11月議会
陽子線がん治療施設の買い入れについての反対討論
江上博之議員
県外患者をあてに
保険もきかぬことを市がやるべきでない
反対討論を行う江上博之議員
11月定例会が終わりました。12月4日、最終日の本会議で陽子線がん治療施設買い入れについて江上博之議員が反対討論をおこないました。その要旨を紹介します。
日本共産党名古屋市会議員団を代表して、陽子線がん治療施設の買い入れ反対の討論を行います。
苦しまないがん治療をしてほしい、というのは、どなたでも望まれることです。問題は、名古屋市が設置し運営することが適切かどうかです。この陽子線がん治療は健康保険適用外で1人300万円かかるというのです。一方、施設整備と維持管理などで245億円、さらに医療運営費が130億円ですから、20年間、毎年20億円づつ名古屋市が支払うという案件です。反対理由は以下3点です。
だれでもかかれる施設ではない
第1に、だれでもかかれる施設ではない点です。1人300万円は、今の非正規雇用労働者の年間賃金より高い金額です。さらに、限られた「がん」しか適用できません。今まず必要な対策は、予防、早期発見、早期治療です。現在、市のがん検診受診率は、胃がんで8.8%、大腸がん15.2%、乳がんで7.4%とたいへん低い段階です。だれでもがん検診を受診できるようにすることが市の第1の仕事ではありませんか。現在、がん検診に市費は10億円程度です。市の健康なごやプラン21の目標値、たとえば胃がん検診は15%を達成し、さらに100%受診を実現することこそ大切であります。
市が設置する根拠がない
第2に、市がなぜ設置するのか根拠がない点です。この施設は1人300万円で年間700人の受診者を見込んでいます。治療費で20億円を賄う計画になっています。不足すれば税金投入です。700人ははじめから220万市民だけでなく、東海三県の患者を見込んでいるというのです。とするなら、県や国が設置することではないでしょうか。
施設整備に市の責任が果たせない
第3は、施設の整備において市の責任が果たされない点です。隣接の(仮称)中央病院の建設は、設計及び工事監理、工事、そして維持管理と分かれて行われています。ところが、本施設はすべてを民間会社1社に20年間ゆだねることになっています。別々だからこそ、安心、安全な施設が維持できるというのが今までの市の方針ではありませんか。
以上、4大プロジェクトを抜本的に見直し、220万名古屋市民のための市政になることを求め討論を終わります。
「がん対策は早期発見が重要」
病院局長やがんセンター研究所長も
日本癌学会が11月2日に名古屋市で行った市民公開講座では、市の病院局長でもある上田龍三名市大教授が、「がん対策で重要なのは、まず予防と発見です。がんが見つかったら、どこでもいつでも誰でも最良の治療が受けられることが大事です。これを『均てん化』と申します」と発言。また、県がんセンター研究所の田島和雄所長も「検診こそ死亡率低下の近道」と発言しています(11.29「朝日」より)。12月1日の財政福祉委員会でくれまつ順子議員はこれらの発言を紹介し、「陽子線がん治療に245億円もかけず検診強化こそ市が取り組むべきだ」と主張しました。
同委員会の審議では、与党議員からも「年間700名の患者確保は疑問。慎重であるべき」との発言もありましたが、健康福祉局は「海外からの需要も見込める」と答えました。
事業者(日立製作所中部支社)への支払額内訳
区分 | 金額(億円) |
---|---|
施設整備 |
約111
|
建物等 |
約40
|
治療装置 |
約71
|
割賦金利 |
約22
|
治療装置の運転・保守管理 建物・設備の保守管理 |
約101
|
消費税等 |
約11
|
計 |
約245
|