3月19日 本会議・議案質疑 さとう典生議員・わしの恵子議員
市バス「赤字路線の民間譲渡、
早期退職制度見直し」やめ、交通権守れ
市バス経営健全化計画
外部監査人圧力に屈服し異例の議案出し直し
きわめて異例な議案の撤回
名古屋市の市バス事業は1994年度に経常収支が赤字になり、2008年度末には資金不足が105億円になっています。財政健全化法による経営健全化基準を上回り、市は「自動車運送事業の経営健全化計画」を今年度末までに策定しなければなりません。
この計画策定には個別外部監査が必須で、09年12月25日に川口明浩公認会計士によって「赤字路線の民間譲渡及び早期退職制度の見直し」が必要との監査報告が出されました。しかし、市はこれを取り入れず、川口氏からは今年1月に「監査報告が反映されるべきだ」と意見書まで出される事態でした。
2月19日に上程された「経営健全化計画」(第51号議案)にも、赤字路線民間譲渡などの方針はなく、ついに監査人は市や議会に圧力をかけ、3月15日の土木交通委員会に川口氏を参考人招致して質疑。自民・民主・公明らが意見を盛り込むよう強く迫り、18日、市はついに屈服。19日の本会議で、河村市長は51号議案を撤回し、「民間譲渡・早期退職」を盛り込んで再提案(第91号議案)しました。個別外部監査人の意見で議案を撤回するのは極めて異例です。
「監査人の意見反映は義務でない」
51号議案の撤回について質疑に立ったさとう典生議員は、名古屋食肉公社などの包括外部監査について、市は「あくまで監査人の見解、政策決定は独自に行う」と答えていたことを示し、交通局が外部監査人にとった態度が極めて異常であることを指摘。「外部監査人の働きかけによって撤回されたのではないか」と追及しました。市長は「よりよい計画にするため」と答え、局長は「監査人の指摘は十分踏まえる。義務付けではないがいっそうの健全化のために検討が必要と判断した」と答えました。
審議中の横やりで市政運営に禍根残す
さとう議員は「審議中に横やりが入り、公共交通を守るという立場に重大な変化が起きている。前代未聞の事態だ。このようなやり方は市政運営に禍根を残す」と厳しく批判しました。
赤字路線民間譲渡は公共交通の大後退に
続いて再提案の91号議案の質疑に立ったわしの恵子議員は、新たに加わった「いっそうの健全化に向け、赤字路線の民間譲渡、早期退職制度の見直しについて検討する」という方針について、「交通局はギリギリの努力で公共交通を守ってきたことから転換し、市民の交通権を守る使命を後退させるものになる」と市の姿勢を追及しました。
名古屋市の交通事情を生かした計画に
わしの議員は、「監査人の意見をすべてを盛り込む必要はない」との立場から、名古屋市の交通事情が東京や大阪と違い公共交通の比率や市街地の人口密度が低いことを明らかにして、「すでにこの間26路線も廃止してきた。赤字路線を民間譲渡すれば廃止が促進される」と指摘。交通局長は、「民営バス事業者が相次いで撤退しており、受け手となる事業者が存在するか大きな課題がある」と、民間譲渡の困難さを認めました。
早期退職制度も効果は薄い
わしの議員は50歳以上と55歳以上の職員を対象にした市の早期退職制度の実態を紹介しました。今年度対象の50歳以上の130名のうち、7人しか応募がないように、早期退職しても仕事が見つけられないという厳しい現実があり、監査人が言うような制度は実効性がないと批判し、市が公共交通を守る立場に立つことを強く求めました。