後期高齢者医療広域連合議会 2024年8月定例会 2023特別会計決算での質疑(岡田ゆき子議員・2024年8月19日)
窓口負担割合の見直しの影響について
【岡田議員】
通告に従い、順次質問します。2022年10月より、医療費の窓口負担割合の見直しがされました。これまで1割負担だった方のうち、課税所得が28万円以上、年金収入、その他合計所得が独居で200万円以上、2人の場合320万円以上の被保険者の窓口負担が2割負担となりました。2023年度予算質疑の際、窓口が2割になる方の影響額について問われ、答弁では、国の推計方法を使い、窓口負担が2割となることで、123億円の医療費減となるとの説明でした。つまり、総額123億円は2割の方の負担増分になると考えられます。
新たに2割負担となる方に対して、3年間の配慮措置が行われていますが、開始から3年後の2025年10月からは配慮措置も終了します。2023年度は2割負担が通年で実施されましたが、窓口負担割合の見直しによる影響について2点お聞きします。1点目、前年度と2023年度の医療費と伸びについて、また、一人当たりの医療費をお聞きします。2点目、窓口負担割合ごとの高額療養費について、2割負担が始まる前の2022年4月~9月、2023年の4月から9月の一か月一人当たりの平均高額療養費をおききします。
【給付課長】
窓口負担割合の見直しの影響につきまして、1点目の、医療費および一人当たりの医療費の伸びについてでございます。医療費につきましては、令和5年度におきまして、総額で、1兆539億7千3百万円余でございました。こちらは、令和4年度の9,834億5千1百万円余と比べますと、約7.2%の伸びとなっております。また、被保険者一人当たりの医療費につきましては、令和5年度において986,585円でございました。こちらは、令和4年度の958,878円と比較しますと、約2.9%の伸びでございました。
令和5年4月から9月と、前年度の令和4年4月から9月における、一月当たり、被保険者一人当たり平均の高額療養費の比較についてでございます。令和5年4月から9月における一月当たり、被保険者一人当たり平均の高額療養費につきましては、被保険者全体では4,724円、負担割合別でみますと、1割負担は3,463円、2割負担は7,388円、3割負担は7,689円でございました。窓口負担割合が2割の被保険者の方については、1か月の外来医療の窓口負担割合の引き上げに伴う負担の増加額を3,000円までに抑える配慮措置が、令和7年9月までの3年間講じられております。この配慮措置は、高額療養費制度において適用されるものであるため、適用があった場合における給付金額については、高額療養費全体、および、負担割合別の内訳においては2割負担の区分に含まれているものでございます。前年度の令和4年4月から9月における高額療養費につきましては、一月当たりの、被保険者一人当たり平均での高額療養費は、被保険者全体では3,307円、負担割合別では、1割負担は2,942円、3割負担は7,128円でございました。令和5年度と令和4年度の同期間において比較いたしますと、被保険者全体の平均において、およそ42.8%増加しております。この増加につきましては、先にお答えしました一人当たり医療費の伸びによるもののほか、2割負担の開始により1割負担に比して高額療養費に該当しやすくなったこと、および、2割負担の方の負担を抑えるための配慮措置の効果によるもの、に起因するものと考えております。
【岡田議員】
まず、医療費の伸びについてですが、総額では7.2%の大きな伸びだったとの答弁でした。事業概況を見ると、被保険者数は前年に比べ約104%に伸びています。医療情勢による影響もあると思いますが、被保険者数が増えれば医療費も増えるのは理解できます。一方、一人あたりの医療費の伸びは2.9%で、医療費や被保険者数の伸びに比べ低い。私はここからも、医療窓口の負担が2割となったことで、医療控えがあるのではないかと考えます。2割負担が導入される前後の高額療養費を負担区分ごとに答弁していただきました。配慮措置があった昨年度では、配慮措置がある分、高額療養費に上乗せされているということですが、これまでは高額療養費を使うまでの医療負担がなかったものが、2割負担となって、窓口負担が大きく増え、高額療養を使う結果となったと思われます。物価は高騰し高止まりが続いています。昨年度、年金額は上がりましたが、物価高騰に見合う引き上げではありません。制度見直しによって、2割負担となった被保険者の生活実態は厳しくなり、現に2割負担となった名古屋市内の男性は「様々なものが値上げされる中、妻の介護に関わる出費も増えており、自分の毎月の受診と薬代が2割では捻出できずに、薬を間引いて飲んでいる、受診は毎月必要だが2か月に一回の受診にしている」といわれました。こうした実態は、重症化を招くものです。
そこで、広域連合として、2割負担対象者に対し、国へどんな要望をしているのか、再度答弁を求めます。
【給付課長】
2割負担対象者に関する国への要望につきましては、当広域連合も含む全国後期高齢者医療広域連合協議会より、令和5年6月7日付けで、国に対し、窓口負担の見直しで特に中間所得層の負担感が増しているなか、今後の窓口負担のあり方については、2割負担導入の影響や後期高齢者の生活実態を把握し、短期間のうちに基準等の見直しによる2割負担以上の被保険者数を増加させる制度改正は行わないこと、また、3年間の配慮措置の期間経過を見据え、被保険者が安心して受診できる環境の維持・整備を国の責任において検討すること、を要望しております。
【岡田議員】
窓口負担について、これは、受診行動にも大きく影響する問題で、来年9月までは配慮措置が続きますが、過ぎれば完全に窓口負担は2倍になります。暮らしが厳しい上に、さらに必要な医療の負担が増えることになりますから、広域連合協議会が、国に対して、2割負担増の影響や後期高齢者の生活実態の把握を要望していることは重要であり、医療控えによる重症化などあってはならないことだと考えます。そのうえで、2割負担化を通年で実施した決算は認められないと申し上げますが、広域連合として、受診状況の分析を丁寧に行うこと、配慮措置が終了する来年9月までに、医療控えを起こさないためにどうしていくのか、厳しく求められていると指摘し、質問を終わりします。
保険料について
【岡田議員】
保険料に関して4点お聞きします。
1点目、昨年度の短期保険証交付者数と、短期保険証を交付した自治体数を聞きます。
2点目、昨年度の差し押さえ件数と、差し押さえを実施した自治体数、差し押さえ対象のうち年金の件数を聞きします。
3点目、保険料を滞納した被保険者に対し、支払い能力がない等と判断されると、「処分停止」の後に「不納欠損」として債権が取り消されます。過去3年間の不能 不納欠損となった件数と、その主な事由をお聞きします。
4点目に、保険料の減免を受けた方の過去3年間の推移と減免の主な理由をお聞きします。
【管理課長】
保険料について4点ご質問いただきましたので順次お答えいたします。1点目の短期被保険者証交付者数及び短期被保険者証を発行している自治体数についてですが、令和6年3月末時点で交付対象者数は757人で、39の自治体で交付しています。
続きまして、2点目の差し押さえ件数と実施自治体数、差し押さえのうち年金の件数についてお答えいたします。差し押さえの件数は331件、18の自治体で実施しており、そのうち年金の差し押さえ件数は106件となっております。
続きまして、3点目、過去3年間の不納欠損対象者数と主な事由についてお答えいたします。不納欠損の対象者数は、令和5年度が2,271人、令和4年度は2,131人、令和3年度は2,139人となっています。これらの主な事由としましては、納付資力が乏しいことや、納付相談が進まなかったことにより時効が成立したものとなります。
続きまして、4点目、保険料の減免を受けた被保険者の3年間の推移と減免の主な要件についてお答えします。保険料の減免につきましては、令和5年度が583件、令和4年度が381件、令和3年度が284件となっています。主な減免理由ですが、いずれの年度におきましても災害などにより住宅等に著しい損害を受けた方や、失業等により著しく所得が減少した方が対象となっています。
【岡田議員】
短期保険証を交付しているのは、54自治体中39自治体で、3割の自治体は交付をしていないということでした。事前にお聞きしたところ、短期保険証を交付されている方の92%は所得200万円以下です。うち、約30%の方は均等割保険料の7割軽減を受けている方です。
保険料の減免の数字をお聞きしましたが、過去3年見ても、昨年度は大きく増えているということです。収入減少を理由とした減免制度がありますが、愛知県広域連合の場合の要件は、前年所得の1/2の減少であり、当年見込み所得が100万円以下で、減免されるのは所得割保険料のみを対象としています。所得割保険料のみでなく、均等割保険料も含めるなど減免制度の見直し検討すべきではないですか、他の広域連合の減免制度や実施状況など調査も求めますが見解をお聞かせください。
【管理課長】
収入減少を理由とした減免について、条例による減免費用の財源については他の被保険者の保険料から補填することとなり、前年収入額の引き上げによる要件の緩和や均等割額を対象とすることは他の被保険者の負担になることから現時点では検討する予定はありません。
なお、例年、厚生労働省が全広域連合の減免実施状況を取りまとめております。それによりますと、当広域連合における収入減少を理由とした減免適用件数は全国的に見ても多いことから所得が減少した方に対する一定の減免効果はあるものと認識しています。
【岡田議員】
保険料について、収入減少を理由とした保険料減免適用件数が全国広域連合の中でも、愛知県は多い方だとのことでした。それは、減免要件によるものなのか、被保険者数が多いから相対的に多いのか、もう少し分析が必要だと思います。
所得激変の要件は、愛知県広域連合の場合、前年所得650万円以下であって、1/2以上減少し、かつ当年見込み所得が100万円以下の要件でなければ、減免の対象となりません。名古屋市国保の場合は、前年所得1000万円以下で2/10の減少で、かつ当年所得274万円以下という要件です。対象を拡大することで、払える保険料となれば、滞納を減らし、保険料の収納率も上げることになります。検討いただきたいと思います。
予防・健康づくりの取り組み・医療費適正化の事業実施推進を支援するための「インセンティブ」について
【岡田議員】
つぎに、予防・健康づくりの取組、及び医療費適正化の事業実施推進を支援するための「インセンティブ」について2点お聞きします。
1点目、インセンティブ交付金等を使った事業として、昨年度は、健診の際に、血清クレアチニン・血清アルブミンの項目が加わりました。これらを加えることとした目的をお聞きします。
2点目、これらにかかるインセンティブ交付金等の予算に対する決算とその評価はどうだったのでしょうか。
【給付課長】
予防・健康づくりの取り組み・医療費適正化の事業実施推進を支援するための「インセンティブ」についてお答えいたします。
1点目の、項目として加えることとした目的でございます。愛知広域では、従来健診において国の特定健診の基本的な項目を必須項目とし、医師が必要と判断した場合に実施する詳細項目を行っておりました。令和5年度より血清クレアチニン検査は詳細項目と市町村の判断で追加できる任意項目とで対応、また血清アルブミンについては健診項目に該当がないため、新たな委託料を新設し任意項目で追加いたしました。これは健診結果から対象者を的確に抽出し、糖尿病性腎症重症化予防等、健康課題に応じた支援につなぐ高齢者の一体的実施をはじめ、市町村における保健事業の充実を図ることが目的でございます。
次に2点目の、予算に対する決算比ですが、血清クレアチニン検査の令和5年度予算は、39万1,903件で4,702万8,360円。決算は31万5,213件で2,836万3,413円でございました。一方、血清アルブミン検査の令和5年度予算は、任意項目14万8,923件で 1,787万760円、決算は11万3,184件で1,088万8,063円でございました。令和4年度と比較しますと、血清クレアチニン検査は10万1,445件増で、944万8,286円増でございました。また、健診全体でみますと、令和4年度事業総額36億7,467万7,904円 に対し、令和5年度は 38億9,504万4,000円で、健診委託料は約6%増加しました。健診受診者数(受診率)の速報値を比べると、令和4年度は、34万8,815人(34.63%)、令和5年度は、36万5,358人(34.81%)と増加いたしました。これらの件数、金額の状況から、検査項目の拡充は一定の効果があったものと評価しております。
【岡田議員】
最後に、インセンティブ交付金等を活用した、健診項目についてお聞きします。血清クレアチニン、血清アルブミンともに、高齢期の糖尿病性腎症の発見、低栄養状態の早期発見になり、特に、低栄養は要介護状態や寝たきりの原因の一つとして重要視されていると、臨床栄養医学分野では指摘されています。これらを必須項目に加える広域連合の取り組みを参考に、「詳細項目」「任意項目」から「必須項目」へ格上げとする検討を求めますが見解をお聞きします。
【給付課長】
愛知県を除く東海北陸ブロック5広域の状況は、血清クレアチニン検査は3広域が必須、2広域が詳細項目としており、血清アルブミン検査は2広域が必須項目での実施でした。
令和5年度の拡充により市町村で実施した血清クレアチニン・血清アルブミン検査を委託の対象としたことから、国の動向を注視し、健診受診率の向上、計画的な予算執行を推進し、一体化実施での取り組み等評価を加えながら、必要な対象者に検査が行き届く任意項目として支援を行っていきたいと考えています。
【岡田議員】
平均健診率は上がったとのことですが、事業概況を見ると、54自治体のうち、28自治体、半分以上は健診率が下がっています。昨年度から、病気の早期発見、健康維持の指標として血清クレアチニン、アルブミンの検査を委託料の対象としましたが、これらの項目を健診に取り入れている自治体は全部ではないと聞いています。東海北陸5県のうち、広域連合として必須項目に入れているところがあるとの答弁です。特に、クレアチニンについては、高齢者の腎機能障害が予後に大きく影響することから、健診を奨励するきっかけとなるよう、広域連合の特定検診の必須項目に入れることを改めて要望します。