新たな「オール与党」の市長独裁体制つくる
「政治ボランティア条例」は「民主主義破壊条例」だ!
11月議会提出の 「政治ボランティア条例」案の概要
第2条(基本理念)
政治の職業化による集権化の進展が、住民の政治や行政への参画の意欲や機会を阻んでいる状況にかんがみ、自発性・無償性に基づく政治を実現するための改革(「政治ボランティア化」)により住民への分権を推進し、住民を主体とする真の住民自治の形成を図る。
第4条(地域委員会制度の創設)
第5条(市民税の減税)
第6条(議会の改革)
市民を代表する職として、またパブリックサーバントとして政治ボランティア化を実現するため、以下の改革に取り組む。
① 議員定数 概ね半減
② 連続3期を超えた在職の自粛
③ 議員報酬 概ね半減
④ 政務調査費 廃止
⑤ 費用弁償 実費支給
⑥ 市民による本会議場における意見表明機会の創設
⑦ 議員の自由な意思に基づく議会活動の実現
⑧ 議員年金制度の廃止に向けた活動
2 議員による条例案の提出等を充実させるための人員配置等の措置。
第7条(市長の多選禁止)
第8条(実施時期・平成21年度末までに制度化を図る)
特異な政治観を押し付ける条例提案
11月20日から始まった名古屋市会11月定例会で最大の話題となっているのが、河村市長が提出している「住民分権を確立するための市政改革ナゴヤ基本条例」案(いわゆる「政治ボランティア条例」案)です。
この条例案は、「地域委員会」「市民税減税」「議会改革」という性格も内容も異なるものを「住民分権の3本柱」とこじつけて一つの条例に押し込んだものです。
しかし、「政治の職業化による集権化」「自発性・無償性に基づく政治」「住民の分権」など条例案に掲げられた基本的な用語の定義も不明で、市長の持論を押し付けるだけの身勝手な内容です。これが否決されたら議会解散の署名運動を始めるとして、議会にせまるやり方は、乱暴きわまる態度です。
「議会は王様」? ねらいは議会の権限縮小と市長優位の体制づくり
河村市長は、「否決、否決、否決で、市長は何もできない」「横暴なのは議会。議会は王様」などと議会を非難していますが、市長の最も重要な仕事である予算についても6月、9月と補正予算が可決(6月は一部修正)しており、事実に反します。
そもそも、首長と議員は、それぞれ住民の直接選挙で選ばれるため、対等平等の関係で、相互の干渉を排除しつつ、適当なチェック・アンド・バランス(抑制と均衡)をはかることによって、双方の公正な権限行使を保障するのが原則です。
提案されている「議会改革」の筆頭に「議員定数半減」が挙げられています。仮にこれが実行されれば、愛知県議選のように定数1の選挙区が出現し、民主主義に不可欠な少数意見や多様な意見が排除されてしまいます。1人を選ぶ市長が民意の集約であるのに対し、議会は多様な民意の反映であるべきなのに、定数削減で議会も「民意の集約」となれば、「分権化」どころか「集権化」です。これでは市長に対する議会の批判・監視権が封殺され、市長いいなりの新たな「オール与党」体制、市長独裁体制の出現となります。
「3本柱」は新自由主義的な構造改革
「減税」と「地域委員会」で「福祉の構造改革」をおこし、予算も地域委員会で使い道を決めるため議会の権限も小さくてよく、議員はボランティアでいい―――河村市長の「3本柱」のこじつけは、結局、新自由主義の「小さな政府論」です。しかも、「定率減税(金持ちはゼロ)」の公約を投げだし、「議員定数10%削減」の公約もいつの間にか「半減」を持ち出す公約違反の条例案です。
議会解散の脅しをかけながら、丸飲みするよう議会にせまるという河村市長の乱暴な市政運営は、民主主義のルールを破壊する暴挙で、許されません。