なぜ病院だけ切り離すのか

 岡田議員は、医療(附属病院)と福祉(障害者自立支援部門)が一体の現行体制から附属病院だけを切り離し、運営主体を2つの法人に分ける理由を問いただしました。
 局長は「附属病院は医師などの確保や収支状況の改善等、運営上の課題を抱えている。附属病院を移管することで、市大には将来を見据えた新たな特色のある医療・リハビリの提供、先駆的・先進的な研究の推進、質の高い医療人の育成などを期待している。福祉部門は経験やノウハウを活かし、特に高次脳機能障害や視覚障害を有する方の社会復帰に向けた、専門的・総合的な支援の充実を目指したい」と述べました。

どうなる医療・福祉の一体的連携

 岡田議員は「医療、自立支援訓練、復職を含めた社会復帰まで一貫した総合的施設は全国に数か所しかなく、全国的に貴重な実践・研究の場となっている」と強調。
 岡田議員は、自身がセンターで行なった調査に触れ、「現行では医療・福祉両部門が電子カルテを共有し、垣根なくスタッフが行き来するなど、一貫したリハビリによる支援ができている。附属病院を切り離すことで、医療と福祉の一体的な連携はどうなるのか」と質しました。

「医療から福祉への切れ目のない支援を、地域に拡大する。高次脳機能・視覚障害者の支援強化に取り組む」(局長)

 これに対し局長は「センター内で行ってきた医療から福祉への切れ目のない支援を地域に拡大できるよう、市大はもちろん地域の医療機関等とも連携し、これまで支援に繋がっていなかった高次脳機能障害や視覚障害のある方への支援の強化に取り組みたい」と答弁しました。

職員や障害当事者の不安払しょくが不可欠

 岡田議員は「引き継ぐとされる支援をどう担保していくのか、市は市大や事業団と検討することになるが、職員や障害当事者等の不安を払しょくし、地域の医療機関と合意形成を図らなければならない。有識者懇談会が求める3つの役割を安定的・継続的にどう提供していくのか、引き続き委員会審査で確認していく」と述べました。

キーワード: