2025年2月定例会

田口一登議員の2025年度一般会計予算 反対討論 

市民税減税を継続・拡大すれば、                 市民サービス低下は避けられない

 私は、日本共産党名古屋市会議員団を代表して、2025年度一般会計予算に反対する立場から討論を行います。

厳しい財政状況

 いま、物価の高騰から市民生活を守ることが、市政の最優先課題であります。この点で来年度の本市の予算は、市民要求に応える施策が部分的には盛り込まれている一方で、看過できない重大な問題点があります。

基金を取り崩して穴埋め

 その第1は、非常に厳しい財政状況にありながら、大金持ち優遇の市民税減税を継続し、市民の暮らしのための財源を約102億円奪っていることです。

 来年度予算編成にあたっては、大規模施設整備積立基金を約156億円、財政調整基金を130億円取り崩し、財源不足の穴埋めをしています。大規模施設整備積立基金は25年度末には底をつき、次年度以降は当てにすることができません。財政調整基金は、25年度末には約31億円まで減少し、本市の財政規律とされている目標額100億円を大きく割り込む事態に陥ります。

減税額 歴代トップは6717万円

 こうした下でも、市民税5%減税は継続されます。この減税で、今年度の減税額がトップの方は376万円も減税されます。歴代の減税額第1位は、2022年度の6717万円。この方の推計収入額は約224億円だそうです。(下表)その一方で、半数近い市民は減税額がゼロであり、納税義務者のうち約半数は減税額が5000円以下です。まさに大金持ちには〝どっさり〟、庶民には〝ゼロかほんのちょっぴり〟。これが、市民税減税の実態ではないでしょうか。

 広沢市長は、昨年11月定例会での私の質問にたいして、減税の恩恵がまったくない「住民税非課税世帯には別個の施策を打っている」と答弁されました。ところが、来年度は、市民税減税の恩恵がない非課税世帯にも水道料金の値上げが強いられようとしており、低所得者が多く加入する国民健康保険も、わずかとはいえ平均保険料が値上げされ、負担増がもたらされるのであります。

「行財政改革」は限界   「ふるさと納税」も行財政改革?

 市民税減税によって、来年度は約102億円の税収減となります。減税の財源は「行財政改革で賄う」と言いますが、財政局がとりまとめた『令和7年度 行財政改革の取り組み』では、198億円の一般財源をねん出したとされる中に、疑問符の付くものが含まれています。

 たとえば、「ナゴヤ応援寄付金」です。これは、ふるさと納税の「寄付金から募集費用を除いた」分のことですが、本市の場合、他の自治体へのふるさと納税による税収減の方が、本市への寄付額を大きく上回っています。ふるさと納税によって差し引き減収になっているのに、行財政改革の成果として74億円掲げられていますが、理解できません。

102億円を市民の暮らし応援に

 「行財政改革」と称して、新たな財源をねん出することは、限界にきているのではないでしょうか。財源対策に活用できる基金は底をつき、2026年度にはアジア・アジアパラ大会が開催されますが、その最終的な経費はいまだ定かではありません。こうした下での2026年度の予算編成は、大変厳しいものになるでしょう。財政福祉委員会で財政局は、「各局では事業シフトを進め、全市的には市長マニフェストも含めて施策の選択が出てくる」と発言されていました。

 市民税5%減税を継続し、ましてや10%に拡大して税収を約200億円も奪うようなことになれば、市民要求に応えられないどころか、市民サービスの低下が避けられないでしょう。市民税減税は中止し、102億円を取り戻して、物価高騰で苦しんでいる市民の暮らしを支える施策に充てるべきであります。

水道料金値上げ 

 来年度予算の問題点の第2は、無駄に無駄を重ねる徳山ダム導水路事業に財源を繰り出す一方で、水道料金と下水道使用料の値上げを抑えるための抜本的な繰り出しは行わないことです。

 木曽川水系連絡導水路、いわゆる徳山ダム導水路事業にたいして、一般会計からは、地盤沈下対策を名目にした工業用水道事業会計への出資に加えて、来年度からは水道事業会計に負担金の3分の1を繰り出します。

 しかし、徳山ダム導水路は、名古屋市民にとって必要ありません。木曽川からの給水可能量は日量160万立法メートルありますが、一日の最大給水量はその半分の80万立法メートルであり、水は余っています。

福祉減免を非課税世帯まで拡大を

 上下水道料金は、平均的な使用水量がひと月8立法メートルの単身世帯の場合で月額415円、年間で4980円の値上げになります。市民税が減税されている世帯でも、水道料金の値上げで減税分が帳消しになる世帯が少なくないのであります。値(下表)上げを抑えるために、生活保護世帯や障害者世帯、児童扶養手当受給世帯等を対象にした水道料金の福祉減免のための財源を、一般会計で全額負担することは評価しますが、福祉減免の対象を、減免額は考慮するとしても、住民税非課税世帯まで拡大し、低所得世帯の水道料金値上げは中止することを求めます。

大型開発事業を推進

 問題点の第3は、将来世代にツケを残す大型開発事業等を推進していることです。

 名古屋城天守閣の木造復元は、バリアフリー市民討論会における差別発言問題でストップし、その総括が当局において進められている途中であり、事業を再開する見通しが立っていません。この間にも、買ってしまった木材の保管料として、毎年度1億円ずつたれ流しています。天守閣木造化は中止し、戦後市民の復興のシンボルとして建設された現天守閣の耐震改修へと方針転換するべきであります。

 名駅南地下公共空間整備、いわゆる笹島巨大地下通路建設は、都市計画決定や整備事業者選定などが予定され、動き出そうとしています。混雑の緩和のために、笹島交差点から「ささしまライブ24地区」に至る西側の歩道が拡幅されており、地下通路建設に約295億円とされる巨額の費用を投入することは認められません。

 愛知県と名古屋市が10億円ずつ支出する高級ホテル立地促進補助金については、「2025年春に名古屋市で開業する新ホテルに1泊約300万円の部屋を設ける」との報道があるなど、富裕層向けのホテル建設のためであり、手を差し伸べる先が間違っていると言わざるをえません。

 この他、中部国際空港の2本目滑走路建設のための無利子貸し付け、名古屋高速道路のインター・ジャンクションの追加整備も認められません。

給食無償化など予算組み替えを

 先ほどわが会派が提案した予算組み替え案は、市民税減税を中止し、ムダな大型開発の予算を削り、物価高騰から市民の暮らしを守る施策を拡充しようというものです。とりわけ小学校給食費の無償化については、市民の強い要望であり、議会の多数が求めていることから、国に先駆けて無償化に踏み出すことを強く要望して、討論を終わります。

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