2024年9月定例会

田口一登議員の議案外質問(9月18日)弥富相生山線の折衷案は撤回し、速やかに道路計画の廃止を

折衷案は道路か、園路か

【田口議員】

通告に従い、弥富相生山線の折衷案について質問します。

 天白区にある相生山緑地を横断する都市計画道路・弥富相生山線については、私は2004年の着工以前からこれまで、代表質問も含めて本会議でのべ8回にわたって質問してきました。今回が9回目の質問になります。

 はじめに、着工から折衷案の検討に至る20年間の経緯を簡潔に振り返っておきます。

 2004年3月に着工された弥富相生山線の建設工事は、河村市長の判断で2010年1月に中断し、2014年12月に河村市長は道路事業廃止などの方針を表明しました。その後、本市は「世界の『AIOIYAMA』プロジェクト検討会議」を設置し、市長方針の具体化の検討に着手しましたが、検討が遅々として進まない中、2019年9月定例会で議決された「総合計画2023」では、「弥富相生山線の道路事業を廃止」する事項が修正削除され、同年11月定例会では「早期開通を求める」請願が採択されました。私たち日本共産党市議団はいずれの議決にも反対しました。

 こうして再び事態が膠着するもとで、2021年3月に開かれた「弥富相生山線の道路建設に係る学術検証懇談会」において、有識者から「折衷案」の検討という意見が出されことを受けて本市は、折衷案の検討を進めてきました。折衷案は、「自然環境と人の暮らしが共生する相生山のみち」というビジョンのもと、弥富相生山線の未整備区間、約180mのつなぎ方を検討するというものです。(右図:都市計画弥富相生山線の整備区間【赤線部分】)

 2023年度には3つの折衷案について市民意識調査が実施されました。3つの折衷案とは、第1案「現地の高さになるべく合わせてつなぐ案」、第2案「緑の山をなるべく残してつなぐ案」、第3案「現地の地形をいっさい触らずつなぐ案」であり、市民意識調査では第3案について「良い」「どちらかといえば良い」とする回答が多数にのぼっています。

 そして現在、緑政土木局は、地元の学区や環境団体などを対象に折衷案に関する意見聴取会を個別に開催し、意見の聴取を進めています。

 そこで緑政土木局長にお尋ねします。折衷案の検討は、市長の了承のもとに進められているという理解でいいですか。また、現在実施されている意見聴取会では、地元の住民や環境団体などからどのような意見が出されていますか。

 私も3つの折衷案の動画を拝見させていただきました。動画を見て、「これは公園内の園路か」というのが、私の第一印象でした。しかし、折衷案のビジョンには、都市計画道路の廃止という方向性は示されていません。折衷案は道路なのか、それとも園路なのか。折衷案の位置づけが明確にされなければなりません。

 先月8月6日、環境団体が河村市長などと話し合う「健康と環境を守れ!愛知の住民いっせい行動」の場で、相生山緑地の自然を守る運動を進めている環境団体の方が、「折衷案は道路か園路か。どっちなのか」と質問された。これに対して河村市長は「緊急車両だけ通す園路だ」と回答されました。環境団体の方が、「園路なら弥富相生山線の都市計画は廃止すればいい」と求めると、河村市長は、道路建設に「賛成の人もいるのでしょうがない」と答え、道路事業廃止を明言されませんでした。このやり取りを聞いていても、折衷案の位置づけが曖昧だと感じました。

 緑政土木局長、折衷案は、弥富相生山線の都市計画の存続を前提にした道路なのか、それとも道路計画を廃止した上での園路なのか。明解な答弁を求めます。

 以上で第1回目の質問を終わります。

緑政土木局長「『道路か、園路か』ではなく」

【緑政土木局長】


 2021年3月に開かれた「弥富相生山線の道路建設に係る学術検証懇談会」において、「地域の方々にとって必要な形で使えるようにするとよい」「現実的な解として折衷案が必要」などの意見を受けて、本市としても「折衷案」が必要と判断して検討を進めているものでございます。

 意見聴取会は地域の方々や市民団体の方々を対象として実施したところであり、時間の都合等でその場で発言できなかった方から郵送等によるご意見を現在も受け付けているところです。(右上図は折衷案の一つである未整備区間を橋でつなぐ案。市は3つの案を示して意見を聴取している)

 これまでいただいた主な意見としましては、折衷案にご理解をいただいている方からは、「環境に影響の少ない橋の案が良い」といった意見をいただいております。また、道路建設を望まれている方からは、「当初の道路計画通りに整備を進めてほしい」といった意見や、道路建設を望まれていない方からは、「折衷案も道路も必要ない」といった意見をいただいております。

 弥富相生山線については、かねてより地域の方々から早期通の要望を受けており、議会においても「道路の早期開通を求める」請願が2件採択されております。一方で、市民団体の方々を中心に「自然環境を守るために道路はいらない」、「都市計画を廃止してほしい」というご意見もいただいております。

 そのような状況の中、令和2年度には、工事中断から10年が経過し、国道302号や名二環の供用開始、地下鉄桜通線の延伸等による弥富相生山線の周辺状況の変化を把握するため、交通や環境等の調査を実施しました。その結果を踏まえ、専門家による科学的な検証を行うため、「弥富相生山線の道路建設に係る学術検証懇談会」を開催しております。

 「学術検証懇談会」では、有識者から「道路をフルスペックではないけども造れば、必要な効果を得ることができる。相生山緑地のような場所をきちんと名古屋にも残しておくという価値観と折衷できる案をこれから考えていくという方向に進めばいいと思う。」などのご意見をいただき、折衷案の検討を進めているところです。 

 そのため、「道路なのか、園路なのか」ではなく、緑地の自然環境に十分配慮し、防災や安全、地域間のつながりや自然とのふれあいなど、部分的になるかもしれませんが、期待されている効果を市民の皆様に還元できるよう折衷案をとりまとめてまいりたいと考えております。

折衷案は道路計画を廃止したうえでの園路ではない

【田口議員】

 緑政土木局長は、「本市としても『折衷案』が必要と判断して検討を進めている」と答弁されましたので、折衷案の検討は、河村市長の了承のもとに進められていると理解させていただきます。

 折衷案の位置づけについては、私は、「弥富相生山線の都市計画の存続を前提にした道路なのか、それとも道路計画を廃止した上での園路なのか」とお尋ねしましたが、緑政土木局長は、「『道路なのか、園路なのか』ではなく」と言って、答弁を避けられました。

 ただ、只今の答弁でも、折衷案は、道路計画を廃止した上での園路という位置づけではないと理解しましたが、緑政土木局長、それでいいですか。

【緑政土木局長】

 平成26年12月の市長表明では「弥富相生山線の道路事業は廃止する」との方針が示されております。しかし、これまで市長表明を実現するための代替案を検討してきましたが、都市計画審議会に諮ることができる案を現時点では持ち合わせておりません。

市長は道路廃止の方針を棚上げするのか

【田口議員】

 「都市計画審議会に諮ることができる案を現時点では持ち合わせていない」」とまわりくどい答弁をされましたが、折衷案は、道路計画を廃止した上での園路ではないということです。

 ここからは市長にお尋ねします。折衷案の検討は、弥富相生山線の道路計画を存続させたままで進めることになります。これは、道路事業廃止という市長の方針と矛盾するのではないでしょうか。

 市長は、2014年12月に道路事業廃止を表明した際に、「速やかに都市計画審議会に諮問」すると明言されています。すなわち、弥富相生山線の都市計画は廃止するというのが、河村市長の方針でした。しかし、折衷案では道路計画の廃止は棚上げされています。

 市長、道路事業廃止という自らの方針を棚上げされるのですか。お答えください。

【河村市長】

 私は全然変わっておりません。いわゆる道路を廃止と園路ということでございます。いわゆるエキスパートですね、専門家の会合をやりまして、そこで折衷案を出すようにという流れでございましたので、その折衷案を成案を得るように、これはせないかんということでございます。現在そういうことで折衷案としての成案をまず作るということをやっているところでございます。

河村市長「折衷案を作った上で都計審にかけて道路廃止」

【田口議員】

 道路廃止という方針は変わっていない。ただ、その専門家からね、折衷案を作れと言われたんで今検討しているとこういう答弁でした。

 市長が2014年に表明された方針は、弥富相生山線道路事業を廃止した上で、都市公園の管理のために公園内に1車線相当の遠路を設けて、下山畑から相生まで繋げるというものでした。しかし折衷案は公園内の園路ではありません。

 道路計画を存続させたまま、折衷案として道路を繋ぐとどうなるか。私が住んでいる相生学区で開かれた意見聴取会で、学区の委員から「緊急車両だけ通すといっても、道路を繋げば一般の車へとだんだん広がっていくんじゃないか」という声が出ていました。

 折衷案の検討を進めていくということは、道路事業廃止という市長の方針を棚上げするものであることは明らかであります。

 市長にお尋ねします。道路事業廃止という方針は変わっていないとおっしゃるんだったら、この徹底折衷案、撤回したらどうですか。

【河村市長】

 折衷案は折衷案で成案得ないかんから、一応エキスパートのご意見をいただいております。そのうえで早く都計審にかけて道路を廃止せよというのを提出しようと私はいってあります。

つなげば一般車も通る道路に

【田口議員】

 その辺そこがね、辻褄が合わなくなってくるんですよ、折衷案のまま進めると、折衷案がまとまって、それで作っていくと、作って繋げてしまえば、さっきも紹介したけれども、都市計画が残ってるんですから、弥冨相生山線という都市計画は。そうすると一般の車を通す、これは元々の計画ですからね、そういう方向に行くんじゃないですか。

 だから市長が言うように、折衷案をまとめた上で、都市計画の廃止と、これはね、そういうのは絶対行かない、今のままだと進んでいかないと私は思っています。

 私は、市長が道路事業廃止を表明された直後の2015年2月定例会の個人質問で、市長の廃止表明を歓迎するとともに、次のように指摘しました。

 「弥富相生山線建設については、地元住民の間で、長年にわたって賛成、反対と意見が分かれてきた問題であることから、道路事業廃止という判断にたいしては、地元住民の間で、歓迎する声がある一方で、反発する声もあります。したがって、地元住民にたいして丁寧な説明を行い、……住民の理解と合意を得ながら進めることが大事だと思います」。

 市長は、道路事業の廃止を表明されるまでは、地元に何度も足を運んで住民の声を聞かれていました。しかし、廃止表明後は、一度も地元に説明のために足を運んでおられません。重大な決断をしながら、自らの言葉で住民の理解と合意を得ようとされない。方針をぶちあげて、あとは役所任せ。これでは行政の長としての責任が問われると思います。

 弥富相生山線をめぐっては、緑政土木局はこの間、通過車両の入り込み対策や島田・野並両交差点の渋滞緩和対策を講じてきており、幹線街路としての弥富相生山線の必要性の根拠はさらに希薄になっています。一方で、生物多様性の保全の見地から相生山緑地の自然環境を保全する重要性が一段と増しています。

 現在検討中の折衷案は撤回し、速やかに弥富相生山線の都市計画を廃止することを求めて、質問を終わります。

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